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経済・株式・資産

第80話 会社が破たんする原因は資産にある(9)

あなたの会社と資産を守る一手

特定の不動産に過度に依存する事業、許認可事業、多数債権者のいる事業は再生が難しいものです。
資産という観点で考えると、「特定の不動産に過度に依存する事業」で破たんした会社は債権者・借入残高、不動産の時価、担保設定状況とか、財務を総合的に考えないと再生できるか否かが判断できないのです。
具体的にこれにあてはまる会社は?というと、ホテル経営だとか、工場などが該当します。
 
ホテルの場合、そこにあるという立地条件や今まできづきあげた信頼ゆえに既存のノウハウをもって別の場所で事業を再開してもうまくはいきません。
工場の場合、他の場所に移転して事業を再生してもよさそうなものですが、機械類の移設費用の問題や熟練工の住所地との関係でやはり移転は難しいことになります。
 
それゆえにそういった事業体が経営破たんした場合、民事再生が一番正攻法なやりかたに思えますが、その会社が中小企業の場合、民事再生はほとんどのケースでうまくいきません。
 
まず、中小企業ではその不動産に根抵当権などが設定されているケースがほとんどで、時価以上にその債権者(根抵当権者)から借入をしているケースも多いのです。
民事再生をしてもこの根抵当権等は別除権と言われ、原則として民事再生手続による制約を受けることがありません。つまり民事再生をしてもホテルや工場そのものを競売に出されてしまい事実上の再生ができなくなるわけです。(注1:民事再生法第53条)
さらには事業融資の債権者が日本政策金融公庫(旧 国民生活金融公庫)や信用保証協会の場合、再生計画そのものを否決してくるケースも多いのです。
その結果、民事再生じたいができなくなり、破産に追い込まれることになるわけです。
 
また、 こういった事例では固定資産税・消費税の納付が遅延しているケースが多く、その不動産に余力がなくとも差押がついていることもあります。
 
それでも再生の見込みがあるのはどんなケースかというと一定の営業利益が見込め、担保をつけている債権者が金融機関で、日本政策金融公庫(旧 国民生活金融公庫)や信用保証協会がからんでいない場合です。
 
こういった場合、債権者にある程度の返済を継続して話し合いをしていけば、急に協力を打ち切られることもなく、不安定な状態ながら事業が継続できることもあります。
 
誤解されやすいことですが、債権者に日本政策金融公庫(旧 国民生活金融公庫)や信用保証協会がいても別にかまわないのです。
ただし、その場合には事業に使われている不動産の抵当権者・根抵当権者にどちらかがなっていないこと。
また、時価余力があきらかにないと思われ、差押・仮差押をしてこないと推定されることが前提条件となります。
 
じっさいに再生の現場にいるとわかりますが、特定の不動産に過度に依存する事業でも、条件にあてはまれば事業再生し成功に導くことはできるものです。しかも多くの例で、1年以内に事業が比較的安定してくるのです。
そんな場合でも、いやがらずに債権者と誠実に交渉していくことは絶対必要になるものです。

注1 (民事再生法第53条)
(別除権)
第五十三条   再生手続開始の時において再生債務者の財産につき存する担保権(特別の先取特権、質権、抵当権又は商法 若しくは会社法 の規定による留置権をいう。第三項において同じ。)を有する者は、その目的である財産について、別除権を有する。
2   別除権は、再生手続によらないで、行使することができる。
3   担保権の目的である財産が再生債務者等による任意売却その他の事由により再生債務者財産に属しないこととなった場合において当該担保権がなお存続するときにおける当該担保権を有する者も、その目的である財産について別除権を有する。

 

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