「社保倒産」という言葉がマスコミに登場するようになりました。厚生年金保険料等の社会保険料が支払えずに企業が倒産していくことを意味しているのですが、今後はその割合が増えていくと言われています。
なぜ「社保倒産」が発生するのかと疑問に思う方もいるかもしれません。従業員に給与を払い、そのなかから預り金というかたちで社会保険料を預かって支払うのだから納付が遅れるわけはないと思う方も多いでしょう。
しかし、社員から預かった預り金と同じ金額を、会社が法定福利費という名目で追加で払い、さらに「子ども・子育て拠出金」にいたっては全額会社負担となるからこのようなことになるわけです。
そんなことから、「社保倒産」が発生するわけですが、日本年金機構は企業に対していっせつの譲歩を認めず、銀行のように事業再生のために一緒に考えてあげてリスケをしたりといったこともなく、納付するか倒産するかの二者択一を迫ってくることになります。
民間では最小の費用で最大の効果をあげるという経済原則が通用するのに、公平性という言葉のもとに回収できなければ差押えをして倒産させ、生きていればその後に回収できるであろう社会保険料のことなどいっさい考えないことがその原因にあると考えられます。
事実、社会保険料を滞納した場合の取立ては厳しく、「健康保険及び厚生年金保険等の滞納整理事務に係る初期手順要領について〔厚生年金保険法〕」(注1)どおりにきっちりと取立てをおこなってきます。
現状では、銀行や税務署の取立てよりもはるかに厳しく、容赦のない回収が行われているのが実情です。社会保険料を滞納すると、電話による督促が行われ、次に下記のような来所通知書が送られてきます。
下記の「来所通知書」が送られてきた会社の例でいえば、来所通知書の発行日現在で、社会保険料が納付されているか調べたところ、遅れていた金額は納付済みで、滞納額がまったくない状態であるのにこの書面が送られてきていました。
滞納しているから督促してきたというよりも、滞納したという事実に対してアクションを起こしてきたと考えるほうがいいかもしれません。じっさい、別の会社では2月28日納付期限の社会保険料を3月1日に納付したところ、年金機構からお叱りの文書が届いていました。
社会保険料などの歳入金の入金状況を日本年金機構が知るにはタイムラグがあるからしかたないのですが、理不尽ともいえます。
一般的に社会保険料は20日くらい滞納すれば、厳しい督促が始まります。当たり前ですが、企業の資金繰りといったことも考慮してもらえず、下記赤線で示したように「決算書、法人税申告書(勘定科目内訳明細書を含む)、売掛台帳、預金通帳等を持参してください」と通告してくるのです。
もちろん、これらの情報は今後、差押えする資産を確認するために使われるわけです。
それゆえに、銀行借入できるなら借入してでも納付してしまうことがだいじなのです。
もしも、根本的な解決をしたいと思うなら財務の根本的な改善が必要になります。ただ、その策は、イチかバチかという側面があることなので、次回に書きたいと思います。