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第65話 所有不動産に仮差押・差押をされたら…(2)

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「不動産の無剰余とは不動産の時価以上に抵当権等が設定されていて、担保価値がない状態のことを意味する」と前回書いた。図で示すと下記の状態で、時価3千万円の不動産に極度1.1億円の根抵当権がついていて、8千万円の融資残があり、この後に、この不動産に差押をしてきても回収の余地がないので意味がないということになり、これが無剰余にあたる。
 
無剰余で仮差押・差押をし、競売で回収しようとしても、それ自体が一般的には取消されてしまう
(民事執行法63条)(注1)
 
ところが、この違法な無剰余の仮差押・差押が平然と行われる場合がある。
 
ひとつは、その不動産の売買契約が済んでいることを知った場合で、それを知った債権者が、無剰余であることを知りながら仮差押・差押を仕掛けてきて、印鑑代と呼ばれる資金を得ようとするケースだ。
不動産の売買がこの仮差押によってできなくなった場合、売主は既に受けとった手付金の倍額を買い主に返すことになり、その経済的損失は大きくなる。しかもこの仮差押を法的手続で争っていたのではあきらかに売買の日に間に合わないこととなり、債務者はしかたなく印鑑代と呼ばれるカネでこれを解決することになるのだ。ちなみにこの場合の印鑑代は当然ながら手付金相当額よりも少ないものとなる。
債務者が破たんしていてこのような事態になった場合、下記図で説明するとC銀行の配当が減り、不動産仲介手数料が減らされて解決される、あるいはC銀行の配当が減り、立ち退き料が減らされてその資金が捻出されるケースが実務では多い。
 
この方法は、事業破たんし借入金が代位弁済された場合、信用保証協会などからも行われることもあり、注意が必要になる。
 
つぎに、無剰余にみえるが、債権者が買う場合・目論んだ金額での買い手がいて、仮差押・差押をすれば回収できると考えた無担保債権者からの場合だ。この場合は任意売却にせよ、競売にせよその債権者に配当がいくこととなる。
 
そして最後に、無剰余であるかどうかを確認せずに、その規定に従って仮差押・差押を仕掛けてくる租税債務というものだ。
この租税債務にもとづく 仮差押・差押は無剰余であれば解除する方法はルール化されているが、実際には一筋縄ではうまくいかない。
 
いずれにしてもできるだけ仮差押・差押をうけないように債務は遅れずに返済していくのべきなのだと思う。
 
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(注1) 民事執行法
 
第六十三条  執行裁判所は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、その旨を差押債権者(最初の強制競売の開始決定に係る差押債権者をいう。ただし、第四十七条第六項の規定により手続を続行する旨の裁判があつたときは、その裁判を受けた差押債権者をいう。以下この条において同じ。)に通知しなければならない。
一  差押債権者の債権に優先する債権(以下この条において「優先債権」という。)がない場合において、不動産の買受可能価額が執行費用のうち共益費用であるもの(以下「手続費用」という。)の見込額を超えないとき。
 
二  優先債権がある場合において、不動産の買受可能価額が手続費用及び優先債権の見込額の合計額に満たないとき。
 
2  差押債権者が、前項の規定による通知を受けた日から一週間以内に、優先債権がない場合にあつては手続費用の見込額を超える額、優先債権がある場合にあつては手続費用及び優先債権の見込額の合計額以上の額(以下この項において「申出額」という。)を定めて、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める申出及び保証の提供をしないときは、執行裁判所は、差押債権者の申立てに係る強制競売の手続を取り消さなければならない。ただし、差押債権者が、その期間内に、前項各号のいずれにも該当しないことを証明したとき、又は同項第二号に該当する場合であつて不動産の買受可能価額が手続費用の見込額を超える場合において、不動産の売却について優先債権を有する者(買受可能価額で自己の優先債権の全部の弁済を受けることができる見込みがある者を除く。)の同意を得たことを証明したときは、この限りでない。
 
一  差押債権者が不動産の買受人になることができる場合
   申出額に達する買受けの申出がないときは、自ら申出額で不動産を買い受ける旨の申出及び申出額に相当する保証の提供
 
二  差押債権者が不動産の買受人になることができない場合
   買受けの申出の額が申出額に達しないときは、申出額と買受けの申出の額との差額を負担する旨の申出及び申出額と買受可能価額との差額に相当する保証の提供
 
3  前項第二号の申出及び保証の提供があつた場合において、買受可能価額以上の額の買受けの申出がないときは、執行裁判所は、差押債権者の申立てに係る強制競売の手続を取り消さなければならない。
 
4  第二項の保証の提供は、執行裁判所に対し、最高裁判所規則で定める方法により行わなければならない。

 

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