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税務・会計

第38号 親が相続を語る時(2)

会社を守り抜くための緊急対策

◆事業の承継と連結バランスシート
 事業の継続、つまり、後継者に事業を承継したいと考えている場合はなおさら、中小企業の連結バランスシートが重要になります。
 事業の承継が成功するためには、社長と後継者との間で、「売上を上げる仕組み」つまり儲ける仕組みがきちんとコミュニケーションがとられていることが大前提になります。
 同じDNAを持っている親子でも、儲ける仕組みは微妙に異なるものです。少しの違いでも、曖昧にしていますと、後々、大きな亀裂を生んでいきます。
 今すぐ、社長と後継者の儲ける仕組みを明確にして、なにが同じで何が違っているのか、そして何が一番いいのかを明確にしておく必要があります。
 これが事業承継を成功させるための大前提になります。
 会社の一番正しい会計情報は中小企業の連結バランスシートという話をしました。そのためには、社長のバランスシートが必要であるという話もしました。
 事業承継を考えるならば、今度は、後継者のバランスシートも大切になります。通常は、後継者のバランスシートは社長のバランスシートより劣っているはずです。
 ということは、賢明な社長は、事業の承継を本気で考えているのであれば、後継者のバランスシートもよくしていかなければ、連結バランスシートの状態が悪くなっていきます。
 この様な状況では、金融機関は社長の連帯保証を外すことに難色を示すため、スムーズに事業の承継ができなくなります。
 ここで社長は何をしなければならないでしょうか。
 社長自身のバランスシートの作成は当然のこと、後継者のバランスシートを作成し、社長の資産負債をいつ、いくら後継者に移していくかを考えなければいけません。
 社長の資産の典型が会社の株式です。いわゆる自社株式です。この株式をいつ移すかの問題も、このバランスシートの問題なのです。
 後は不動産等もあるでしょう。
 事業を継続するためにも、事業の承継を成功させるためにも、社長個人そして後継者のバランスシート作成の重要性を理解していただけたと思います。
 決して、「早く死ね!」ということではないのです。
 では、再度、誰が作成するのでしょうか。
 基本は社長自身です。しかし、社長は会計が苦手です。ましてや、連結バランスシートなど知りません。
 会計事務所の先生が本当に信頼できるのであれば、一緒に作成してもいいでしょう。奥さんが経理を担当している場合も、一緒に作成してもいいかもしれません。ただ、やましい資産がないことを祈っています。
 めでたく連結バランスシートを作成したとしましょう。社長のバランスシートとこの連結バランスシート情報は本当にマル秘情報なので決して第三者には見せないことです。
 毎月作成することが望ましいですが、時間的に困難であれば、半年に一回程度でいいですので、必ず作成してください。
 結果として、社長の財産がわかり、現時点で、相続税がかかるかどうかを計算できるのです。

◆親が定年退職している場合・親がまだ現役のサラリーマンの場合・親が自営業で子供は後を継がない場合
 親が、社長ではなく、サラリーマンや定年退職者だとしましょう。また、個人事業で親の代で事業をたたむ場合も同時に考えてみましょう。
 この場合、相続税の対策はどうすればいいでしょうか。
 これまでのように、連結バランスシートの作成という話はできません。事業をしていないため、中小企業の本当の会計情報である社長のバランスシートを作る必要はなくなります。
 様々なケースで親が動いてくれることもあるので、これまで経験したケースをいくつかあげてみましょう。その中から合うものを選んでみてください。
 親が老人ホームに入る場合、その入居費はばかになりません。申し込み後のキャンセルが後を絶ちません。
 なぜでしょうか。
 自宅が売れないのです。
 もちろん退職金などの蓄えがあれば、入居は可能ですが、入居費を支払えば、蓄えがなくなることも少なくありません。
 年金だけでの生活になります。しかし、老人ホームも、毎月の費用がかかるところが多いのです。
 自宅も息子に要らないと言われれば、売れないし、相続も出来はなくなり、宙に浮いてしまいます。
 この様に、不動産は、相続において、足かせになることが多いのです。特に自宅のように、家賃収入などの収益が上がらない、逆に言えば、維持費ばかりかかる自宅などのような不動産は、相続の時、とても困ってしまいます。
 そこで・・・
 「自宅はどうするの?僕たちはここには戻らないつもり」という問いかけが出てきます。
 親の部屋などに老人ホームなどのパンフレットがあれば、このような問いかけをすることはできます。
 自宅が売却できて、しかも、退職金があれば、老人ホームに入居しても、一定金額の金融資産などはあるはずです。
 この様な場合は「お父さん、お金を残して死なないでね。みんなお母さんと使ってくれた方がいいと思っている」という話をすれば、財産を当てにしていないことが伝わります。
 しかし、過去に、お金がなくなれば親にお金をせびった経験がある場合、親はしっかりと覚えているものです。
 この様な過去がある場合は、先ほどの言葉は逆効果です。
 むしろ素直に「あてにしている」と言った方がいいかもしれません。
 「友人のお父さんが急になくなり、あとが大変だったみたい」と投げかけてみることもいいでしょう。
 この様な問いかけに、反応がなければ、それ以上、深入りはしないことです。
 また、日をおいて、続きの話をしてみてください。
 「この前の話、覚えている?私の友人のお父さんが亡くなった話。そのあと、親族でもめたみたい。亡くなった人はいいけど、後に残された人のことを考えてほしい。あなたも気をつけなさいって」
 このようなことはどうでしょうか。
 「きょう、知人の会計士が話していたけど、お金を子どもにあげると馬鹿になるんだって」
 どういう意味でしょうか。それは次回で・・・

書籍 海生裕明著『連結バランスシート経営で会社を強くする』好評発売中

 

 

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