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第50回 熊谷温泉(埼玉県) 首都圏スーパー銭湯の最高峰!

高橋一喜の『これぞ!"本物の温泉"』

■湯にこだわり始めた市街地の湯
 数年前まで、「泉質にこだわる自分は、東京近辺の市街地に湧く温泉では満足できない」と考えていた。
 市街地に温泉施設をつくろうと思えば、もともと温泉が湧いていない土地を掘削し、地中深くから湯をくみ上げなければならない。多くの湧出量は見込めないうえに、市街地だからたくさんの入浴客が押し寄せる。
 それに合わせて湯船を大きくし、たくさんつくれば源泉が足りなくなり、循環濾過して何度も使いまわさなければならない。結果、温泉の個性が失われてしまう、という負のスパイラルに陥ってしまうのだ。
 しかし近頃、そうした固定観念を改めさせられる温泉施設が増えてきている。小さいながらも源泉かけ流しの湯船をつくるなど、「本物の温泉」を楽しんでもらおうという施設の意図が続々と形になっているように感じるからだ。
 その筆頭が埼玉県熊谷市にある「花湯スパリゾート」である。都心からは電車で約90分。さらに送迎バスに揺られること約15分。国道から少し入った住宅街に温泉施設が姿を現す。都心からアクセスするには少々遠いこともあり、駐車場に並ぶのはほとんどが地元ナンバーである。
 
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■ぬるめの源泉をそのままかけ流し
 内湯にも浴槽が複数並んでいるが、「本物の温泉」は庭園風に設えられた露天風呂で味わえる。それにしても、露天の敷地が広大である。敷地面積は約7200坪、東京ドームの約半分のスケールだ。内湯から数十秒歩かないと目当ての湯船にたどり着かないほどで、その道中には人工の川や橋もある。
 数ある湯船の中でも、最も温泉の状態がよく感じられるのは、源泉かけ流しのヒノキ風呂。8人くらいが入れる湯船には、わずかに黄色をおびた透明湯がかけ流し。体感の泉温は38℃くらいだろうか。かなりぬるめである。
 泉質は単純温泉だが、わずかに硫黄の香りも漂い、肌触りもやさしい。地中の植物成分が溶け込んだモール泉の特徴を備えている本格派だ。まさか埼玉の市街地で、このレベルの湯に出会えるとは驚きである。
 ぬるめの湯は長湯に最適である。湯船から広々とした庭園をぼんやり眺めていると、自然と心もリラックスしてくる。大型の日帰り施設にしては、静かな環境であるのもポイント。これは広大な敷地のメリットだろう。少し肌寒く感じたら、隣にある1人用のつぼ湯で温まるといい。加温されているが、かけ流しである。
 特筆すべきは、ぬるめの源泉を加温することなく、そのままかけ流しにしている点だ。通常、不特定多数の入浴客が訪れる市街地の温泉施設は、平均的な42℃くらいに加温してしまうことが多い。ぬるいままだと、不満を訴える客が必ずいるからだ。
 ぬる湯の源泉をそのまま提供できるのは、毎分300リットルと湯量が豊富だからである(毎分300リットルは埼玉県の楊湯規制の最大量)。そのため、ぬる湯以外にも加温した源泉などバラエティーに富んだ湯船を用意して、客の多様なニーズに応えている。
 
■一日いても飽きない充実した設備
 花湯スパリゾートの魅力は源泉だけではない。人気の「温活cafeネスト」は岩盤浴中心のスペース。「温活(平均体温をあげること)」によって免疫力を高めるのがコンセプトの空間である。
 この空間の充実度が半端ではない。500円の追加料金はかかるが、複数の岩盤浴やロウリュウのほか、マンガ(1万5000冊)やリクライニングチェア、PCスペースなどを利用できる。電動マッサージ機も無料である。若者グループで賑わっているのも、設備の充実度ゆえだろう。
 食事処も深谷ネギなど地元食材をウリにするなど、メニューがバラエティーに富んでいて味もチェーン店の居酒屋よりおいしい。地酒が置いてあるのも酒飲みにはうれしい。
 上質の温泉につかって、施設内でゆっくり過ごし、また湯につかる。丸一日いても、まったく飽きることがない。これぞまさに究極の〝スーパー″銭湯だろう。
 

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