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戦略・戦術

第81回『継続経営の真髄』~お客様に長く愛される経営とは?~

継続経営 百話百行

経営コンサルタントになって
早いもので、25年になる。

その間に、2万人近く、数多くの経営者にお会いさせていただき
2000社以上の会社、お店を訪問させていただき
気づいたことは

一時(いっとき)業績がものすごく良いより
すごくなくともある程度で継続し
少なくても良いから成長し続けるのが
組織的にも、そして、精神的にも
すごく良い企業だと気づいた。

日本には約300万社の企業があり
創業以来100年以上存続する長寿企業がわが国には25,321社存在し、世界中の約35%を占める。

世界最古の組織であり、ビジネス・商売の原点としてもとても参考になる
伊勢神宮は、今の形になってからでも1400年継続している。

大きく飛躍することもなく
大きく下がることもなく

ずーっと存続するから
安心して、長期目線でやれることもある。

継続経営は何が良いのか
継続経営はどうすると出来るのか?


(1) 序章 儲かるとはどの時点なのか?

1996年に空前のブームになり、購入に大行列ができた
「○○ごっち」と言われたもの覚えていますか?

何か思い出しますか?

それは、「たまごっち」です!

それを販売したバンダイは
儲かったのでしょうか?

1996年11月23日 「たまごっち」(6色/1,980円)発売
 ↓
全世界で4000万個
(日本国内で2000万個、日本国外で2000万個)
販売価格ベースで792億円
 ↓
1999年3月にメーカー在庫250万個を処分。
同年には60億円の特別損失を計上し、
163億円という創業以来最大の赤字になった。

だれもが知っている、大ブームになった
たまごっちは儲かったのでしょうか?

長く続かないと
損失が大きいし
大企業ならまだ生き残る術があるかもしれませんが
中小企業はあっという間になくなってしまいます。

ブーム、流行、急激な変化は
企業経営にはとってもマイナスです。

倒産すれば、従業員、家族、お客様に迷惑がかかるし
すごく落ち込む。

だから、長く続くことを目指してほしいです。

 

(2) 企業が生き残る確率

1. 企業が生き残る確率

設立・起業した会社を1,000社とすると

5年目生存  150社
10年目生存 100社(10%)
30年目生存  20社
50年目生存  7社(0.7%)
100年目生存  3社(0.3%)



生き残る確率は少ない。
30年続いているとしたら自社を褒めよう。


2. 企業が生き残る必要な要素

長く生き残っている企業に共通するのは
「変えるもの」と「変えないもの」とをしっかり認識し実行している。
あんがい、変えるものと変えないものを逆にしているところが多い。
変えてはならないものを変え
変えねばならないものを変えない。
そうならないようにしていかなければならない。

「変わらないもの」(変えない方がよいもの)
不変
不易
家訓・社是
企業理念
あり方
信用
受け手の感情


「変わるもの」(変えた方がよいもの)
常若
流行
商品、サービス
経営理念
やり方
組織
技術



約1400年続いている世界最古の組織
(私は世界最古の存続しているビジネスと認識している。)
伊勢神宮は
不変常若という言葉がある。
変わらないものと、常に新しくするものを指している言葉だ。
ここにも大いにビジネスのヒントがあり
伊勢神宮は神道の形、形式を残すために
20年ごとにすべてを造り替える遷宮をしている。

これにより、形あるものは常に新しく
技術や意味、あり方などを継承する機会を与えている。


不易流行は
荘子の思想であり、松尾芭蕉が好んで使った言葉とされる。
いつまでも変化しない本質的なものを忘れない中にも、新しく変化を重ねているものをも取り入れていくこと。
「不易」はいつまでも変わらないこと。「流行」は時代々々に応じて変化すること。
この言葉も、伊勢神宮は体現している。

企業経営にはとても参考になる言葉だ。

商品、サービスなど形あるものは変えていき
起業の精神や、お客様へ想いなどは
表現は変えても真髄の部分は変えないのがよいようだ。

企業理念は、創業の想いで
経営理念は、経営者が替わるたびに更新する考え方と考えている。


3. 老舗企業 分析

老舗企業とは、100年以上続いている企業としている。
つまり、長く継続している企業。

■家訓、社訓、社是(あるいは企業理念や信条)などはお持ちですか?
明文化されている 40.0%
口伝されている  37.6%
なし       17.0%
答えられない   2.3%
無回答      3.1%

 

■創業時から現在まで「変えていないこと(もの)」「変えたこと(もの)」は何ですか?

変化無し:A 一部変えた:B 全て変えた:C
家訓・社訓・社是 A38.8% B21.3% C6.5%
主力事業の内容  A41.3% B48.8% C7.5%
商品・サービス  A21.9% B62.4% C10.0%
製造方法     A18.6% B45.7% C9.6%
販売方法     A15.4% B65.6% C13.1%


■老舗の強みは何ですか?(複数回答可)

信用 73.8%
伝統 52.8%
知名度50.4%
地域密着43.1%
信頼が厚い37.5%
顧客の継承33.2%
技術の継承29.5%
品質 24.9%
社歴の長さ23.2%


■老舗の弱みは何ですか?(複数回答可)

保守性 54.9%
社員の高齢化(あるいは後継者難)34.8%
設備の老朽化 32.3%
進取の気性がない 27.6%
顧客の固定化 20.8%
オーナー企業 15.8%
社内の風通しが悪い 12.7%


(3)企業が生き残るには変わる

企業が生き残るには何らかを変わらないとダメなようだ。
前述のように
一部変えた、全て変えた合計で
販売方法 78.7%
商品・サービス 72.4%
主力事業の内容 56.3%

確率的に
生き残っている企業は変えている。

では、変わるためにはどんなことが必要なのか?

●危機感の醸成
●やり方の前にあり方
●捨てる技術

が、必要なようだ。

1.生き残る企業の条件

■富士フイルム
何屋さんか?
フィルムが社名につているのだから
フィルム屋さん。

と、いうのは創業の時だけ

1934年映画フィルムメーカーとしてスタートをし
写真フィルム
そして、X線フィルム
医療機器メーカーと
時代ごとに製品を変えながら現在にいたる。

2010年には
写真フィルム売上シェアは2%
最大売上分野はメディカルシステムライフサイエンスと
医療関連分野だ。

製品を買え続けることにより
残っている。

■日清紡績株式会社
何屋さんか?
紡績とついているのだから紡績屋さん?

1907年のスタートは、紡績業でした。
そこから
繊維メーカーを活かし、ブレーキ素材
自動車部品
太陽電池と
変遷してきました。

■ポラロイド
何屋さんか?
もちろん世界初のインスタントカメラを製造した会社。

1948年 世界初のインスタントカメラの特許を取り
1991年には、過去最高売上30億ドルになり
その後、1999年には、i-zoneがブレイクし
インスタントカメラのシェア75%にまでなった。

しかし、
2001年10月に9億4800万ドルの負債を抱え経営破綻
その後、スポンサーが現れ経営を継続したが
2008年2回目の破綻。

現在はもうない会社。(商標権を買った会社はある)

■NOKIA
1865年創業の約160年続く会社。

スタートは製紙業で
その後、長靴、通信機器、
携帯電話。
2008年には携帯電話シェア世界トップだった。
しかし、その後不審になり
2013年に携帯部門はマイクロソフトに売却
現在は世界トップの
通信機器会社で、通信インフラ施設や無線技術を中心とする開発ベンダー。

ここの会社のモットーは
そのときどきの「一番輝いているもの」
に経営資源を集中していく。

種々の会社を見ると
生き残る会社は
事業や、商品・サービスを変えている会社であり
変えずにいる会社は破綻しやすいようだ。

それは、
時代は確実に変わり
それをとらえないと破綻しやすいということだろう。

もちろん、
製品、商品、サービスも変えず
創業からずーっと同じ所もある。

しかし、
確率論からいくと
変えることができる会社が
生き残りやすいということだ。


2.どうすると生き残れるのか?

100年以上続く会社を老舗企業という
その会社は

◆100年以上の会社は10万社。(約3.5%)
  「老舗企業の研究」より

◆2万4234社(約1.95%)
  帝国データバンクの保有するデータ124万社の中で
  1912年、明治最後の年までに創業した会社。

と、やはり、100年続く企業は少ない。

◆日本の平均社齢は、57歳(東証一部上場企業中)

そして、100年以上続く企業は
56.3%が創業時からの主力事業を変更、
商品・サービスに関しては70%以上が変更している。

変化するためには、どうすると良いのか?
ドラッカーのこんな言葉がある。

「企業にとってイノベーションは不可欠の機能である。それは重大な社会的責任の一つである。だがそのためには、人が変われるようにしておかなければならない

人は学べば学ぶほど学んだことを捨てられなくなる
したがって学ぶ能力とともに学んだことを捨てる能力を身につけなければならない

変化を生み変化を受け入れるには捨てる能力を身につけておく必要がある」(ドラッカー)


(4)企業が継続するための原則

1.継続するためには

まずは、
変わっては、いけないこと
と、
変わることを明確に分け

変わるべき所を変えていかなければならない。

その上で
「変わるには」
危機が来るとだいたいの人が変わることができる。

人間は
変わることが基本できない動物だ。
なぜなら、人間も動物なので
一番の目的は、「明日も生きる」です。

明日生きる確率は
昨日生きていたなら、今日も昨日と同じ選択をすると高いのだ。

なので
人間は変わりにくい。

しかし、
昨日死ぬかもしれない危機が来ていると
明日、昨日と同じだと死ぬかもしれないので
変われるのだ。

だから、
成功した人の伝記や講演を聴くと
変わるキッカケが
地震に遭遇したとか
火事が起きたとか
妻が突然亡くなったとか
危機が訪れた事がある人が多いようだ。

変われるなら危機が来てほしいかというと
来てほしくないという人が普通だ。

その場合には
危機を想像する、「危機感」が重要になる。

危機感をしっかりもつ人は
「想像力」がある人。

想像力がある人は、学力がある人だ。

学力とは、学歴とは異なります。
学歴は、学んだ力
学力は、学び続ける力。

新しいことを学び続けている人は
危機感を想像しやすくなるので
変わることができる。

最近のAIも勉強していると
AIによって仕事が奪われるかもしれないことが
鮮明にわかる。
すると、危機感が醸成されていく。

勉強していないと
なんとなく不安にはなるが
具体的ではないので
行動は変わらないのだ。

学力、つまり、学び続けると
語彙数が増える。

語彙数が増えると
想像力も発達するし
生産性もあがる。

赤いリンゴを
リンゴという言葉を使わずに説明すると
ものすごく難しく時間がかかる。

しかし、
リンゴという言葉を知っていると
リンゴだけで済むのだ。


2.継続の定義とは何か?

継続とは、長持ちさせる
とは、違う。

こう考えてしまうと
ニーズもないのにこれをやらねばならないと
固執してしまうようになる。

そうではなく
継続とは
「過去を過去としないために
 常に新しいということ」
だと思う。

そのためには大切なのは
変化し続けること。

「変わらないねって、
 言ってもらうために
 変わり続ける」
ことが大切なのです。



3.なぜ継続するのか?

商売は、良いものを提供するものだ。
良いものであれば
広く、長く提供するのが良いのではないでしょうか?

良いものは、
世のため、人のためであり
けっして
・今だけ
・お金だけ
・自分だけ
であってはダメ。

そして、広く知ってもらうのがマーケティングであり
長く、行うのが、経営。この長く経営するのが継続経営になるのだ。

そして、経営とは、信用力であり
信用とは、提供し続けることなのだ。

4.変わる用件

継続経営をするには、変わることが必須だ。
変わるための用件は

・変わると決めること
・第3者の異見を取入れること(意見ではなく異見です)
・今のままでは、いけないと
 思い続けること
これが、すごく大切なようです。

5.継続のための10ヶ条

(1)打倒〇〇

 過去の自分を打倒する、イノベーションを起こせるが大切。
 倒産する企業は、着実に内向きになり守る事が主体になり
 変われなくなり倒産する。

(2)捨てる

 車の開発をしていたとき数年おきに新車が出るが
 その時に製造マニュアルをほぼ一新する。
 今までのものはいったん捨ててしまうのだ。
 それが新しいものに変われる条件なのかも知れない。 
 
(3)革新3 保守7

 変わる、イノベーションをしようとすると
 劇的に変えようとする組織があるがそうすると崩壊しやすい。
 革新が3割、保守7割のイメージで変革をすると
 組織がついていきやすい。

(4)当たり前のことを極限レベルで

 ディズニーや、リッツカールトンのすごさは
 当たり前のことを極限レベルでやっていることだ。
 掃除であったり、案内であったり
 どこでもやっていることが
 極限まで高められると、お客様はついてくるようだ。

(5)任せると放任

 組織では、人に任せることが、人財の成長につながるので
 任せることをしないといけないが
 任せるを勘違いして、放任してしまう会社が多い。
 放任と任せるの違いは、しっかりと見守り
 上が責任をとるかどうかの違い。

(6)すごいファンより敵を作らない

 No.2戦略(でも、Only1)、これは、目立たない方がより
 長続きするのだ。
 そして、三方良し、あなた良し、自分よし、世間よしが
 より長く続くコツなのだ。

(7)高めるより一定(下がる前に!!)

 前にアメリカのスーパーウェッグマンズの店長に
 インタビューをしたときに
 店長の仕事は、何かをたずねると
 毎日全員に話しかけることだと。
 「君の仕事はあっているか?」と、たずね
 違和感があるときには対談をし、その人の力を発揮できる環境を
 作るのが店長の仕事だと言っていた。

(8)興奮より感動

 奇抜なことや、サプライズなどは興奮だ。
 飲食店で誕生日のサプライズなどは興奮に当たる。
 しかし、長年続く飲食店は奇抜な事はしないが
 例えば、久しぶりに行っても、「○○さんお久しぶりです。
 これがお好きでしたよね」といった感じだ。
 

(9)やることより、やらないことを決める

 やりたいことはいくらでも、出てくると思う。
 それは、従業員でも出る。
 しかし、やらないことや撤退基準は、従業員では判断できず
 経営者が決断するしかなく
 それも、自社がやらないこと、やったものをどのタイミングで止めるか
 これは重要な判断になる。

(10)経営とは3代先まで続くと思わないと、やってられない

 3代先まで続ける、続けるぞと言う意気込みがあるからこそ
 今の苦しみ、苦労があっても乗り越えられるのだと思います。

と、これが、継続する10ヶ条。

5.継続のための判断基準

野田の継続のための判断基準は
師匠である、船井幸雄先生に教えてもらった。

それは、

・それは、やりたくて楽しいことですか?
・それは、自信がありますか?
・それは、責任が取れますか?
・それは、人に恨まれませんか?
・それは、良心に反しませんか?
・それは、自然環境を破壊しませんか?

これを基準にいろいろ考え
新しいことやイノベーションを考えると
間違えがないようだ。

参考にしてみてください。

5.商売で必要なこと

商売は、お客様があって成り立つもの、だからこそ
「誰のために
 何のために
 何をしますか?」

これを気をつけたいと思う。


(5)まとめ

なぜ継続か?
良い物をなくすのはお客様に失礼。

継続するには?
変わる!

そのためには、
利益を出す。
そのためには、考える。
健全な成長は、年2%くらい。



今日からでもやるとよいこと

・良いお客様の条件 100個書き出す
・お店の良いところ 100個書き出す
・今よりプラス1回来てもらう

お客様とのホット物語を作る。
3ヶ月で3回来てもらうとお客様とよい関係になる。

お客様からも、従業員からも、従業員の家族からも、長く愛される企業を育んで欲しいと思います。
参考になれば幸いです。

参考文献
自分の会社を100年続く企業に変える方法より
帝国データバンク資料より

第80回『世界は、ますます二極化する。人を介すビジネス、人を介さないビジネスに分かれている!』~6カ国、8都市視察報告~前のページ

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