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採用・法律

第151回「兼業・副業人材の受入れ」

中小企業の新たな法律リスク

神田社長は、昨今の人材不足を受け、少しでも人材獲得の機会を増やそうと、兼業・副業人材の受入れについて検討しています。

* * *

神田社長 : 賛多先生、おかげさまで我が社の業績は好調で、どんどん会社の規模を拡大していこうと思うのですが、折からの人材不足で求人広告を出してもなかなか応募が来ないというのが現状です。

そこで、少しでも人材確保の機会を広げるため、兼業・副業人材についても応募対象にしたところ、近くの淡路町商事の社員の方が応募してくれそうです。

 

賛多弁護士: 多様な働き方の実現や従業員のモチベーション向上等を目的として自社従業員に兼業・副業を容認している企業は増加傾向にありますので、兼業・副業人材も重要な働き手になってくるでしょう。

他方、兼業・副業人材を受け入れる際には、注意すべきポイントもあります。

 

神田社長 : どのようなことでしょうか。

 

賛多弁護士: まずは、本来の勤務先での勤務内容の把握です。兼業・副業人材の本来の勤務先と兼業・副業先との間で競業や企業秘密の漏洩のおそれがないかという観点からの確認が必要となってきます。

 

神田社長 : なぜ競業や企業秘密の漏洩が問題になるのでしょうか。

 

賛多弁護士: 兼業・副業に当たって、多くの人は「スキルを活かしたい」と考えることから、兼業・副業人材の本来の勤務先と兼業・副業先が競業関係にあることや兼業・副業によって企業秘密が漏洩される可能性があるためです。そのため、兼業・副業人材を受け入れる際には、本来の勤務先の事業内容、従事している業務内容について確認するといった対応が考えられます。

今回でいうと、淡路町商事の事業内容と実際に従事している業務内容について確認することになります。

 

神田社長 : 無用なトラブルを避けるためにも、採用前の確認が必要ですね。

 

賛多弁護士: もう一点、把握しておかなければならない重要なものとして、本来の勤務先での労働時間があります。

 

神田社長 : なぜ本来の勤務先での労働時間を把握する必要があるのでしょうか。

 

賛多弁護士: 労働基準法では、労働時間について「事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」とされています(労基法第38条第1項)。

ここでいう、「事業場を異にする場合」とは、同じ使用者の異なる事業場だけでなく、異なる使用者の異なる事業場も含まれるとされています(労働基準局長通達(昭和23年5月14日付け基発第769号))。

例えば、御社の本社と横浜支店で勤務するような場合だけでなく、御社の本社と淡路町商事の東京支店で勤務するような場合、つまり、兼業・副業に当たる場合についても、労働時間に関する規定(法定労働時間(労基法第32条)、時間外労働(労基法第36条)のうち時間外労働と休日労働の合計が単月100時間未満、複数月平均80時間以内の要件)が通算されることになります。

 

神田社長 : ということは、当社で3時間しか勤務していないが、実は、本来の勤務先で7時間働いていたような場合は、時間外労働が発生するということですか。

 

賛多弁護士: そのとおりです。兼業・副業人材の他社での労働時間の把握を怠ってしまうと、知らず知らずのうちに、時間外労働が発生したにもかかわらず、割増賃金が支払われていなかった、なんていうことにもなりかねません。

そのような事態を避けるためにも、兼業・副業人材を受け入れる際には、勤務先での「労働契約の締結日、期間」「所定労働日、所定労働時間、始業・終業時刻」「所定外労働の有無」等について確認しておく必要があります。

なお、労働時間の通算は、必ずしも労働契約の締結順でなされるものではないため、兼業・副業先が常に割増賃金を支払わなければならないという訳でもないことには注意が必要です。

 

神田社長 : なんだか複雑ですね。

賛多弁護士: 実際の労働時間の通算の方法については、複雑な面もありますので、まずは、兼業・副業人材を受け入れるにあたっては、本来の勤務先での業務内容及び労働時間等の把握が必要になってくることを認識していただければと思います。

* * *

企業にとって、兼業・副業に対する取組は避けることのできない課題となっている一方、通常の雇用とは異なった観点での対応が必要です。

自社従業員の兼業・副業の容認、兼業・副業人材の受入れをお考えの際は、ぜひ弁護士に御相談ください。

 

執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 種池慎太郎

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