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- 第97話 中小企業の粉飾決算(3)
粉飾決算による利益水増しの方法はいくつもあるが、在庫の水増しによる粉飾か架空売上の計上
に集約できると前回書きましたが、 架空売上に関係して融通手形についてもふれておこうと思います。
融通手形とは、じっさいの商取引がないにもかかわらず、振り出される手形のことです。
なんでこんなことが行われるかというと、融通した手形を銀行にもっていき手形割引というかたちで融資を受ければすぐに資金が手にはいるからです。
もちろん銀行も商取引の裏づけのない手形は割引きません。それゆえにあくまでも商取引を仮装するかたちとなります。
融通手形のイメージは下記のようになります。
商取引もないのに手形を振り出して一方的に援助するというかたちもありますが、多くは下記のように相互に資金が必要になった2つ以上の会社が手形を融通しあい、お互いの取引銀行で割引くことで融資と同じ機能を得ることになります。
この融通手形、割引している金融機関は最初は融通手形と気づかず、何回もその銘柄を割引くうちにその異常さに気がつくことになります。
異常な形態とは、手形の期日が同じであったり、金額が似たような金額であったり、上の図例で言えば A社、B社とも銀行の融資余力が少なく資金難であるとかです。割引している金融機関は相互に信用照会という形で連絡をとりあい、なかにはその会社振出しの割引手形のすべてを照会しあうことで実体がわかってきます。
そしてクロだと思われるとその銘柄の割引金額の上限がじょじょに下げられていきます。一度融通手形を割引いた場合、そういう形でしかソフトランディングすることができないのが実情なのです。
ところが資金難で経営も苦しい会社ゆえ、そのソフトランディング中にA社、B社のどちらかが不渡りをだすことがあります。融通手形では片方の会社が不渡りをだせば、もう片方も同じ運命をたどります。
そして、融通手形を行っている債務者はほとんどのケースでそれが融通手形であると自白しません。
このような取引形態はいくら親しい間柄の会社からのお願いであっても断らなければ自分も致命傷をおうことになります。
ちなみに銀行がどのように融通手形をわりだして、どう対応するのか図にしてみました。