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人間学・古典

第5講 「言志四録その5」
余は饒舌の時 自ら気の暴するを覚える。

先人の名句名言の教え 東洋思想に学ぶ経営学

【意味】
くだらないことをぺらぺら喋る時は、気力に引き締まりがなく、心が暴走している事を感じる。


【解説】
あなたの滑りは軽い」とは、ゲレンデで何気なく聞こえたスキー指導員の言葉です。
リフトの上から眺めていると、この言葉の意味がよく解ります。
転ばずに斜面を滑り降りることは同じでも、フォームの悪い人はどこかがぎこちないものです。
だからといって若者の滑りがいいかというとそうばかりではなく、フォームが良くても暴走気味で軽さが感じられます。

風格ある滑りとなると、やはりある程度の年齢に達した人になります。体の移動に無駄がなくゆったりとして見えるのです。

言葉も同じです。
世間では多弁な人ほど人間的に軽い人と判断される傾向があります。
その軽さを露呈する最たる例は、自分の日常生活が締まっていないにもかかわらず、人間学を講じる人物かもしれません。
もちろん私自身もその代表的な一人であります。


兎角、先生と呼ばれる職業の人間は、人前で話す機会も多く、それでお金を
もらっていることも多いので、ネタも豊富でさほど緊張せずに話せる人ばかりです。
ですから、突然あいさつを頼まれても右往左往しませんが、
ともすると一人悦に入って迷演説が長々と続き、場が白けてしまうようなケースが見受けられます。

社長や幹部も大勢の社員を前に話す機会が多いと思いますが、同様のことがいえるのです。
よく「うちの上司の話が長い」という社員の愚痴を聞きますが、
このような話こそ饒舌の時であり、掲句でいう「自ら気の暴するを覚える」時なのです。


古くから「言霊」という表現を使いますが、言葉を発するたびにその人の命のエネルギーが、
言葉に乗って体外に発せられるという意味です。命を削ることです。

一方的に話すだけの人間は、気力も中身(ネタ)も減少してしまいますから、
話をして減少した分を読書や坐禅で補充しなければなりません。
精神エネルギーの補充は、ある意味で肉体エネルギーの補充である3度の食事並みに大切なのです。



杉山巌海

第4講 「言志四録その4」余は少壮の時、気鋭なり。 晩年に至り、意のごとくなる能わず。前のページ

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