この「締後売上」ですが通常の月の場合、利益には影響しないのですが、決算月の場合はその金額が大きくなれば当期の収益が増加し、締後とはなっているものの売上である以上、消費税が計上され消費税額の増加。そして当期の利益増加による法人税・地方税の増加をもたらすことになります。
とりわけ、製造業者では締後売上に関する利益の増加による税負担の増加の割合が高くなりやすく、さらに製造現場の効率的な稼働や資金繰りにも影響を与えることがあるためとても重要なことになるのです。
ちなみに、「締後売上」の計上については法人税法基本通達2-6-1 (国税庁ホームページ)(注1)というものがありますが、この通達を根拠にして「締後売上」を未計上にした場合、通達中に「収入及び支出の計算」、「継続して」と書かれている以上、税務調査時にめんどうなことになる可能性がありますのでご理解ください。
まず、締後売上は例で示すと下記のようなものです。5月31日決算の会社で5月20日締めで販売先に請求し、21日~31日の分は納品だけして請求は6月20日となる5月中の売上です。
ちなみに、この会社、税込み経理・本則課税の製造業者とします。
上記のような場合、締後売上分納品書の合計金額が2,000万円であることからその消費税額160万円が消費税として加算され、5月に請求もしていないのに粗利益800万円が発生したことになってしまうのです。
したがってこの会社が黒字ならその利益に対応した法人税・地方税の負担が増加します。
さらにわるいことにはこの締後売上は6月請求のため早くて7月に資金回収となり5月の売上より回収が遅くなるのです。
この会社の平均月商が700万円程度の場合などは資金繰りに大きな影響を与えかねません。
では、このような場合どうすればいいのか?
じつは昔、再生させた会社の経理と生産ラインをみていたときに同じケースがおこりました。
そのときは決算月に平均月商の数倍もの注文・納品要請が発生し、しかもその半分以上が締後売上になるかもしれないと思われました。そのときに20日締の請求をする販売先へ了解をもらい、納品を翌月にまわし当月中は半製品の状態とし、月末締の販売先企業への月内納品に全力を注ぐ判断をしました。
それでも生産ラインはフル稼働で手一杯でしたが、結果的には資金繰りも破たんせず、税負担も見込みより増加しませんでした。
製造業では製品と半製品では付加価値が違い、半製品でも棚卸しには計上されるものの、製品より金額的に安い評価額となるため利益が減額され税負担への影響も減るのです。
銀行借入がなかなかしてもらえない会社などは、このようなこともチェックしていないと資金繰り破たんすることがあるのです。
(注1)
法人税法基本通達2-6-1 (国税庁ホームページより)
法人が、商慣習その他相当の理由により、各事業年度に係る収入及び支出の計算の基礎となる決算締切日を継続してその事業年度終了の日以前おおむね10日以内の一定の日としている場合には、これを認める。