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情報を制するものが勝利を手にする(4)
敵の弱点把握を”勝つ戦術”に活かす

指導者たる者かくあるべし

 彼我の物理的海軍力の差を自覚する英国王室海軍は、海賊艦隊を取り込むことでもう一つの戦略を打ち立てた。海賊の艦船を、非正規戦つまりゲリラに投入することにしたのだ。

 近づく艦隊決戦に至るまでに、敵を疲弊させるゲリラ戦を挑んだのだ。

 スペインの富の源泉は新大陸である中南米の植民地からの金銀財宝の移送と蓄積である。英国女王エリザベスは、カリブ海にある財宝移送拠点と財宝移送船をドレーク指揮の海賊たちに襲わせた。

 公式軍の王室海軍にそれを担わせては国際問題に発展する。外交面でも弱小の英国にとって命取りとなる。実際には国家が主導しながら、「それはならずものたちの仕業」として、国策とは切り離す言抜けができる。

 ディズニーランドの人気アトラクションでもある“カリブの海賊”が活躍をはじめる。

 無敵艦隊との決戦に先立つ三年前の1585年9月、ドレークの船団は英国南部のプリマス港を出航してカリブ海へ向かった。ドミニカ、サントドミンゴ、キューバなど、警備が手薄な港を荒らしまくる。敵船と遭遇すれば、拿捕して財宝を確保。可能な限り、敵船は沈めず改装して味方の戦力に加える。金銀のみならず、大量の大砲も鹵獲(ろかく)した。

 その成果は大きく、スペイン王フェリペを驚愕させる。一方、戦果に自信を持ったエリザベスは二年後、ドレーク船団をスペイン本土に派遣する。艦隊には王室船4隻も含まれている。実質的な宣戦布告である。

 王室海軍は、さらに無敵艦隊の決定的な弱点を把握する。それは彼らが固執する旧態依然とした海戦における戦術であった。

 風と海流に左右される帆船時代のこと。スペイン海軍が採用していた戦術は、大口径の大砲を近距離でぶっ放して敵船の帆柱を破壊して動力を失わせ、自らの艦首に突き出した衝角というツノを敵艦の横腹にぶち当てる突撃戦法である。

 接舷すれば、搭乗している屈強の兵士たちを乗り移らせて制圧する。海戦とはいいながら、発想は陸戦と同じだ。これは、大砲を石弓に置き換えれば、ギリシャ、ローマ時代から続く常識的な海での戦い方ではある。

 「これは勝てる」。王室海軍は確信を得ていた。「敵が接近戦を挑むなら、距離を置けばいい」。

 たとえていうと、伝説のヘビー級王者、モハメド・アリが重量級ボクシングに革命をもたらした「蝶のように舞い、蜂のように刺す」戦い方だ。

 戦術の大革新が、その後の世界の海を席巻する英国海軍に生まれようとしていた。

 (この項、次回に続く)

 (書き手)宇惠一郎 ueichi@nifty.com

参考文献

『アルマダの戦い スペイン無敵艦隊の悲劇』マイケル・ルイス著 幸田礼雅訳 新評論
『世界史をつくった海賊』竹田いさみ著 ちくま新書
『エリザベスⅠ世 大英帝国の幕あけ』青木道彦著 講談社現代新書
『物語スペインの歴史 海洋帝国の黄金時代』岩根圀和著 中公新書

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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