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不動産

第63回 共用施設は少ない方が良い

売れる住宅を創る 100の視点

今回は前回と同じフェーズ8の「 モノづくり 」です。その第3項目の『 ソフト面やハード面 』13項目中の第10項目である、分譲マンションの商品計画上で問題になります大事な「共用施設 」に関して充分配慮して戴きたいと存じまして、今回は『 共用施設は少ない方が良い 』のお話を致します。

前回はフェーズ8「 モノづくり 」の『 ソフト面やハード面 』13項目中の第9項目である『 駐車場の適正台数や広さ等は…。 』に関してのお話を致しました。
 
「 モノづくり 」に於いて、住まいの『 ソフト面やハード面 』の充実を図るという事でこのコラムでは13項目用意致しました。今回はその第10項目の分譲マンションの商品企画時点で売主の誠実さが表れます『 共用施設は少ない方が良い 』という事を、皆様に詳しく御説明致します。
 
さて、今回も私が建築家として最も得意とする「 モノづくり 」に対する「 こだわり 」であります。分譲マンションの「 モノづくり 」に対する「 こだわり 」に於いて売主の誠実さを表します最低限必要な「 共用施設 」に関して私の今迄の経験を通して御説明を致します。
 
毎回このコラムで、申し上げていますが、最近の準大手ディベロッパーや中堅ディベロッパーの傾向は、良い商品を作って分譲しているディベロッパーと、販売力の強さのみのディベロッパーとの「 2極分化 」が進んでいる様に感じられます。販売力の強さのみに頼っているディベロッパーに於いては現在、かなり苦戦していますので私はとても危惧致しております。
 
更に、不動産業界は「 超大手、大手ディベの寡占化 」が進んでいます。これらの会社を凌駕する為には是非、分譲予定物件の「 モノづくり 」にはトコトン「 こだわり 」や「 誠意 」を持って、顧客が購入意欲をかきたてる良い商品を作る事が大切です。
 
誠意が感じられる良い商品を作り続ける事に依って潜在顧客の信頼を勝ち取り、不動産業界に於いて良い評判を立て、更に会社の信用度を増せば「 ブランディング形成 」( ブランドを高める事 )になり「 超大手、大手ディベの寡占化 」に負けない会社になります。
 
その線上で、魅力的な良い商品作りを継続されていれば、一般消費者の社会での会社名や「 ブランド 」名と知名度も上がります。ですので、その様にされる事に依って不動産業界の中で超大手や大手ディベロッパーと同様又はそれ以上に世間は評価致します。それでこそ、準大手や中堅ディベロッパーが生き残れる道だと思います。
 
その様になる為にも、今回のタイトルの「 モノづくり 」第3項目の『 ソフト面やハード面 』13項目中の最初の第10項目である『 共用施設は少ない方が良い 』の内容は前回に引き続き分譲マンションの商品企画・基本計画段階での第一歩で、この事は売れ行きを大きく左右し、売主の誠実さをアピールする重要な事なのです。
 
手前味噌になりますが、今回も私が今迄手がけました新規分譲戸建や新規分譲マンション等の設計業務の経験に基づいた大変貴重なお話です。準大手ディベロッパーや中堅ディベロッパーの方々はこれから行う、分譲マンション等の商品企画・基本計画時点で是非「 共用施設 」で本当に必要な「 施設 」であるか否か、そして維持費が過分にかからないか等にこだわりをもって商品企画をして戴きたいと存じます。
 
その前に一言。私が今までの業務経験を踏まえて申し上げたい事は、準大手ディベロッパーや中堅ディベロッパーは、これからは絶対に『 製販一体 』の体制で分譲戸建や分譲マンション等の商品企画業務を遂行して戴きたいと思います。その理由は販売担当者が顧客の生の声を商品企画会議で発言し、その内容が良ければどんどん商品企画等に反映できるからなのです。
 
そして更に、今回の『 共用施設は少ない方が良い 』の具体的な内容が販売担当の方々も良く理解し顧客に対して自信を持って説明できるからなのです。
 
前置きはさておき、本題である『 共用施設は少ない方が良い 』をこれから具体的に御説明致します。
 
このコラムの最初の処で申し上げました様に分譲マンションの「 共用施設 」の設置で配慮しなければなりませんのは、入居者の2~3%の人しか使用しない施設や入居後5年未満でほとんど使用されなくなる様な「 共用施設 」は維持費用、修繕費用や固定資産税がかかり、その費用がマンションの「 管理費 」や「 修繕積立金 」を高く致しますので設置されない方が良いのです。
 
ここで、入居後5年未満でほとんど使用されなくなり、維持費用、修繕費用や固定資産税がかかる「 ワースト5 」の「 共用施設 」を御説明致します。
 
今迄の分譲マンションの入居後の情報では、「 ワースト 」1位の「 共用施設 」は「 温泉浴場 」です。「 温泉浴場 」は「 共用施設 」の中で一番使用されず、一番維持管理費用がかかったのです。この「 温泉浴場 」は「 浴場 」の循環ポンプ等の維持管理と「 脱衣室 」の毎日の掃除や冷暖房のランニングコスト等にかなり費用が費やされ毎月支払う「 管理費 」の中で一番の金食い虫だったと言われています。
 
まして、入居者にとっては親しい友人達とリゾート地で温泉に浸かるのは楽しいですが、同じマンションに住む見ず知らずの人に自分の裸を見られるのは「 嫌 」であるという御主人や奥様方が多かったからなのです。
 
その結果、最近の分譲マンションの共用施設に「 温泉浴場 」を設置しているケースはほとんど見かけなくなりました。要介護の高齢者向けマンションかリゾートマンション等には設置されている物件も存在している様です。
 
「 ワースト 」2位の「 共用施設 」は「 ラウンジ兼バー 」です。この施設は、マンション販売時点では好評ですが、入居後約1~3年位でほとんど使用されないそうです。この施設はバーを切り盛りする人の人件費、水道費用、照明・空調費用や掃除費等がかなりかかるのです。しかし超高層マンションの最上階近辺には未だ設置されているマンションが有るそうです。
 
「 ワースト 」3位の「 共用施設 」は「 フィットネスジム 」です。この施設もマンションの販売時点では好評で、いざ入居されると約2~3年位でほとんど使用されないそうです。この施設には、結構色々な機器を置きますのでイニシャルコストがかかり、維持管理費も半端ではないそうです。過去にジャグジーを設置してその浴槽の振動が建物全体に伝わり大変な事になったマンションもありました。
 
「 ワースト 」4位の「 共用施設 」は「 ゲストルーム 」という施設で、入居者の両親等が宿泊する部屋です。ほとんど訪ねて来た御両親は入居者の住戸内の1室に泊まるか、近くのホテルに泊まるそうです。この部屋は予約制で使用しました入居者が僅かの使用料を管理組合に払いますが、微々たる宿泊料でハウスキーピング料は到底まかなえません。
 
「 ワースト 」5位の共用施設は「 キッズルーム 」です。入居当初は結構使用されるそうですが約3~5年位経ちますと、ほとんど使われていません。理由は子供達が成長して使わない様になる事と、事故等が起きた時の責任の所在が明確で無いからです。以前、5~6年前頃建ったマンションの「 キッズルーム 」を見ました処、誰も使用しておらず鍵がかかっており、なかには掃除もせずにカビ臭く、蜘蛛の巣が張っていたのが有りました。
 
この5つの「 共用施設 」は入居者にとっては無駄な施設であると思います。
 
さて、逆にマンションの「 共用施設 」で必要最低限の施設は設備関係の「 機械室 」等や「 駐車場 」「 駐輪場 」等の施設を除きますと「 エントランスホール 」「 管理人室 」「 郵便受け室 ( 宅配便ロッカー含む )」「 集会室 」「 ごみ置き場 」等だけです。但し総戸数50戸未満程度のマンションであれば、「 エントランスホール 」の片隅に「 打ち合わせコーナー 」的なスペースを確保すれば「 集会室 」等は必要ではありません。
 
ここで、最近の分譲マンション購入者が欲しいとする「 共用施設 」を御説明致します。
 
それは「 各階設置のゴミ集積場 」です。これが設置されていれば、入居者は寒い冬でも重いゴミを1階の「 ゴミ置き場 」まで持っていかなくて済むのです。また、上記「 ワースト5 」の「 共用施設 」のイニシャルコストやランニングコストほど費用はがかかりません。
 
あとの「 共用施設 」は、できれば「 喫煙室 」です。現在、ほとんどの新規分譲マンションの管理規約ではバルコニーでの喫煙を禁止し、レンジフードの排気口よりタバコの煙が出る事をも禁止しているケースが有ります。また既存( 中古 )のマンションでも管理規約を改訂し、バルコニーでの喫煙を禁止しておるマンションもあります。
 
この管理規約に依って最近新築マンションに入居された喫煙者の方が建物エントランスホールより外の道路に出てタバコを吸っている光景をアチコチで見かける様になりました。日本の成人の約6人に1人が未だに喫煙者ですのでマンションに於いて「 喫煙室 」を共用部分に設置されるのも必要悪ですが、喫煙者にとっては欲しい施設だと思います。喫煙者はマイノリティーになりましたが未だに日本の全人口1億2000万人強の6人に1人が喫煙者です。これらのマイノリティーの喫煙者に対してマンションに「 喫煙室 」を設置しても良いのではと思っています。
 
喫煙は本人より周囲の方々に受動喫煙( 副流煙 )と言って健康を害する悪影響を及ぼします。
 
その為にも、「 喫煙者 」の喫煙する場所を「 禁煙者 」に悪影響を及ぼさない様に完全分煙化し、マンションの入居者( 禁煙者 )に迷惑をかけない程度の6平米( 約3.7帖 )~10平米( 約6帖 )の「 喫煙室 」が有れば良いのではないかと思います。
 
具体的には完全な給排気設備を行います。詳細に御説明すればまず「 喫煙室 」内にタバコ専用の空気洗浄器を設置します。部屋の排気は機械換気で強力にタバコのヤニや臭いを吸い取るフィルターを設けて行い「 喫煙室 」の気圧を外部気圧より下げます。気圧を下げる事に依り「 喫煙室 」の扉を開けても室内の汚れた空気が外部に出ません。更に給気口には逆流弁を設置して「 喫煙室 」の臭いが給気口から外へ出ない様に致します。この様にすればパーフェクトに近い「 喫煙室 」になると思います。
 
このあとに問題になるのは室内や大きな灰皿等の清掃費、空気清浄機や機械換気設備のメンテナンス費用です。これらはマンションの管理会社に試算してもらいその金額を12( ヶ月)で割って1ヶ月の経費を算出し、「 喫煙室 」利用者のみが負担すれば「 喫煙室 」を使用しない方も納得致します。
 
算出された、1ヶ月の経費を使用人数( 喫煙者数 )で割り「 喫煙室 」使用者が払う毎月の管理費にプラスすればいいのではないかと思います。私の試算では総戸数100戸のマンションで「 喫煙室 」使用者が払うプラス分の毎月の費用は僅か約500円程度で済みそうです。
 
ちなみに、この「 喫煙室 」の提案は私の独断と偏見ですが新しい試みだと思います。
 
以上が今回の『 共用施設は少ない方が良い 』の不必要な「 共用施設 」と必要な「 共用施設 」の御説明です。
 
これから新規分譲マンションの商品企画に役立てて下されば幸いです。
 
何度も申し上げています様に、不動産事業で一番大切なのは売主の信用と顧客に対する配慮です。準大手ディベロッパーや中堅ディベロッパーにとって「 超大手、大手ディベの寡占化 」に対抗し勝つ為には顧客へ魅力や気遣いのあるマンションを作り続ける事なのです。
 
但し、毎回注意していますが、クレーム等で信用を落とすのは一瞬です。再度信用を築くには最低10年はかかります。この事を肝に銘じて下さい。
 
次回はフェーズ8の「 モノづくり 」第3項目の『 ソフト面やハード面 』13項目中の第11項目である『 「ごった煮」マンションは入居者の層が異なり管理組合等で問題多発。 』に関してのお話を致します。
 
次回も期待して戴ければ幸いと存じます。
 
皆様、良いお年をお迎えください。
 
 
 
                                                              以上
 
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