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- 第24号 後継者社長のための全員営業の活用法【実践編】
第24回コラムは、後継者社長が全員営業を実践する際、社外の営業強化のために、社内に営業力を発揮するためのヒントをお伝えします。
いままで約20年のコンサルティング経験の中で、様々な後継者社長とご縁がありました。
後継者社長の心情を表せば、「俺だって、つらいんだよ」と、社内では決してもらせない一言になるような気がしてなりません。
特に、優秀な古参の番頭がいらっしゃる場合や、一匹狼のベテラン営業マンが多い営業組織において、新しい施策や自分の考えた経営にとりくもうとされる場合に、そう言いたくなることが多いと推察します。
しかし、社長になったことがない人に、社長の心情を理解しろといっても到底無理な話ですし、自分の施策ややり方に異論を持っている人に対しても、逆の立場になってみれば、少しは、そういった方たちの気持ちも理解できるのではないでしょうか?
「いままでは自由にやらせてもらえて、結果オーライだったのに変わってきた」
「創業者は用もなく声をかけてくれたり、子供も今年進学だなと気にかけてくれた」
「先代は、時に理不尽に叱ることもあったが、認めるところは認めてくれていた」…など
創業社長の場合、往々にして、時折訪れた会社の危機を建前論ではなく『結果オーライ』で乗り越えてきた経緯があります。組織的にも未整備ゆえ処遇面で満足にしてあげられなかったのを別の側面で対処してきた場合もあります。
ゆえに、創業者が20年~30年と舵取りしてきた会社では、幾分、そういう風土が残っているのは自然なことといえるのです。
しかし、いつまでもその状態に甘えていると、現在は業績好調であったとしても、やがて訪れる営業部門のベテラン社員が定年・退職で抜けた途端に弱体化してしまいます。
後継者社長の場合、会社の舵取りを変えようとすると、創業者のような強引なリーダーシップを自分ひとりで発揮するのは難しい場合が大半です。ゆえに、今いる会社のキーマンのうち何人かを自分のやりたいことの理解者・協力者にするか、新しくキーマンとなる人を育てていかないと、現場が変わっていきません。
前回コラムで書いた、”後継者社長が、自らが意図した計画や施策を実現させるためには、社外のお客様に働きかける前に、まずは社内の各部門や営業マンに、その計画や施策の方が優れている点や効率的なことを率先して働きかけ、理解してもらう必要が出てきます。“
というのは、個人商店の集まりから、会社組織への転換期に必ず通る関門でもあるのです。
かといって、あまり下手に出すぎでも舐められるだけですし、創業者のように立場と対人能力で乗り越えようとするのも、創業者以上の人間力がないと難しいのが現実です。
ここでひとつ重要なヒントをお伝えします。
そもそも、後継者社長は、自分自身が会社のキーマンの人たちのことを、どれくらい理解しているでしょうか?
『どんな強みがあって、どんなことが得意で、どんな実績があったか』
『先代との関係性は、部下との関わり方は、過去に誰かといざこざはあったか』
『会社以外、家庭で何か心配事や気になることはないか、また健康上のことは』
これらは全て、中小企業を相手にしている優秀な営業マンであれば、自分の売上成績を支える大口取引の決裁者情報として把握しようと努める内容です。
長年会社に勤務している社員といっても、後継者社長との関係性はまだまだ短期間です。また、人事評価をきちんとやっているといっても、その評価シートは年に何回、どれくらいの時間視ているでしょうか。
そういった隙間を埋めて、なおかつ創業者とは違ったやり方で自分の理解者・協力者になってもらおうとすれば、直感型・本能型で人間関係を構築できる創業者のようなやり方ではなく、分析型・理解型で時間とともに人間関係を構築できるやり方を目指す方が確実です。
社長の自分から歩み寄るのは確かに面倒ですし、そこまでやる必要があるのかと考えられるかもしれません。
ただ、後継者社長がそれをやるかどうかで、相当コミュニケーションのとり方は変化しますし、会社で自分の意見が通りやすくなったり、キーマン達から本音で提案・意見が出やすくなります。しかも、自然とそうなるまでの時間は、時に3年~5年と短縮されることすらあるのです。
社外のお客様だけでなく、社内にも気を使わせるのかとお叱りや異論もあるでしょうが。これこそ、後継者社長は、「損して得をとる」という所以です。
そして、その「損して得をとる」のが積み重なっていけば、経営や業績における得だけに留まらず、後継者社長の個人に対して社内から『徳』が芽生えることにもつながっていくのです。
・今回のポイント(〆の一言):
会社を創るのは創業者だが、その会社を真に強くするのは、後継者である。