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- 第62話 手元キャッシュを最大化する経営(8)
手元キャッシュを最大化する経営を行おうとすると、必然的に実質支配する会社を複数もつことになってしまう。一社だけでは市販されているような書籍に書いてある節税くらいしかできないのだ。しかし、複数の会社を運営するといっても、経理担当者が正確迅速な経理を行えないなら会社を作った意味はなくなる。さらに、各会社はそれぞれ正当な存在意義をもってなければならない。税負担を軽減するためだけの会社ではだめなのだ。
そこで、複数の会社をどう作るかについて書いてみたい。対象はあくまで中小企業で、できれば従業員十名以下の会社と考えていただければいいと思う。
まず、節税を考慮して会社を作る場合、銀行の債務者名寄せと同じだと思えばいい。実質同じ経営の会社がある場合、その会社ごとの与信をみるのではなく、経営権が及ぶと見られる全会社の与信を総合して銀行は管理するのだ。これは一企業グループへの貸し出しを増やしすぎないための方法で、複数の会社で役員が同じ。株主が同じ。資本関係があるなどで判断する。もちろん本社登記の場所が同じで経営権も同じと考えられるときなどは柔軟に対応して判断される。
複数会社を効果的に運用し、税負担をなんとかしようと思うなら、これらの会社は前記の内容を考慮して設立・運営することになる。できれば本社の所在地も同一都道府県でなく、税理士も違うかたちが望ましい。
たとえば実質支配する二社があって、B社が今年度免税事業者とする。A社の消費税納税金額が多くなりすぎて何とかしたいという場合、B社に固定資産を買ってもらいそれをA社に売るとうことができる。中古の機械などを購入するときはこういったやり方が使える。
これを行うとA社はその機械を購入したことによって対応する消費税が相殺され ((注1)ただし簡易課税を選択している場合はこれが使えません)、 その分の消費税負担が減る。
そしてB社はその年は免税事業者なのだから消費税を考えることが必要ないのだ。
もちろんこれをするには経済合理性という概念が必要で、節税のためにこれをおこなうというのは露骨すぎることになる。
また、名寄せされない複数の会社を実質支配下に置くことで、財務内容をベターなかたちにできることもあり、銀行融資も有利に展開できることが多い。
経理・財務を重視しないで経営はできるが、それではいずれキャッシュで苦しむことになる。経営者もいろいろなタイプがあるので無理に経理・財務を猛勉強する必要もないが、ある程度理解しているか、経理・財務を戦略的に考えられる担当者をおいたほうが絶対に経営はうまくいく。
(注1)No.6505 簡易課税制度