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マネジメント

第四十五話 「信用を築くには百年、失うのは一瞬」(ディグ)

社長の口ぐせ経営哲学

印刷業で創業(大正10年)して以来、
老舗の中堅印刷会社として着実に企業活動を続けているのが株式会社ディグ(本社・東京都中央区)。

同社は頁物の活版印刷を主体に官公庁、学校、出版社、一般企業をクライアントに持ち、
信用を築きながら活版から電算写植の時代を経て、組版100%の電算化に27年前に踏み切った。
最近は本格的なIT化と最新の印刷技術で業務を拡大している。


事業は企画、編集、撮影、翻訳、展示会のディスプレイ制作から
出版印刷、商業印刷、情報処理・データベース構築まで幅広く、業務を拡大、展開している。
同社の特徴の一つが、IT技術を用いた業務の効率化。
経済産業省のIT経営百選に、活用賞と優秀賞の二つを受賞されるほどの本格的ITへの取り組みでは実績を持つ。
すべて自社プログラムの開発で常にバージョンアップを続けている。


同社の篠倉正信社長は「経営は信用第一」を信条としながら、
顧客の好意、社員の共同作業、外部企業との協力関係を含めて、「感謝のこころを持とう」と常に呼びかけている。

現場のスタッフにいつも声をかけているのは「信用を築くには百年、失うのは一瞬」というのが口ぐせ。
創業87年の歴史 を持つ企業だけに、「信用百年」という言葉は重い。


印刷業はミスが起きやすい仕事である。
機械によるミス、人為的なミス。
だから、篠倉社長は社員に徹底しているのがリスクマネジメントの基本精神を訴えている。
「事故の際の対応の仕方で会社の評価が決まる」ということである。
事故は誰でも隠したがるが、対応の仕方で信用を勝ち取るか、失うかが
決定してしまうということをトップが熟知しているから出る言葉だ。


同社では万一、事故が発生したら直ちに上司に報告することを義務付けている。
事故と会社の評価の関係性を、いつも徹底している。
社長の経営信条は「信用第一」、リスクマネジメントに力を入れている。
IT化の推進者の一人である杉井康之氏(取締役・システム開発室長)は
「自社のIT化も、顧客にとってのメ リットを優先しています。
その上で仕事の効率化が図れ、企業信用力を高めていく重要な戦略の一つです」と言い切る。


「持続は力なり」はこの会社の歴史そのものである。
常に技術革新を先取り、世の中の変化に手を打ち、積極的な企業経営を行っている。
仕事に関わる人間の精神性に注目しながら、顧客、社員、協力企業スタッフに気を配りながら企業経営を進めているという。
「技術は変わるが人間性は変わらない」という篠倉社長の言葉が耳に残った。

 

                                                              上妻英夫

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