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人間学・古典

第96講 「帝王学その46」
神仙は、妄りに求むるを煩わさざるなり。

先人の名句名言の教え 東洋思想に学ぶ経営学


【意味】
神や仙人を無闇に信仰して煩わされてはならない。



【解説】
 「貞観政要」からのものです。
 神仙思想に惑わされた代表的な人物は、秦の始皇帝(前259~前210)です。
 始皇帝について改めて述べる必要はないかもしれませんが、紀元前221年に韓非子の統治思想を取り入れて38歳の若さで初めて中国全土を統一し、国家単位での貨幣や計量の数値を統一し、万里の長城などの土木事業にも力を入れ、国家統治に大きな功績を残しました。
 また一方では絶対権力を背景にした横暴さも目立ち、厳格な必罰による臣下操縦をして、書物を焼き払い儒者を生き埋めにした焚書坑儒(フンショコウジュ)などの圧政もしました。
 そして晩年に至り、欲望の限りを尽くした始皇帝も命の無常に悩まされたのか、最後の望みは不老長寿の秘薬を手に入れることでした。方士(祈祷師)の言葉に惑わされ、仙人が住み不死の秘薬があるという東方海上の三神山(蓬莱(ホウライ)、方丈・瀛州(エイシュウ))を目指して、童男童女を含めた数千人の大船団をしばしば送り出しましたが、秘薬を発見できないままの帰国は死を意味しますから、戻ってくる船団皆無でした。
 焚書坑儒や船団派遣の行為が、後々の史家たちに「非情の皇帝」のイメージを与え、更に秦も16年の短命王朝であったことから、功績の割に人気は今一歩です。日本で例えれば、信長の凶暴残忍さ・秀吉の豪快放蕩さを併せ持った人物ですが、その存在は桁外れの大きさで中国3000年の歴史の登場人物としては断トツのナンバーワンです。

 "迷う"と"惑う"とは、似たような意味ですが微妙に違います。前者は選択の決断がつかないことで、後者は恐れを感じ狼狽(ウロタ)える意味合いが含まれます。何もかも手にした天下人始皇帝も、ある時ふと「我が死の不安」に襲われ狼狽えたのです。そして余りある権力財力を以って、不老長寿の秘薬を求める狂気執着に走ったのです。
 人間は狼狽えれば自分の確信が崩れますから、周りの人間の虚言などに振り回されてしまいます。始皇帝ほどの万能権力を手にした人物でも、過度に物事に執着し己を失えば天下の王朝も崩壊の道を歩み始めます。
 論語には「鬼神を敬してこれを遠ざく」とあります。"敬遠"の語源になった言葉です。鬼神を敬いたかったら敬いなさい、けれども必要以上に執着し深入りしてはならないということです。2500年前の孔子の時代では、鬼神への恐怖心も強く加持祈祷に流されがちであったと思いますが、論語の教えにはどこかムキにならない余裕があります。これが現代まで人気を保つ名著たる「論語」の実力ということでしょうか。
 「人間学では、虜にならない余裕が大切である」(巌海)

 余談になりますが、神仙思想と似たものに先祖供養があります。
しかし、先祖供養は礼法の一種ですから神仙思考とは少し趣が異なります。礼法は「本に報い、始めに反る」(礼記)というように、自分が生み出された根本(両親祖先など)を感謝し敬うことが基本です。得体の知れないものに恐怖を感じ、迎合的に祈祷礼拝することとは違うのです。

 

杉山巌海

第95講 「帝王学その45」 天下を安んぜんとせば、先ずその身を正すべし。前のページ

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