後継者社長は、営業マン以上に対人関係能力が求められる
第23回コラムからは、後継者社長が全員営業を活用するポイントについてお話します。
社長の属性には5種類あると述べましたが(第21号ご参照)、実際のところ、後継者社長の場合は、ぞういう属性の区分が数種類で収まらないほど多岐にわかれます。
ゆえに、今回は最も問題が生じやすい2代目で、創業者のご子息が社長になられた場合を念頭においてお話します。
後継者社長の場合は、創業者のように社長としての影響力を活用しようとしても、そう簡単にはいきません。
創業者の場合は、自分が作った会社であり、現場のキーとなる幹部たちを面接採用している経緯から、誰しもが社長の言動には初めから一目置いてくれます。ゆえに、創業者の言動が現場に浸透する流れを作るだけでも営業強化につながっていきます。
しかし、2代目の場合、本人の持つ会社への影響力が、就任後の一定期間は創業者ほどには発揮できないため、社長としての面子を立てて社員は指示を聞きはしても、現場では施策の初めの段階から停滞するといった場合が散見されます。
もちろん、創業者であっても、当初の段階で停滞することはあるのですが、その状況は似ていても、原因が大きく違います。
創業者の場合は、仕組みや導入時の検討が不十分なことが原因の大半を占めますが、2代目の場合は、表立っては出てきませんが、社員の一部が、実績を上げてきた自分のやり方の方が良いと内心思っていたり、いままでのやり方が慣れていると考えていることが原因という場合があります。
創業者と後継者社長(特に2代目)の最も大きな違いは、この点にあります。
営業力とは、通常、社内の営業マンが、社外のお客様に行うものと思われています。
しかし、後継者社長が、自らが意図した計画や施策を実現させるためには、社外のお客様に働きかける前に、まずは社内の各部門や営業マンに、その計画や施策の方が優れている点や効率的なことを率先して働きかけ、理解してもらう必要が出てきます。
それは、まるで後継者社長が、自らを営業マンとして対人関係能力や交渉力を発揮するのに似ています。後継者社長が経営する会社では、営業力を発揮する相手は、社外だけでなく、社内にも存在するのです。
次回は、後継者社長が、社外の営業強化のために、社内に営業力を発揮するためのヒントをお伝えします。
・今回のポイント(〆の一言):
営業力のない創業者では、そもそも会社が生き残っていない。しかし、後継者社長も、営業力がなければ社内と言えど自分の意見が通らない。