「先端が美しい人は、男女ともに上質に見える」。これぞ世の中がどのように変わったとしても変わらない普遍の真理であり、人の無意識の心理に訴えるものです。色々調査してみると、男女の違いを問わず、初対面で相手の手を見るという人の多さは、想像以上の数。かく言う私も、初対面の時の相手の手の印象が、想像以上に自分の中で強烈なインパクトとして残っており、それから後どんなことがあっても変わらない基準になっているというケースが少なくありません。この場合、良いイメージではなく、その反対のネガティブなものであるケースがほとんどですが。
手は、何かを表現する際に顔と同じくらいの表情を持ちます。そこに現れる微妙な動きや、その状態を見れば、その人がどのような暮らしをし、どのような基準の生き方をしてきたのかが分かるというもの。「物を掴み、扱う」という、日常生活が自然とにじみ出る部分なのです。
手を見れば、ごまかしのきかない、その人自身が現れている。だからこそ、初対面でこの部分に疑問を感じた人とは、例えその方がどんなに良い人だったとしても、遅かれ早かれ方向性の違いを実感することになるということは、過去に沢山例を見て実感することの一つであり、初対面のイメージの重要性の一つであるともいえます。
この「手元・指先」の第一印象で、ある事柄を判断されるとき、本来任せてもらえたかもしれない仕事を、得ることができなかった方がいたというお話をいたしましょう。
その方は女性、あるお仕事をフリーランスでなさっている方でした。明るく、人当たりも良く、努力家で、見た目の美しさも兼ね備えた方。普通であれば、この人が好まれない/選ばれない理由など一切無い様に思えます。しかし、この彼女にある仕事をお願いするかどうか?それを考えていた私は、初対面でその彼女と会ったときに目にした彼女の指先が、最初に頭に浮かんできました。そう、初めての対面をした日、彼女は濃紺のネイルカラーを施した爪で登場しました。自由な業種でのお仕事の方でしたので、濃紺のネイルもそれは許容範囲内。その色に関しては、私も特に問題なし。では何が引っかかったかといえば、その濃いネイルカラーが、無残にも禿げて、指先を彩るどころか、その逆の状態だったこと。そして、初対面の私の前に、その指先を恥ずかしげもなく出していたということだったのです(恥ずかしそうにされている方は、動きで分かりますので)。お人柄もいい、お願いしたらきっと一生懸命やって下さるだろう。しかし、ビジネスに於けるハイクオリティということの本当の意味、そして、それを保つメンテナンス力と注意力が期待できないであろうことが、初対面時の彼女のあの爪が思い出され、お願いすることをあきらめたのでした。
たかがネイル、たかが指先の小さな事柄ですが、このような状態を目にした相手は、汚らしい雑な印象を受けるのは確かでしょう。自己管理として、そしてエチケットとして、初対面の人の前にその状態の手を平気で出せるという意識と価値観は、いただけないものであるのは明らか。勿論、忙しい方であれば爪の手入れをしょっちゅう行うことも難しいのは承知しています。であれば、本来の自分の爪の色や手の色に準じたネイルカラーを選ぶことで、禿げた部分を少しは目立ちにくくする選択をするのも一つ。これこそ、かけられる時間と手間、そして求める結果を踏まえた判断をするマネジメント能力そのもの。それに、禿げたネイルをしているくらいなら、いっそのこと拭き落してしまう方がよほど清潔で良いと判断するべきでした。濃い色を選択した時点で、ハイメンテナンスが要求されるというリスクがあることに気付けなかったことが、この時の彼女の敗因だったといえるでしょう。そして、これが彼女の日常=当たり前であることを露呈してしまった残念な事柄だったのでした。
どんなに高級な衣服を身につけていても、どんなに美人でも、指先が美しくないと全て台無し。そして、マネジメントの出来ていない人と思われてしまうでしょう。これは、ネイルを施す女性のみならず、男性にも言えること。仕事柄、手先を使用する機会の多い方や、手が荒れやすい方もいらっしゃるでしょう。仕事をしている働き者の手は美しいものです。ですから使い込んだ手や指先は、大切にケアをし、メンテナンスをするのです。全く難しいことではありません、ハンドクリームを塗る、爪をいつも綺麗に整えて清潔にしておく、これを日常のルーティーンにしてしまうだけです。すると、この心がけていることが必ずその手に、目に見える結果として現れます。
常に人の目に触れる機会の多い指先、そしてグローバルな社会においては、握手という挨拶が数多くめぐってきます。男性も女性も、いつ誰に握手を求められても、躊躇することなく自信を持ってさっと手を差し出せる様にしてあることは、偉大な存在の人と握手するチャンスを呼び寄せるかもしれません。そして、それは必ずや成功への近道に違いありません。その為にも、指先を制しましょう。チャンスを掴むも逃すも指先次第。