賃上げ後にチェックすべき3つの財務指標とは
「給料を上げないと新卒も中途も採用できない」
「いまの給与水準では優秀な人材が辞めてしまう」
物価上昇が進む中、業績がよくなくても人手確保のために、いわば防衛的な賃上げをせざるをえない会社も少なくありません。
会社としては、売り上げの増加よりも、経費の増加が上回れば、確実に利益は減ります。
最悪の場合、赤字に転落する中小企業も出てくることでしょう。
そこで今回は、賃上げ後にチェックすべき3つの財務指標について、説明します。
新年度のベースアップは何%ですか?
売上高人件費率を月次決算で点検する
賃上げ後の月次決算において、まずチェックすべきなのが売上高人件費率です。
売上高人件費率は、売上高に対する人件費の割合を示す指標です。
月次の損益計算書を会計ソフトから出力すれば、人件費の金額欄の横に売上高に対する構成比(売上高人件費率)が掲載されているので、すぐに確認できます。
人件費には、毎月の給料や賞与以外に法定福利費や福利厚生費が含まれます。
特に、健康保険や厚生年金などの社会保険料の会社負担は、給料の約15%になりますので、賃上げ時に忘れずに見積もっておきましょう。
売上高人件費率は、業種によって異なります。
例えば、仕事が人間の労働力に依存する労働集約型の飲食業やサービス業は、売上高人件費率が30〜50%と高くなります。
人手に依存する割合が高い業種ほど、賃上げの影響が業績に大きな影響を与えます。
社長としては、業界の給料水準を把握するだけでなく、売上高人件費率が業界平均と比較してどの程度かを把握することも、経営上重要です。
また、賃上げによって売上高人件費率が上昇した場合、その分だけ利益が圧迫されます。
人件費の増加分を他の経費を削減して調整したいところですが、インフレの影響もあり、どの経費も削るのは容易ではありません。
中小企業においては、賃上げやインフレによるコスト高を自らの経営努力で解決する余力は残っていません。
今後は、コストアップ分の価格転嫁の成否が、企業の生き残りを左右していくことでしょう。
賃上げ相当分の価格転嫁はできていますか?