税務署がオンラインでやってくる!

国税庁が、税務調査のオンライン化を本格的に開始しました。
令和7(2025)年10月から、金沢国税局および福岡国税局が先行してオンラインツールを使った調査を始めました。
東京など、その他の地域は令和8(2026)年3月から順次スタートとなります。
これまで大企業の税務調査は、すでにオンラインで実施されていましたが、いよいよ対象範囲を中小企業にも広げて、オンライン調査を浸透させていく見込みです。
今後は、中小企業においても、税務調査官との対面実地調査ではなく、オンライン経由でのデータ提示とWeb質疑応答というスタイルに変わっていきます。
そこで今回は、オンライン税務調査の準備と注意点について、解説します。
前回の税務調査はいつでしたか?
税務行政のデジタル化とオンライン調査

国税庁は、納税者の利便性向上と、税務行政の効率化と高度化を目指して、デジタル技術の積極的な活用を進めています。
この取り組みの一環として、税務調査においても、オンラインツールを活用した手法が導入されました。
特に、リモートワークやオンライン会議が社会に浸透したことも後押しとなり、時間や場所にとらわれない効率的な調査の実現が目指されています。
一方、企業側にとっては、税務調査のために会議室を確保したり、紙の帳簿書類を準備したり、といったことが不要になります。
これまで調査期間中は、社長や経理担当者が長時間対応に追われていましたが、調査が効率化されることで、調査時間の短縮といったメリットが期待できます。
ただし現段階では、オンラインツールの活用は、税務調査の一部のプロセスに限定されており、従来の訪問調査を完全に置き換えるものではありません。
オンラインツールの利用にあたっては、税務署側と企業側(納税者)が合意することが前提となっています。
企業側がオンライン調査を望まない場合には、これまでどおりの訪問実地調査を選択することも可能です。
なお、オンラインツールを利用する際には、事前に同意書を提出し、メールアドレスの登録や事前テストなどの準備プロセスが設けられています。
次回の税務調査は、実地訪問とオンラインのどちらを選択しますか?
税務調査で利用されるオンラインツール

今後、税務調査で利用されるオンラインツールは、目的ごとに主に次の3つです。
中小企業においても、今後の税務調査に備えて、ツール別の利用形態などを理解しておきましょう。
(1)インターネットメールによる連絡の効率化
従来の税務調査では、電話や郵送による連絡が中心でしたが、今後はインターネットメールが主要な連絡手段となります。
税務調査官とのやり取りは、事前に登録したメールアドレスを通じて行われ、調査日程の調整や資料提出依頼などが迅速に進められます。
メールの内容はすべて記録に残るため、誤送信や情報漏洩には十分な注意が必要です。
企業側でも、専用のメールアドレスを用意し、担当者間での情報共有体制を整えておくことが望まれます。
(2)Web会議システムによる質疑応答
税務調査官との質疑応答などは、Microsoft Teams でのWeb会議を利用します。
Web会議では、帳簿の説明や取引の背景などを画面共有しながら説明する場面もあるため、事前に資料を整理し、操作に慣れておくことが重要です。
また、通信環境の整備や会議中の録音・録画の可否についても確認しておきます。
オンライン会議での発言は対面以上に誤解を生じやすいため、社長は発言内容を整理し、事前に経理部門や顧問税理士と打ち合わせしておきましょう。
(3)オンラインストレージサービスを使った資料の受け渡し
企業側が大量の帳簿や請求書、領収書などの電子データをオンラインで提供するときに、オンラインストレージサービス(PrimeDrive)を利用します。
これにより、紙資料の郵送や持参が不要となり、データのやり取りが安全かつ迅速に行えます。
オンラインストレージサービスの利用には、専用のリンクやアカウント情報が税務署担当者から指定されるので、それに従って設定し、書類データを転送します。
提出するデータは、ファイル名やデータ内容を事前に検証し、誤送信しないよう注意が必要です。
経理部門でオンラインツールを利用していますか?
中小企業が注意すべきポイントと事前準備

これからすべての会社が、オンラインでの税務調査を初めて体験することになります。
繰り返しますが、税務調査におけるオンラインツールの利用は、必須ではありません。
会社側のオンライン環境が整備できていない場合や、対応に自信がない場合は、税務署から要請があっても、無理にオンライン化を進める必要はありません。
オンラインツールの利用に協力しないからといって、税務調査において不利な取り扱いをされることはありません。
中小企業の場合、通常は顧問税理士が税務調査に立ち会いますので、税務署との連絡や打合せ、資料提供などは、すべて税理士を通してすることが可能です。
税理士が会社を代理して、税務署とメールで連絡し、Web会議で調査官と交渉し、オンラインストレージサービス経由で必要資料を提出してくれます。
ですので、中小企業の社長や経理担当者は、オンラインツールを使って直接税務署とやりとりすることを心配する必要はありません。
それよりも、社内の電子取引データやインボイス関係書類などが適正に保存されていることを日頃から点検しておくことのほうが重要です。
税務調査で書類データの提供を求められたときに、慌てないように準備しておきましょう。
いずれにしても、早い段階で顧問税理士と事前に相談し、オンラインでの税務調査の要請がきた場合の対応方針や資料準備を共有しておくことをおすすめします。
税務調査の連絡がいつ来ても大丈夫ですか?
経理体制を見直してオンライン税務調査に備える

今回は、オンライン税務調査の準備と注意点について、説明しました。
おさえておくポイントは次の3つです。
・税務調査のオンライン化で効率的な調査が期待される
・メール、Web会議、オンラインストレージが使われる
・顧問税理士とオンライン調査対応を事前に相談しておく
税務行政のオンライン化は、今後さらに進むと予想されます。
税務署側のメリットが優先されているのは確かですが、中小企業にとっても、税務調査に余計な時間を取られずに、ストレスを少なく乗り切ることが期待できます。
オンラインのスタイルに慣れるまでは、顧問税理士との連携を強化し、デジタルデータの管理や事前準備をしっかりして、乗り切っていきましょう。
オンライン税務調査の次の段階では、AI税務調査が準備されていますので、経理体制を見直し、進化する税務調査に備えましょう。
会社にとって、税務調査のオンライン化のメリットとデメリットは何ですか?
























