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情報を制するものが勝利を手にする(5)
時代の変化を読む力とイノベーション

指導者たる者かくあるべし

 スペインの無敵艦隊の弱点をつかんで、エリザベスの英国王立海軍が立てた対策は、艦載の大砲の活用であった。

 すでに見たように無敵艦隊の海戦戦術において、大砲の役割は、敵艦に可能な限り接近して砲弾を発射しマストをへし折ることにあったから大口径である。大口径であるから当然、射程は短い。短くてもこと足りた。その射程は100メートル内外しかなかった。砲の数も少ない。

 英国海軍は、射程の長いカルバリン砲を何年もかけて装備した。これを舷側にずらりと並べた。口径は小さいが、これをスペイン艦の射程の外から水平に船体に浴びせる。スペインが得意とする艦上での白兵戦を避けながらアウトボクシングに徹し、戦闘能力を失わせ、船もろとも敵を殲滅する発想だ。

 その後の歴史をみれば、戦艦は蒸気機関の採用で機動力があがり、英国式の戦闘法が当然主流となる。

 リーダーは、時代の変化を先取りし、イノベーション(革新)を巻き起こしたものが時代の主導権を握ることができる。強者、常勝軍ほど、革新が苦手である。これまで勝ち続けてきた旧来の手法にこだわる。そして滅びる。万物に不変の法則である。

 このことがわかり、革新を決断、実行できるリーダーがいれば、弱者であっても強者を恐れる必要はない。

 「さて決戦はどこで起きるのか」。これも、ウォールシンガムの諜報機関が上げてくる確かな情報から、ピンポイントで予測できた。

 無敵艦隊の将兵だけで英国上陸はできない。彼らは、英仏海峡のカレー沖でオランダ駐屯のスペイン陸軍部隊を乗せて、英国海岸へ向かう。

 「この合流のための艦隊停止の一日が、われわれが敵を襲う唯一のチャンスだ」と、総司令官のハワードは、海賊部隊にも徹底させた。

 リスボンを出港した無敵艦隊の130隻が、英仏海峡に入った。“三日月陣形”と呼ばれる不敗の布陣で堂々と進む無敵艦隊。

 プリマス港から出た海賊ドレークらの船は、小競り合いを繰り返しながらも無駄な大砲を打たず、つかず離れずの距離を保ち、西から東へ敵を予定の決戦場へ追い込んでいく。

 1588年7月27日夕、無敵艦隊はカレー沖に到着し錨をおろした。

 海峡には強い西風が吹き始めていた。

 (この項、次回に続く)

 (書き手)宇惠一郎 ueichi@nifty.com

参考文献

『アルマダの戦い スペイン無敵艦隊の悲劇』マイケル・ルイス著 幸田礼雅訳 新評論
『世界史をつくった海賊』竹田いさみ著 ちくま新書
『エリザベスⅠ世 大英帝国の幕あけ』青木道彦著 講談社現代新書
『物語スペインの歴史 海洋帝国の黄金時代』岩根圀和著 中公新書

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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