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- 第45話 所有不動産に価値(余力)がないから差押えられる 危険性もないと考えることの間違い
所有不動産に価値(余力)がないから差押えられる危険性もないと考えている社長はいまだに多い。
実際に再生の現場では、信用保証協会が余力のない不動産に仮差押をしてきたり、余力があろうとなかろうと市が税金の滞納を理由に仮差押をしてきたりと、日常的に仮差押・差押が乱発されている。不動産だけでなく税務署が決算書の売掛金の科目内訳書と債務者から提出された直近売上状況の一覧表から売掛金債務のある先を割り出し、一斉に仮差押をしてきた例もある。
「債務が履行できなくなったらあらゆる資産に仮差押がくると考えたほうがいい」と言っても、その言葉をまったく聞かず、仮差押されて再生しようがなくなってからあわてて私のところに電話してくる例も多いのだ。
そんな状況でも再生できるケースは、ごくまれにあるのだが、癌と同じで診断と治療が遅ければ遅いほど致命的になる。
では、余力のない資産への仮差押・差押はどのようなときに行われるのか?を下のグラフを参考に書いてみたい。左が会社のバランスシートで、右が連帯保証人である社長個人のバランスシートだ。話を簡単にする意味で債務は借入金だけで書いてある。グラフでわかるようにこの会社は明らかに債務超過、資産<借入金の状態にある。
ところがこの会社の社長は個人資産として収益不動産・アパートを所有している。今は対応借入金のほうが大きくこれも債務超過なのだが、このケースで会社に融資をしている貸しすぎている銀行が社長所有のアパートに仮差押をしてくるとは考えずらい。
しかし、この不動産が売買されるという情報を債権者がつかんだ場合、印鑑代(余力がなくても仮差押を解除する、あるいは担保を解除するためのお金)をとるチャンスと考えて仮差押をしてくる場合は多い。
また、役所などは社長個人が債務者である税金の滞納などで仮差押を平然としてくる。
また、期限の利益喪失後だいぶ時間が経過してから、アパートローンの返済が進んだだろうから余力が出てきているはずだと考え、仮差押をしてくる例もある。
社長所有の不動産などは、その存在自体をわからなくするための借り入れのしかた・担保のつけかた、個人資産を守るための考えかたがあるのだが、理解されておらず、破たんしてから相談されてもなす術がないことも多い。何事も早めに対処し始めたほうがベターなのだ。