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税務・会計

第20回 給料が変動したらチェックする3つのこと

賢い社長の「経理財務の見どころ・勘どころ・ツッコミどころ」

 4月に新入社員が入社した会社も多いことでしょう。
年度が替わり、人事異動による昇給や昇格で給料が上がった社員もいれば、ベースアップを実行した会社もあります。
 今年4月から中小企業にも「同一労働同一賃金」が適用されたため、非正規社員(派遣社員やパート社員)にも手当や賞与を支給するようになる会社もあるようです。
 このように、社員数が増えたり、賃金体系が変わったり、労務制度が変更されたときには、人件費の金額が増加します。
社長としては、必ず人件費の負担状況を検証しなければなりません。
今回は、新年度における人件費のチェックポイントについて説明します。
 
御社の今月の給料支給額はいくらですか?
 
①給料増に伴う社会保険料や税金の増加を確認する
会社組織は社員で構成されています。
社員の働きによって収益が生まれると同時に、社員の雇用には人件費が発生します。
会社の経費の中で、人件費の負担割合は高く、業績に大きく影響します。
 
社員の人数や賃金が変わったときは、毎月の給料だけではなく社会保険料(厚生年金、健康保険、雇用保険、労災保険等)も増加します。
40歳以上の社員の場合は、介護保険料も上乗せされます。
社会保険料の会社負担の割合は、給料の約15%です。
したがって、給料支給額の1.15倍を人件費として、見積もっておかなければなりません。
 
社員へ給料を支給するときには、所得税と住民税を源泉徴収して会社が預かり、翌月10日にまとめて納税します。
社会保険料のような会社負担はないのですが、毎月10日の納税額が変わることを注意しておきましょう。
 
業績が順調で資金繰りに問題がないときはいいのですが、業績が悪化した場合に滞納が増えるのが、社会保険料と源泉税です。
社会保険料や税金の支払いが遅れると、ペナルティとして延滞金が課されて支払金額がさらに増えるので、注意が必要です。
特に税金の加算税や延滞税は、法人税の経費(損金)にならないので、税引き後の利益から払うことになり、無駄な出費となります。
 
経理に指示して、給料の支給額が変わったら、社会保険料と源泉所得税などの支払金額を変更して、忘れずに資金繰り表に入れておいてください。
 
社会保険料や税金の延滞利率が何%か知っていますか?
 
 
②人件費が変わったら労働分配率を見る
給料が変わって毎月の人件費が変動したら、付加価値と比較します。
付加価値に占める人件費の配分割合を「労働分配率」といいます。
月次決算では、付加価値を粗利益で計算して問題ありません。
計算式は次のとおりです。
 
 労働分配率 = 人件費 ÷ 粗利益(付加価値)
 
労働分配率は業種によって異なりますが、40~60%が目安の値です。
サービス業などの労働集約型の企業は、労働分配率が高くなる傾向にあります。
人件費が増えても、それ以上に粗利益が増えないと、労働分配率が上がり、その結果として利益が圧迫されます。
 
コロナ禍で業績が落ち込んだ会社の中でも、飲食業や宿泊業は労働分配率が高いため、ダメージが大きかったのです。
人件費は、従業員をリストラして急に削るようなことができませんから、増員計画は慎重に行わなければなりません。
 
労働分配率は、人件費が変わった月だけでなく、定期的にチェックします。
会社全体の労働分配率だけでなく、部門別の労働分配率も計算して比較します。
月次決算で各部門の労働分配率をチェックして、問題があるときには、早めに人員の配置換えなどの対策検討が必要です。
四半期(3カ月)ごとに労働分配率の推移を見ていると、収益構造の変化を察知できるようになります。
 
御社の労働分配率は何%ですか?
 
 
③給与総額が増えたら節税対策も忘れずに行う
給料の支給額が増えたら、必ず適用したいのが節税制度です。
政府は、民間企業の雇用促進や賃金アップに向けて政策を実施しています。
その中でも中小企業に対しては、以前からある所得拡大税制を令和3年度から内容を見直しています。
所得拡大税制の概要は次のとおりです。
 
(所得拡大促進税制)
 適用時期:令和3年4月~令和5年3月の間に開始する事業年度
 適用要件:雇用者給与支給額が対前年度増加率1.5%以上
 特例内容:雇用者給与支給額の対前年度増加額の15?25%を法人税額から控除
 
給与の支給が増えたら、少しでも法人税から取り戻しておきましょう。
適用にあたっては、詳細を顧問税理士に確認してください。
 
給料総額は前期と比べて何%増えそうですか?
 
 
●給料変更後の資金繰りと業績を点検する
社員の雇用や賃金改定は、一時的な支出ではなく継続的な支出となります。
会社の業績は想定どおりには進まずに、変動することがよくあります。
社員構成と人件費を変更したら、必ずその後の影響を数字で確認します。
 
今回説明したように、給料が変わった後には、次の3つを検証するようにしてください。
 
 ①社会保険料と源泉税の支払額と資金繰り
 ②労働分配率の変化
 ③所得拡大税制の適用
 
変更があったときは注意して数字を見ても、その後の経過を見続けることを忘れてしまいがちです。
金額が大きい人件費については、目を離さずチェックし続けるようにしてください。
 
人員計画と実績を数字でフォローしていますか?
 
 
【資料参考】
財務省「令和3年度税制改正(案)のポイント」(令和3年2月)
 
 
【経営合理化協会・関連YouTube動画】
【賃上げ見送りはダメ】定期昇給の凍結、据え置きがダメな3つの理由
|マスコミ報道「賃上げ」の誤解|適正な昇給格差のつけ方《大槻幸雄》
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