毎年11月11日(独身の日)まで行われる中国のネットセールで、昨年は「ライブコマース」(ネット実況中継による販売)が注目された。
政府の「共同富裕」政策への配慮からカウントダウンイベントなどを取りやめた、「静かで理性的なダブルイレブン」とされた2021年の「独身の日セール」だったが、結果的にはアリババとJD.comの大手2社の売上合計が15兆円と過去最高を達成するなど盛況で、急速に伸びているライブコマースでは、「口紅王子」と呼ばれるAustinと「ライブコマースの女王」HuangWeiの二人だけで、初日の10月26日に160億元(2,800億円)を売り上げたとされている。
HuangWei(ライブコマースの女王)は、その後に当局から6億4,300万元(114億円)を脱税していたとの摘発を受け、13億4,100万元(240億円)の追徴課税を科されるというニュースも話題となったが、「ライブコマースの達人」がそれほど稼いでいることにも驚かされた。
中国はネット販売(EC)の市場規模が2兆2,970 億ドルと圧倒的に世界一で、2位のアメリカの7,945億ドルの3倍近くだが、偽物が多数出回っていることなどからブランド公式発信や信頼できる人の薦める商品を購入する傾向があり、ライブコマース市場は2021年に90%増の2兆元(32兆円)規模に急拡大、EC売上の3.4%を占めている。
■日本のライブコマース
日本もインスタライブやTikTokなどの動画を見る若い世代は増えており、ライブコマースが今後中国と同じくEC売上(20兆円)の3.4%になった場合は6,500億円とメルカリに匹敵するため、期待されている。
最近ではビックカメラがライブコマースを始めると発表したが、私は「社長のメシの種4.0 第54回」で紹介した化粧品の「トーンto/one)」と、インスタライブを中心にライブコマースを展開している、SNSのフォロワーが190万人の「ゆうこす」に注目している。
「ゆうこす」とは元HKT48の菅本裕子さんのことで、日本のライブコマースを牽引する存在となっている。
去年の「Japan IT Week」でお話を伺った時に、「ライブコマースはリアルタイムに視聴者からのコメントに返事をしながら進めるところが動画コマースとは違う」と話していたが、ここがテレビショッピングやYouTubeなどの動画にはない要素だ。
しかし、誰からどんなコメントが来るのかはその場になってみないと分からないため、コメントにちゃんと応対できることがライブコマースでは重要で、社内でやる場合はそのような人材の育成が必要となる。
ライブ中に新製品の発売を開始したり、限定クーポンを出すなど、生配信だからこそできることを取り入れることも有効と話していた。
有名人や友人のインスタライブなどをスマホで見るのは日常的になってきており、日本でもライブコマースは広がってゆくと考えている。
======== DATA =========
●電子商取引に関する市場調査(経済産業省 商務情報政策局 情報経済課)
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/statistics/outlook/210730_new_hokokusho.pdf
●ゆうこす(菅本裕子)インスタグラム
https://www.instagram.com/yukos0520/?hl=ja