講話は経営や人生の智恵の宝の山。経営者や専門家が自らの体験を講話で伝える深さと、より楽しむ聞き方を実学・耳学・磨く「MIMIGAKU(ミミガク)」を提供する日本経営合理化協会オーディオ・ヴィジュアル局の企画担当者が毎回紹介していきます。
前号の「Track5 講演録の聞き方 続・その道の専門家の講話から学ぶ」では、実際の講演録から選んで、その専門家の方々の講話からポイントをお伝えさせていただきました。さて、今回のTrack6では、「聞き手のある講演録」について学び方や聞き方をお伝えしていきたいと思います。
講演のスタイルはいくつもタイプがありますが、そのひとつに聞き手がついた講話があります。講師がひとりで講演をするというものではなく、聞き手が質問したことに話し手が答えていきながら展開をしていくものです。
聞き手がついた講話の魅力は話し手と聞き手の掛け合いです。講演だと触れないような部分も聞き手が質問してくれることで、いつもは聞けないようなことも聞くことができます。また、掛け合いになりますのでお互いの人間味も感じることができます。また、聞き手が魅力や大事なポイントを引き出しながら話が展開していくため、分かりやすく大事なところを聞き逃すこともありません。
さらに、聞き手が聴講者の反応を見ながらすすめていくことで、話し手の講話が会場にあまり伝わっていないなと感じたり、ここは興味のある話だなと分かると、より伝わりやすくなるように角度を変えて、もう一度、質問をしてくれたり、深堀りしながら臨機応変にすすめられていきます。
話し手の方にとっても聞き手の質問とリズムにあわせてすすめることができるので好まれる方が多いです。一方、どうしてもインタビューのようなスタイルになってしまうことが多いため、本人の講話だけをじっくり聞きたいという方には物足りなく感じてしまうことも起こります。この点は、実際にいくつか聞いてみて、自分の講話の好みを知ることもよろしいかと思います。個人的にはどちらもそれぞれの特長と魅力があるように感じます。
さて、ここで聞き手のあるタイプの講話を弊会収録物を例にお伝えしたいと思います。そのひとつがオートキャンプのブランドを築いた株式会社スノーピークの代表取締役会長山井太氏と、企業の存在意義を起点として変革デザインやブランディングをされている株式会社2100共同創設者CEO国見昭仁氏の対談です。
こちらの講話は3部構成になっており、最初に国見氏が企業のこれからの在り方を提示し、続いて、山井氏との対談、最後に山井氏が講話され、企業の存在戦略、今とこれからの取り組み、企業の未来をリーダーが描く重要性を話されております。対談での掛け合いや雰囲気から、お互いを信頼されていることが伝わってきます。このような関係性が紡ぐ対談講話は聞き始めると自然に講話の世界観に引き込まれていきます。聞き手のある講話は、講話の内容を学ばれることはもちろん、その掛け合いから描かれるストーリーも楽しみながらミミガクすることをおすすめします。