しかし利益の金額は、数字を単純に集計した結果だけで決まるものではありません。そこには、社長の利益に対する考え方が反映されます。
利益を決めるときに、社長の経営姿勢や、お金に対する価値観などが表れるのです。
・会社に利益をいくら残したいのか?
・社外からどのように評価されたいのか?
など、いろいろな要素を考慮して社長は利益の額を決めています。
社長は利益の金額をどのようにして決めているのでしょうか?
今回は「社長の利益の決め方」について見ていきます。
御社の前期の利益はいくらでしたか?
社長の利益に対する考え方―「節税重視型」
比較的小規模の中小企業の社長に多いのが、節税を重視するタイプです。「利益」が増えるほど「納税額」が増えて、負担が大きくなります。
せっかく稼いだお金を税務署に徴収されるのは、いい気分ではありません。ですから、税金をなるべく支払わなくていいように、利益を減らしてしまいます。
最もわかりやすいのが、決算直前に節税と称して経費をたくさん使い利益を圧縮して、法人税を少なくすることです。
このやり方を何年も繰り返していると、社長も節税の仕方に詳しくなります。いつの間にか、利益を出すことよりも節税が目的になってしまいます。こうなってしまっては本末転倒です。
利益が出ないように、役員報酬を高めに設定している会社を見ることもあります。これは、節税対策を提案する税理士にも責任があります。儲かっている会社は税務調査の対象になる確率が高まるので、それを回避しようとする意図があるのかもしれません。
御社は、利益と節税のどちらを重視していますか?
社長の利益に対する考え方―「利益定額型」
事業年度によって売上高が増減しても、利益の金額は毎年だいたい同じという会社があります。
例えば売上高が2億円のときに、利益が1千万円だったとします。その会社の売上高が5億円、10億円に増えていっても、利益の金額は相変わらず1千万円程度なのです。また、売上高が増減しても、毎期の利益金額が5千万円前後というように、一定金額を推移しているケースも見られます。
このような会社は、社長が利益の絶対額を決めているのです。社長が言葉で指示しなくても、会社の年間利益の額を幹部も経理も理解していて、決算の利益の数字はいつもそこに着地していくのです。
社長としては、銀行の融資枠を確保するために、毎期維持すべき利益の金額を設定しているのかもしれません。一方で、その金額を超えてまで、利益を出す必要はないと考えているのでしょう。
御社は、利益の目安の金額を決めていますか?
社長の利益に対する考え方―「計画利益型」
中小企業でも、中長期的な事業計画を作成して、それに基づいて経営をしている会社もあります。
事業計画を達成するには、成長スピードに合わせて資金が必要になります。必要となる資金を調達するために、銀行や投資家へ必ずアピールするのが利益です。
事業計画だけでは絵に描いた餅になりかねませんので、実際に決算で利益の実績を示さなければ信用されません。したがって、早く成長したい社長ほど、利益を多く計上する傾向にあります。利益の大きさに比例して、調達できる資金の量が決まるからです。
資金の量が、会社の成長のスピードを決めます。会社の成長速度は、会社の利益の大きさによって左右されるといえるでしょう。
御社は、3年後にどのくらい成長していたいですか?
「社長の利益の決め方」が経営を変える
いろいろなタイプの社長がいます。
会社の利益の決め方について、良い悪いがあるわけではありません。ただし、社長の利益に対する考え方次第で、会社の継続性や成長の速さに差があることは確かです。
社長が利益の額を決めるのに、影響するのは次の3つです。
●税金
●資金
●成長
必要以上に節税をやりすぎると、内部留保が蓄積されないだけではなく、銀行の借り入れも期待できません。経営基盤が安定せず、成長が遅くなります。
社長が利益の額を設定している会社は、経営状態は安定しています。しかし、成熟期の後にいずれ衰退が訪れるリスクがあります。事業計画どおりに目標利益を達成し成長を続ける会社は、経営が順調な時期はよいですが、成長を急ぎすぎて無理をして失敗するケースもあります。
時代によって、また景気や経営環境の変化によって、社長の考え方は変わります。コロナ禍の中で、利益に対する考え方や価値観が変化したという社長もいます。
社長の利益に対する考え方が、これからの会社経営を変えていくことでしょう。この時期にいちど立ち止まって、会社の利益の方針を見直してみてください。
御社は、利益の尺度をどこに置いていますか?
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