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採用・法律

第23回 『東京五輪期間中の年次有給休暇の取得を制限できるの!?』

中小企業の新たな法律リスク

いよいよ来年(2020年)夏、東京で五輪が開催されますが、その開催期間中、従業員から休暇の希望が出てくるのではないかと太田社長は懸念し、その対応についての相談です。
 
* * *
 
太田社長:賛多先生、先日終了したラグビーのワールドカップ日本大会、盛り上がりましたね。日本の活躍に感動し、私もすっかりにわかラグビーファンになりました。おかげでビールがおいしく飲めました。
 
賛多弁護士:日本チームは史上初のベスト8進出、盛り上がりましたね。今回初めて知ったのですが、世界三大スポーツは、五輪、サッカーのワールドカップ、そしてラグビーのワールドカップだそうですね。
 
太田社長:先生、今日は、まさにその五輪のことで相談なのです。実は今年の初夏にあった五輪チケットの抽選で、うちの従業員が人気競技の決勝戦に当選したらしく、それが平日の日中に行われるということで、今から休み云々と言っているんですよ。
 
賛多弁護士:太田社長の会社は土日祝祭日を休日としていましたね。たしかに、今回のラグビーワールドカップは、日本が開催国ということもあって試合日程は全て土日でしたが、五輪の場合は人気種目の決勝競技であっても平日に行われますから、太田社長の会社の場合、観戦する際に休暇の問題が出てきますね。
 
太田社長:そうなんです。しかも4人分当たっていて、他の従業員も誘っています。休暇の取得を制限することはできるのでしょうか。
 
賛多弁護士:残念ながら、原則会社から従業員の休暇取得を制限することはできません。
 
太田社長:本当ですか?
 
賛多弁護士:はい。従業員には会社から年次有給休暇が付与されますが、この休暇の取得は従業員の権利であって、取得にあたり会社の許可は不要で、従業員から会社への届出で足ります。そして従業員の届出に対し、会社には時季変更権というのがありますが、それは、例外的な場合に限り、他の日に年次有給休暇を取るように要求することができるにとどまります。
 
太田社長:例外的な場合というのはどのような場合でしょうか。
 
賛多弁護士:会社毎の個別事情によるのですが、平たく言うと、会社の仕事がどうしても回らない場合です。
 
太田社長:そうすると、ウチの会社のある部門で複数の従業員が同時に休暇を取る場合、会社の仕事が回らないということで、その年次有給休暇の時季変更権を行使できないでしょうか。
 
賛多弁護士:そうですね‥‥。複数の従業員が休むと、単に忙しくなるという理由では難しいです。決算期にあり唯一の経理担当者であるとか、株主総会で事務局担当責任者であるとか、その時期に、その人が会社にいなければならないという、例外的な状況が必要になります。
 
太田社長:なるほど、なかなか厳しいのですね。何か良い策はないでしょうか。
 
賛多弁護士:東京五輪はまたとない機会ですので、何とか観戦させてあげたいですよね。そうすると、既にその競技の日時は決まっている訳ですから、今の段階でその従業員や部署の方々と話し合いをしておけば良いと思います。
 
太田社長:どのように話をすれば良いでしょうか。
 
賛多弁護士:休暇を取らせないという観点ではなく、あくまで会社の業務をスムーズに回すために協力して欲しいというスタンスで話をしましょう。あと、太田社長の話によるとその従業員は他の従業員も誘っているようですので、その方々も交えて、仕事の進め方や欠員が出る場合のサポート方法などを話し合うと良いと思います。
 
太田社長:早めが良いのですね。
 
賛多弁護士:その通りです。また、他にも東京五輪の観戦を予定している従業員がいるかもしれませんので、観戦予定者は早めに会社へ申し出て下さいとアナウンスしてみてはいかがですか。
 
太田社長:なるほど、早速やってみます。
 
 
* * *
 
 年次有給休暇は従業員が会社から付与されるものですが、この休暇の取得は従業員の権利であって、取得にあたり会社の許可は不要で、従業員から会社への届出で足ります。また、かかる従業員の届出に対し、会社側は時季変更権を行使することができますが、それは例外的な場合に限り他の日に年次有給休暇を取るように要求できるにとどまります。来年は4年に一度の五輪、しかも自国開催となると、人によっては一生に一度の五輪となる可能性も高く、会社営業日に観戦予定の従業員がいる場合、有休取得へ早めの対応を検討しましょう。

 
執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 丸山 純平

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