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税務・会計

第12回 年末に会社の財産を棚卸しして整理する

賢い社長の「経理財務の見どころ・勘どころ・ツッコミどころ」

年末は、この1年を振り返り来年を考える時期です。
社長は今年1年間の活動実績や業績の推移などを総括して、来年の事業展開についていろいろな考えを巡らせているころでしょう。
今後のことは損益だけで考えがちです。
しかしこのとき、会社のベースとなっている財産の状態をしっかりと再確認しておくことをおすすめします。
企業経営は継続していきます。
創業から蓄積された会社の財産を把握しておくと、将来のことを考えやすくなります。
 
そこで今回は、会社の財産を棚卸しして、
「処分するもの」
「活かすもの」
「新しくするもの」
を判定していきます。
 
御社のすべての財産は、経営に貢献していますか?
 
 
●「資産科目の内訳明細書」を見て確認する
まず経理に依頼して、決算の時に作成した勘定科目の内訳明細書をコピーしてもらいます。
決算書(貸借対照表と損益計算書)は見ても、勘定科目の内訳明細の内容まで細かく見る社長は多くありません。
最近では電子申告が増えたこともあり、税理士にお任せで、決算の詳細を確認していない社長も増えているようです。
決算書や勘定科目の内訳明細書は税務署や銀行へ提出するために作るのではなく、我が社の財務内容を確認するために作るものです。
 
資産科目の内訳明細書にざっと目を通したら、各資産の内容を細かく見ていきます。
できれば、2色のラインマーカーを用意します。
たとえば、現在使用していない資産の中で、廃棄するものにはピンク色でマークし、売却や買い換えるものには黄色でマークしていきます。
 
御社の財産で、現在使われていないものはいくつありますか?
 
 
●「預金口座」「在庫」「売掛金」の確認をする
勘定科目の内訳明細書の最初のページには、銀行預金口座が多数記載されています。
すでに取引がなくなった銀行や、動きのない支店の預金口座をマークしていきます。
使用していない預金口座についても、経理は残高証明書を取得したり、預金の利息やそれに伴う源泉所得税の会計処理をしたり、事務処理にも時間がかかります。
 
在庫にも、売れ残ったまま1年以上倉庫に眠っているものが必ずあります。
不要な在庫は保管スペースを取り、保有コストがかかっています。
在庫リストを見ながら、早めに処分してしまいましょう。
備品関係の貯蔵品の中にも、過去に購入して使っていないものがあれば処分します。
災害用の備蓄品で消費期限切れになっているものは、交換が必要です。
 
売掛金については、過去の取引で回収できていない債権が、どこの会社でも数件残っているものです。
営業担当者に未回収の得意先の取引状況を確認したうえで、相手先に対して内容証明郵便を発行して督促します。
金額によっては、回収にあたり、弁護士に相談してみましょう。
回収の見込みがない場合には、債権放棄の手続きを踏んで損失を計上する覚悟も必要です。
 
御社では、負の資産をそのままにしていませんか?
 
 
●「投資その他の資産」を確認する
次に、普段の営業活動ではほとんど登場しない投資関係の資産科目について確認します。
日ごろの取引がなく変動もない資産は、その存在すら忘れてしまっているものもあります。
 
「投資その他の資産」の科目内訳書には、ゴルフ会員権や過去に投資した物件などが記載されています。
会員権や不動産などの相場があるものは、経理に現在の取引価格を確認してもらい、帳簿価格との差額を確認します。
各資産の利用状況や換金価値を考慮して、処分の仕方を決めていきます。
 
子会社や関連会社の株式は、業績が良いときに事業拡大のために新設した会社や、業務提携を目的に出資した株式などがあります。
しかし現在は、事業規模が縮小し独立した企業体として存続する必要性がなくなっていたり、出資後の取引関係が薄れていたりするものもあるでしょう。
将来的に合併や株式の譲渡も視野に入れておくべきです。
 
社長は、すべての資産の取得経緯を説明できますか?
 
 
●損切りしてキャッシュフローを改善する
そのほかにも、過去に投資した上場株式や金融機関からの紹介やお付き合いで購入した金融商品等も含まれています。
その中には時価が下がってしまい塩漬けになっているものもあることでしょう。
会社の業績が悪いときに、さらに含み損を実現させて損失を大きくしたくないという気持ちもわかります。
 
しかし、決断を先送りにして逃げていても、将来値上がりする保証はありません。
使わない資産に大事な資金を眠らせておいたままでは、次の手を打つのが遅れるだけです。
本来、経営者であれば、資金を他人に投資するのではなく、自社の事業に積極的に投資すべきです。
 
ピンチのときこそ、考え方の切り替えが必要です。
損をしたと後悔するのではなく、キャッシュフローを改善するために積極的に処分して、資金化したと前向きに考えます。
損切りした分で節税して、税金を取り戻した(税金の社外流出を減らした)と、得した気分になりましょう。
 
事業に使っていない財産を売却したら、いくらになりますか?
 
 
●現実を一覧表で整理して、次の手を打つ
できれば年末の大掃除のときにでも、社長が色分けした科目内訳書を手に持って、自分の足で社内の隅々まで実際に歩いて見回ってみてください。
現物を見て、担当者に話を聞いて、現実の資産の利用状況を再確認して、最終的な判断をくだします。
 
このようにして、年内に会社の資産を一覧表にして利用状況を把握しておくと、社長の頭の中がすっきりと整理できます。
会社の現有財産が頭に入っていると、年始に1年の予定を計画するのに役立ちます。
 
・利用価値のない資産を保有し続けて何か意味があるか?
・不要な資産を売却して資金を調達して次の事業に使えないか?
・埋もれていた財産をほかの事業で活用できないか?
 
会社の全体像がすっきり整理されると、次のビジネスのアイデアが浮かんできます。
色分けして分類して優先順位をつけておくと、すぐ行動に移せます。
行動しなければ、何も変わりません。
そのためにも、年内に会社の資産状況を確認して整理しておきましょう。
 
来年、もっと経営しやすくするために、何を整理しますか?
 

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