menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

経済・株式・資産

第24回 データ解析とコーディネイトで躍進する小売業「セリア」

深読み企業分析

セリアという会社は100円ショップではあるが、実際は概念的に全く新しいタイプの小売業という位置づけである。業態としては100円ショップであり、一般的にはダイソーに次いで業界2位と表現される。しかし、現実的には2位なのは店舗数だけで、売上高、利益ではともに業界トップの会社である。店舗数はダイソーの2分の1以下のため、知名度ではダイソーに劣るものの、5年ほど前にダイソーの売上を上回り、現在の営業利益はダイソーの2倍という会社である。
 
同社の最大の強みはPOSデータの解析力であろう。日本の小売業の多くは十数年前にすでにPOSの設置を行っている。中にはさらに進んだID付きPOSと呼ばれるFSP(フリークエント・ショッパーズ・プログラム)まで行えるポイントカードシステムを導入している企業も多い。しかし、POSにしてもポイントカードにしても、そこで得たデータを解析して仮説検証を行いながら最適解を導くという作業があって、初めて大きな効果をもたらすものである。
 
しかし、それらに最大のエネルギーを注いでいる会社は、ほんの一握りに過ぎない。これらデータを経営に生かしていると言える企業の代表は何と言ってもセブン・イレブンであろう。もともと、セブン・イレブンが日本のPOS導入の草分けであり、その動きを見てその他多くの小売業がその形式のみを真似したのである。しかし、これらのシステムは形式のみ真似してもほとんど意味のないものである。多くの企業がポイントカードを単なる割引手段としてしまった。一方、先進的な企業としてヤオコーが最近FSPを導入し、実際の企業戦略にも大いに生かしているところである。
 
これら先進的企業に並んで、POSにより収集したビッグデータを毎日1億回計算し、経営に生かしているのが同社である。売れ筋商品の把握に始まり、在庫管理、そしてサプライヤーに対する受発注管理も行っている。同社では受発注を精緻にコントロールすることで、サプライヤーの負担が軽くなるように図り、全体最適を目指している。
 
同社によれば、商品開発は女性がふさわしいにもかかわらず、メーカーの商品開発は80%が男性であり、商品開発にはふさわしくないと見ている。一方で、データ解析は男性向きの仕事であることから、同社は男性社員で解析を行い、サプライヤーにその情報を提供し、サプライヤーは女性中心に開発を行うというような役割分担を志向している。
 
このように同社は、自らは精緻なデータ解析を行い、開発から生産はサプライヤーに依存して、効率的かつ最適な関係をコーディネイトする企業と位置付けられる。
 
 
有賀の眼
 
商品を安く売るという観点から言えば、ディスカウントショップも100円ショップも似たようなイメージがある。しかし、根本的に違う点は、ディスカウントショップの競争は価格に特化しやすいため、その中で活路を見出すのは極めて難しいということがある。しかし、価格が100円と決まっていると、競争はいかに付加価値を高めるかという方向に向かうため、付加価値化に成功すれば、収益性を高められる可能性は格段に高いと言える。
 
同社には必需品を安くするという発想はあまりないように思われる。むしろ、なくてもいいものを安くすることによって、マーケットが大きく広がるという発想がある。たとえば、手芸用品は高いと興味を持つ人が少ないが、それ自体が安ければ、その手芸用品を使って何かを作った時にかなりお得感が出る。よって、マーケット自体が大きくなるということである。
 
このようにして、ホビーグッズ、雑貨、インテリアなどでマーケットを想像したことによって、そういうものはセリアで買いたいというもはやブランドを確立したことも強みである。

第23回 ビジネスにおいてもライバルは自分?「ベルク」前のページ

第25回 今後ますます重要になる、自らの強みの再考で収益性を高めるという考え方「ロックフィールド」次のページ

関連セミナー・商品

  1. 社長のための「お金の授業」定期受講お申込みページ

    セミナー

    社長のための「お金の授業」定期受講お申込みページ

  2. 《最新刊》有賀泰夫の「2024年春からの株式市場の行方と有望企業」

    音声・映像

    《最新刊》有賀泰夫の「2024年春からの株式市場の行方と有望企業」

  3. 《シリーズ最新刊》有賀泰夫「お金の授業 企業の月次データで読む株式投資法」

    音声・映像

    《シリーズ最新刊》有賀泰夫「お金の授業 企業の月次データで読む株式投資法」

関連記事

  1. 第84回「食品スーパー、食品流通の縁の下の力持ち」サイバーリンクス

  2. 第16回 経営者には逆境にめげない精神的タフさが重要だということを痛感させる「トリドール」

  3. 第28回 卸機能を巧みに取り込んで高成長するドラッグストア「クスリのアオキ」

最新の経営コラム

  1. 楠木建が商売の原理原則を学んだ「全身商売人」ユニクロ柳井正氏

  2. 第10講 WILLとMUSTをCANに変える:配属に不満がある社員とどう関わるか

  3. 第147回『紫式部と藤原道長』(著:倉本一宏)

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. 戦略・戦術

    第176話 税制改正でキャッシュを増やせ
  2. マネジメント

    危機を乗り越える知恵(7)チャーチルのコミュニケーション術
  3. マネジメント

    時代の転換期を先取りする(11) 南蛮貿易を押さえた者が天下を取る(織田信長)
  4. 教養

    2017年9月号
  5. マネジメント

    逆転の発想(27) 戦場で負けても政治で勝てる(豊臣秀吉)
keyboard_arrow_up