その土地に合わせたコンセプトで繁盛!
スイスから友人のフランソワが来日した。彼にとって日本ははじめてで、「伝統的なローカルフードが食べたい」と言った。豪華な会席ではなく、日 本のソウルを感じるものを提供する店・・そう言われて私が思いついたのが、「尚文」である。
私たちは山を目指した。尚文は群馬県利根郡みなかみ町にある。
尚文は山人料理を提供する人気の料理宿であり、まだ若い阿部兄弟で経営している。まず、弟の達也さんに、山菜が採れる山の案内をしてもらう。 達也さんは鹿や猪の猟を行う。だから、ガタイがいい。
4月下旬とはいえ、冬は雪深いみなかみである。まだ、雪解け水が勢いよく流れる状況であり、山菜はフキノトウがピークを過ぎ、こごみが出始め たくらいだ。タラの芽などもあるが、山菜の季節にはまだ遠い。
そうは言っても、種類は少ないが量はある。達也さんは次から次へと籠に入れた。
尚文は露天風呂がふたつ、内湯の温泉がふたつずつある。時間帯で貸切となる。
今回、用意してもらったのは露天風呂がある部屋。少し広めで雰囲気もいい。内装はコマ目に改装しているので常連客でも飽きない。
さて、食事だ。食事はダイニングで提供を受ける。ダイニングは個室になっている。山人料理ということで、おもに山菜、郷土の野菜、川魚、野鳥 獣を提供する。
今回は、先ほどとれた山菜の調理をお願いした。
こごみはかるく茹でておひたしに、フキノトウやタラの芽、よもぎは天ぷらで提供してくれた。
この季節提供している群馬麦豚もなかなかいける。焼いた麦豚を自家製の味噌をつけながら食べるといった志向だ。
締めは舞茸の炊き込みご飯だった。「お腹がいっぱいでしたら、夜食のおにぎりにいたします」心配りも余念がない。
翌日はフランソワに「自家製の味噌を作るので見るか」と気遣ってくれた。フランソワ写真をとりながら、メモをしっかりととってい た。
尚文は以前はふつうの旅館だった言う。蟹を出したり、鮑を出したりしていたのだろう?「なぜ人はみなかみにやってくるのだろうか?」を突き詰 めた結果、山にある食材に答を見出した。そして、「山人料理」というコンセプトにいきついた。もちろん、それに合わせてしつらえも変えた。
その料理やサービスが評判となり、予約がとりづらい宿となった。若いオーナーではあるが、このような行き届いたサービスのおかげで、予約がと ても取りづらい宿となっている。水上で大箱の温泉旅館もいいが、ぜひ、ご一考あれ。
山人料理 「尚文」
群馬県利根郡みなかみ町網子277
電話0287-72-2466