首相の田中角栄、外相の大平正芳らを乗せた日航特別機は1972
政権発足から2か月半。
タカ派にしてみれば、「どうせしくじるだろう」
機中で田中は大平に、「オレは細かいことは知らんよ」と言った。
細部の主張と合意文案の詰めは、外相以下の事務方がおこなう。
五日間の北京滞在中、周恩来との間で首脳会談は四回行われた。まずは
最大の難問は、
北京に到着した午後に行われた第一回会談で、
「蒋介石をどう思いますか?」。唐突な切り出しである。
「彼は中国人の代表である」と周。
「しかし、あんたたちは、互いにいがみ合ってきた」
「蒋介石は世界に誇る中国人の代表の一人だ。なぜなら、
田中はその懐の深さに感じ入るとともに、
「日本では台湾問題は、まだ決して消化されていない。
周の鋭い視線に向けて、率直な物言いの奥に、《国境7千キロを接するソ連との間で緊張を抱える
「首脳同士の話し合いは、
そう回想する田中だが、
(書き手)宇惠一郎 ueichi@nifty.com
『早坂茂三の「田中角栄」回想録』早坂茂三著 小学館
『田中政権・八八六日』中野士朗著 行政問題研究所
『田中角栄の資源戦争』山岡淳一郎著 草思社文庫
『記録と考証 日中国交正常化・日中平和有効条約締結交渉』石井明ら編 岩波書店
『求同存異』鬼頭春樹著 NHK出版