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第153話 債権譲渡に債務者の承諾は必要ない

あなたの会社と資産を守る一手

 債権譲渡に債務者の承諾は必要ないと民法には書かれています。債務者の承諾は法律上第三者に対する対抗手段のひとつにすぎないのです(注1)。それゆえに銀行は債権の最終処理としてサービサーに融資をかんたんに譲渡したりできるわけです。じっさい、実務上では債務者の承諾の代わりに通知がおこなわれています。

 通知一つで銀行からサービサーに債権が移るわけですが、担保不動産がある場合にはことは簡単にいきません。とくに所有不動産に銀行から根抵当権が設定されていて、プロパー融資のみの会社でサービサーに債権譲渡がされる場合などは譲渡前に元本確定登記が必要となります。
 元本確定登記なしで債権譲渡がされると、債権は移転したが、根抵当権は移転しないことになるからです(注2)

 登記簿で元本確定登記を見るとこのように書かれています。


 たとえば、上記1順位の根抵当権にもとづいた銀行融資が5千万円あり、それが長期延滞して最終的にサービサーに移転する場合、付記1号に記載されたような元本確定登記がないと、サービサーは根抵当権の実行で担保不動産からの資金回収ができないことになるのです。
 信用保証協会による代位弁済でも同じで、元本確定登記は代位弁済に必要なものになります。
 信用保証協会付きの融資が担保条件である場合だけでなく、無担保であったとしても不動産に余力がある場合は、破たんしたときに元本確定登記が代位弁済の条件となるため、融資したときに、倒産のリスクを考えて元本確定用の委任状が要求されるのです。(注3)


 民間企業で取引先の与信調査をする場合、所有不動産に乙区の最後に元本確定登記と記載されていれば、その会社の債権がサービサーに売られたり、信用保証協会に代位弁済される直前であることを意味します。つまり、そのような会社は倒産目前の会社なのです。

 

 

(注1)
(債権の譲渡の対抗要件)
民法467条 
債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、
債務者以外の第三者に対抗することができない。

 

(注2)
(根抵当権の被担保債権の譲渡等)
民法398 条の7
元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することができない。元本の確定前に債務者のために又は債務者に代わって弁済をした者も、同様とする。
2 元本の確定前に債務の引受けがあったときは、根抵当権者は、引受人の債務について、その根抵当権を行使することができない。

 

(注3)信用保証協会規定
根抵当権移転の準備について  次の場合は、金融機関が設定している根抵当権を、協会に移転する必要があります。
根抵当権を移転するときは、確定登記が必要になります。
なお、確定登記に係る費用は、金融機関の負担となります。
ア 保証条件に付された根抵当権
イ 保証条件外の根抵当権のうち,プロパー債権を差し引いて余力がある場合

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