前回、家計簿のように経営していけば、必ず採算が合ってうまく経営が出来るという話をさせていただきました。 しかし、実際の経営では、家計簿のような採算が合っても、うまく経営できないケースも多いようです。
例えば、社員の勤務先の会社の資金繰りが悪化し、給料の遅配が生じたとします。すると、家計簿では2万円の黒字(給料手取り30万円、家事費28万円)であっても、給料30万円が入ってこないわけですから、28万円のお金が不足することになります。お金が足りなければ、どんなに収支が合っていても家計はやっていけません。
同様に、会社経営におきましても、採算とお金を合わせていく必要があります。どんなに採算だけ合っていても、お金が足りなければ倒産してしまいます。
そうならないためには、まず月次決算書を早く正確に作ることです。そして、キャッシュフロー経営を実践していくことが大切です。その上で、部門採算経営を行っていけば、必ず成果が出てくるものです。
しかし、京セラの稲盛名誉会長がアメーバ経営によって、日本航空を再建に導かれた今話題の話を聞かれて、すぐに部門採算制度の導入を考えられる経営者の方がたくさんおられます。
先日、そんな経営者の相談を受けて、びっくりすることがありました。話を聞きますと、毎月の月次決算が2ヵ月後にしか完成しないばかりでなく、出てきた利益も正確なものではありませんでした。また、部門採算制度を社長が導入しようとしても、経理が〝これ以上仕事が増えたらやってられない〟と反対しているとのことでした。さらに、売上が伸びれば伸びるほど、資金繰りが苦しくなっていくような財務体質にもなっていました。
こんな会社に、部門採算制度を導入して売り上げを伸ばしていけば、よけいに資金繰りが苦しくなっていくのは目に見えています。
部門採算制度を導入する前に、今一度、財務の基礎をしっかり固めていただくことが必要ではなかろうかと思います。しっかりした経理と財務の土台が出てきてこそ、部門採算制度がうまく機能して、どんどん会社が成長していくのではないでしょうか。