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第160回 2025年の公益通報者保護法の改正はどのようなものでしょうか?!

中小企業の新たな法律リスク

2025年の公益通報者保護法の改正はどのようなものでしょうか?

田中社長は賛多弁護士に内部通報に関する相談をしております。

 

田中社長:先日、ある会社が内部告発をした元取締役に対して、数千万円の損害賠償を請求する訴訟をしている、といったニュースに接しました。それにしても、法律上、会社は内部告発の通報者に対して損害賠償を請求できるのでしょうか。

 

賛多弁護士:事案によりますが、公益通報者保護法では、一定の場合、事業者は公益通報を理由に通報者に損害の賠償を請求できない、と定められています(※)。

 

田中社長:そうですよね。通報をする人が後から会社に損害賠償請求をされるリスクを負うとなると、誰も通報しなくなると思います。それにしても、会社が、通報者に報復をするというのはよくあるのですか?

 

賛多弁護士:先日のニュースのように損害賠償請求訴訟まで提起する、ということはまれかも知れませんが、人事上の報復をするケースは少なくないのではと思います。

 

田中社長:例えば解雇や降格などの人事権の行使でしょうか。このような報復も法律上は禁止されていないのですか?

 

賛多弁護士:公益通報者保護法ではこれを禁止する規定があります(※)。公益通報者保護法では、一定の場合、公益通報を理由として労働者に対する解雇をすることは無効、降格、減給、退職金の不支給その他不利益な取扱いも禁止されております。通報者が役員であり、公益通報を理由に解任された場合は、一定の場合、事業者に対して損害賠償を請求できます。

 

田中社長:法律上禁止されているのに、なぜ、このような報復がしばしば起こるのでしょうか。

 

賛多弁護士:おっしゃるとおりです。現行の法律の実効性が不十分であることはたびたび指摘されてきました。例えば、事業者が通報者が公益通報をしたことを理由として不利益取り扱いをしても特に罰則がありませんので十分な抑止力にはなっていないのではと言われていました。また、事業者は、仮に真の意図は公益通報に対する人事上の報復であっても、表向きは別の理由で人事上の処分をするのが通常であると思われるので、ある人事処分がなされたとしても、通報者が公益通報をしたことを理由とする人事処分であることを立証するのは大変です。

 

田中社長:そうですよね。

 

賛多弁護士:このようなことに対応するため、今年、公益通報者保護法が改正されました。

 

田中社長:公益通報者保護法が改正されたというニュースは聞いておりました。改正内容について聞きたいのですが、その前に「公益通報」について教えてください。

 

賛多弁護士:不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的でなく、国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法律(該当する法律は500本くらいと言われます)に規定する罪の犯罪行為の事実などについて、通報することです。

 

田中社長:わかりました。通報先はどこになりますか?

 

賛多弁護士:当該通報者が働いている事業者、行政機関、または報道機関など、です。通報先によって、公益通報になるかどうかの要件が変わってきます。

 

田中社長:今年の公益通報者保護法の改正の主な内容はどのようなものですか。

 

賛多弁護士:先ほどからのお話のとおり、公益通報を理由とする不利益な取り扱いに対する抑止の定めとして、公益通報を理由とする解雇や降格などの不利益な取り扱いに罰則が設けられました。

 

田中社長:罰則が設けられれば抑止力になりますね。

 

賛多弁護士:また、公益通報後の解雇などの不利益な取り扱いのうち、公益通報から1年以内にされたものについて、公益通報を理由としてされたものと「推定」することとなりました。改正前は、通報者は、公益通報を理由として不利益な処分がされたことについて立証の必要がありましたが、今後は「推定」されることになりますので、大きな違いです。

 

田中社長:そうですか、他にはありますか。

 

 賛多弁護士:公益通報者の範囲の拡大が図られ、事業者と業務委託関係にあるフリーランス(契約終了して1年以内の者も含む)も、保護の対象となりました。

 

田中社長:そうですよね。フリーランスの方も安心して通報できる仕組みが必要と思います。ちなみに、改正公益通報者保護法の施行はいつからですか?

 

賛多弁護士:公益通報者の特定の禁止や、公益通報に関する体制整備の徹底と実効性の向上の定めなどが置かれています。

 

 田中社長:ちなみに、改正公益通報者保護法の施行はいつからですか?

 

賛多弁護士:2026年の12月までに施行される予定となっております。

 

※公益通報者保護法

(解雇の無効)

第三条 労働者である公益通報者が次の各号に掲げる場合においてそれぞれ当該各号に定める公益通報をしたことを理由として前条第一項第一号に定める事業者(当該労働者を自ら使用するものに限る。第九条において同じ。)が行った解雇は、無効とする。

以下(略)

 

(不利益取扱いの禁止)

第五条 第三条に規定するもののほか、第二条第一項第一号に定める事業者は、その使用し、又は使用していた公益通報者が第三条各号に定める公益通報をしたことを理由として、当該公益通報者に対して、降格、減給、退職金の不支給その他不利益な取扱いをしてはならない。

以下(略)

 

(損害賠償の制限)

第七条 第二条第一項各号に定める事業者は、第三条各号及び前条各号に定める公益通報によって損害を受けたことを理由として、当該公益通報をした公益通報者に対して、賠償を請求することができない。

***

現行の公益通報者保護法では他国と比較しても通報者の保護に不十分であると指摘されていました。これに応えるため2025年6月に改正公益通報者保護法が成立しました。詳細は消費者庁のホームページ等に掲載されております。

主な改正内容は、まず、公益通報を理由とする不利益な取り扱いの抑止の定めが置かれたことです。公益通報を理由とする解雇や降格などの不利益な取り扱いに罰則が設けられ、行為を行った者には6か月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金、事業者には3,000万円以下の罰金が科されます。

また、改正法では、公益通報後の解雇などの不利益な取り扱いのうち、公益通報から1年以内にされたものについて、公益通報を理由としてされたものと「推定」されます。改正前は、通報者は、公益通報を理由として不利益な処分がされたことについて立証の必要がありましたが、改正後は、公益通報から1年以内であれば公益通報を理由としてされたものと「推定」されることになり、事業者側が、これに対して反証しなければなりませんので、大きな違いとなります。

次に、公益通報者の範囲の拡大が図られ、事業者と業務委託関係にあるフリーランス(契約終了して1年以内の者も含む)も、保護の対象となりました。

さらに、公益通報者の特定の禁止が明文化されました。また、公益通報に関する体制整備の徹底と実効性の向上のため、労働者の数が300人超の事業者での義務違反に対し、行政庁は、改正前からある指導・助言、勧告権限に加え、命令権及び命令違反時の刑事罰が設けられました。

改正法は2026年の12月までに施行される予定となっております。

* * *

執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 渡邉宏毅

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