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- 第50回 音楽配信の今と未来
Apple MusicやLine Musicなど、月々1,000円程度の支払いで、音楽が聴き放題になるサービス「定額制音楽配信」が話題です。CDに馴染んできた世代には「別の世界」にも感じられますが、これが世界の潮流。個人的に利用するか否かは別として、概要や特徴を把握しておきたいものです。
今回は、「定額制音楽配信」の基本や現状を紹介しつつ、メリットやデメリットについて考えたいと思います。「定額制音楽配信」は日本でも根付くのでしょうか?
■「定額制音楽配信」とは?
「定額制音楽配信」とは、月々の所定料金を支払うと、音楽が聴き放題になるサービスを指します。「サブスクリプション型」と表記されるケースも多くありますが、具体的にはアップル社の「Apple Music」、無料通信アプリで著名なLINEの「LINE MUSIC」、エイベックスとサーバーエージョントが手がける「AWA」(アワ)、Google社の「Google Play Music」などがあります。
好きな曲を選んで再生できる点では、従来のダウンロード型音楽配信に似ていますが、定額制音楽配信は解約すると全ての音楽を聴くことができなくなる点に注意が必要です。「買い取り」と「レンタル」の違いと考えれば理解し易いでしょう。音楽を聴き続けるには、料金を払い続ける必要があるのです。
■複数のサービス。どう選ぶ?
「定額制音楽配信」は、複数の事業者がサービスを展開していますが、それぞれ聴くことができる楽曲の数に違いがあります。また、「Apple Music」と「Google Play Music」は洋楽に強く、「LINE MUSIC」や「AWA」(アワ)は邦楽が充実しているといった具合に、それぞれの得意ジャンルも異なります。他にも機能や使い勝手に特色があり、サービスを選ぶポイントになり得ますが、まずは「聴きたい曲がたくさんあるか?」、が判断基準になるでしょう。
■「定額」の捉え方。安いか高いか?
「定額制音楽配信」の各サービスは、いずれも月額1,000円程度です。CDを1枚買うのに比べても低料金で、音楽が聴き放題になると思えば、大変お得に感じます。しかし注意しておきたいポイントも。聴きたい曲の全てがひとつのサービスに含まれていることは希でしょう。複数のサービスに加入するのは、費用や操作性の観点から賢明とは言えません。また、手元に音楽データが残らないので、サービスを解約すると音楽は聴けなくなってしまいます。
好きなアーティストや曲が決まっていて、繰り返し聞くことが多いなら、CDを購入したり、ダウンロード購入する方が、出費は少なくて済みそうです。
実際に「定額制音楽配信」が自身に合うかどうかは、数ヶ月加入して様子を見るのが良いでしょう。無料試聴期間を設けているサービスもあります。
■定額制音楽配信ならではのメリット
定額制音楽配信サービスならではのメリットに、「新しい音楽との出会い」があります。CD購入やダウンロード購入の場合、手元の音楽を繰り返して聴くことになりますが、定額制音楽配信の場合、各サービスでは、強力な「推奨」機能を備え、ユーザーが好みそうな曲を提案してくれます。それは単にジャンルといった大雑把なものではなく、履歴やクラウドデータを活用したものから、プロが作成したプレイリストなど様々。「LINE Music」では、人が人にクチコミのように紹介するユニークな機能を売りにしています。これらは、多くの楽曲から聴き放題だからこそ可能になった、新たな楽しみと言えるでしょう。
■定額制音楽配信は日本でも根付くのか?
海外で波に乗る定額制音楽配信サービスですが、日本でも根付くのでしょうか?近年はインターネットの発達で、無料で読める記事や視聴できる動画が多数存在しています。コンテンツに対する価値観が希薄になるほど、月々の支払いに抵抗を感じるのではないでしょうか?
一方で、新しい音楽との出会いに大きな価値を感じる方も多いでしょう。今後は、心拍数や血圧などの生体情報や位置情報など、様々なデータを絡めた、より精度の高い楽曲推奨機能が登場し、自然と人々の生活に音楽が溶け込んで行く可能性を秘めています。
ビジネスの面では、支払いへの心理的ハードルを下げるべく、携帯電話料金に紛れ込ませるような手法も登場するかもしれません。
どれくらいの時間を要するかは予測できませんが、定額制音楽配信が、音楽販売において一定シェアを獲得することは間違いなさそうです。
CDは無くなるのでしょうか?CDなどの有形メディアは、視覚で把握でき、人間の生理に沿って扱うことができます。また、規格がしっかりと定まっていて、世界中、どのプレーヤーを使っても、CDが再生できない・・・というトラブルはまず有りません。今後配信がシェアを高めようとも、使い勝手の良いCDが直ぐに消えてしまうことが無さそうです。
筆者も40歳台半ばを過ぎ、無形の音楽ファイルが何処にあるのかを考えるのが億劫になってきました。ひょっとすると、最後に生き残るのはCDかもしれません。
鴻池賢三