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戦略・戦術

第3回 M&Aにおけるシナジーとは?

武器としてのM&A入門

 コラムの第2回で、実現したいことを達成するための1つの手段としてM&Aという手段が存在する旨をお伝えいたしました。第3回のコラムでは、M&Aの現場で良く出てくる「シナジー」という言葉について解説していきたいと思います。

シナジーとは何か

 wikipediaによれば、ビジネスシーンにおけるシナジー効果という言葉を以下のように定義しています。

 

 「企業間同士の活動による相乗効果の多くはシナジー効果と称される。手法としてM&Aや提携など行う。経営者は、余剰の労働力・機材の出ない、新しいビジネスを始める際最初から育てなくて済む、技術・技能を所有する会社も転用し利用範囲を拡大させる事ができる、権利を互いに使える様になる、など、さまざまな効果を期待している。」
(wikipediaより引用)

 

 つまり、シナジー効果が発揮されている状態とは、自社単独で何かを行うよりも、他社とM&Aや提携を行うことで、より効果的・効率的に成果が創出されている状態ということです。コラム第2回の繰り返しにはなりますが、目的の実現のために、自社単体で成果創出を目指す方が良いのか、他社と組んで成果創出を目指す方が良いのかの見極めが非常に重要になります。

 

シナジーから目的を考える

 本コラムでは、第1回・第2回において、M&Aは手段であり目的を考えることが重要であるということを繰り返し述べてきました。しかし、実際の経営の現場においては、必ずしも①目的を考える、➁手段を洗い出す、③手段を評価し選択といった順序で検討ができる訳ではありません。実際には、M&Aの案件が顧問税理士から持ち込まれたことをきっかに検討をするということもあるでしょう。また、戦略を考えるに当たって、様々なケースを想定するための発想のネタ(材料)も必要です。

 ここでは、実際のM&Aの案件をネタ(材料)にして、戦略(=目的)を発想する方法をお伝えしたいと思います。

 

シナジーには3パターンしかない

 シナジー効果と呼ばれるものは、実は大きく分けて3パターンしかありません。この3パターンを理解しておくと、効率的に戦略を発想することができます。

 

ma3.png

 

パターン①:相手方に武器があり、自社に武器がない場合

 1つ目は、提携する相手方のリソースを得ることで自社の成長を実現できるパターンです。典型的な例としては、西日本で事業を展開していた会社が、東日本で販路を持つ会社と提携することで、全国カバーの販売網を手に入れることでき、自社製品の売上が成長したといったケースが想定されます。

 このケースを発想するためには、その企業が持っていて自社が持っていないものは何かを徹底的に考える必要があります。販路やノウハウ・特許など色々なケースが想定されますが、そういった視点で対象企業を分析することで、この会社の販路は自社製品の新規チャネルになるのではないか? この会社のノウハウを持ち込めば、自社の製造ラインの歩留まりを改善できるのではないか?といった発想を得ることができます。

 

パターン➁:相手方に武器はないが、自社に武器がある

 2つ目は、提携する相手方に自社のリソースを提供することで、相手方の成長を実現できるパターンです。分かり易い例は、パターン①の逆の場合です。

 このケースを発想するためには、自社の強みが何かを常日頃突き詰めて考えておく必要があります。

 例えば、トランビで成約した事例の1つに、不動産投資マンションのディベロッパー会社が、リゾートホテルを買収した事例があります。買収されたリゾートホテル自体は、客数も減少しており苦しい経営状態でしたが、ディベロッパー会社は富裕層をお客さんとして抱えていたこと、富裕層が喜ぶ体験を熟知していたことから再生の道筋を描くことができ成約に至りました。実際、買収後すぐに改装や新たな施設の増築を行い、客足は大きく改善しています。

 このケースでは、不動産ディベロッパーの経営陣は、自分たちの強み(=武器)をどこで活かすことができるかといった視点でトランビで案件を探しておられました。リゾートホテル経営をするという目的ありきではなく、自社の強みをベースに新たな領域を探す中でリゾートホテル経営という目的に辿り着いたわけです。

 

パターン③:相手方の武器と自社の武器を掛け合わせる

 3つ目は、双方の武器を持ち寄ることで新たなビジネスを実現するパターンです。分かり易い例は、サイバーエージェントとテレビ朝日の合弁事業であるAbemaTVではないでしょうか。AbemaTVは、サイバーエージェントのインターネットサービス事業において強みと、テレビ朝日のテレビ放送・コンテンツ制作事業においての強みを掛け合わせることで、インターネットテレビ事業として成立しています。

 どちらかの既存ビジネスありきではなく、双方の武器を持ち寄って新たなビジネスを創出するため、パターン①やパターン➁よりも難易度は上がりますが、その分大きなチャレンジを発想するには良い方法と言えます。

 

発想を得たら必ず目的に手段が適合しているかを確認する

 3つのシナジーパターンに当てはめながら、色々な戦略を考えることを日々する中で、これだ!という戦略が思いつくときがあるでしょう。その時に1つ注意して欲しいことがあります。

 A社さんの事業を分析する中で、ある戦略を思いついたとします。そのときに、思いついた戦略を実現するための手段として、本当にA社との提携・M&Aが手段として適切か検証をするようにしてください。目的から改めて考えると、自社単体でも十分に戦える、実はB社さんと組んだ方が良いといったことは、現実にあり得ます。戦略を思いついたタイミングで、一度立ち止まって、逆の視点から検証した上で、目的と手段が適合していれば提携・M&Aにチャレンジしていただければと思います。

 

 

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