menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

人間学・古典

第59講 「帝王学その9」
古より上書は、おおむね激切多し。 激切は訕謗に似たり。(貞観政要)

先人の名句名言の教え 東洋思想に学ぶ経営学


【意味】

昔から、的を射た上申書ほど厳しいもので、厳しさは非難の表現に似ています。



【解説】
名著「貞観政要」には、数々の太宗の優れた治世の実例を挙げていますが、その根底には度量ある君主とその君主を信頼する臣下との強いきずながあります。
太宗の政治は、臣下の意見を受け入れ自らの治世に反映させる方法ですが、如何に名君太宗とはいえ、最初から度量大きく意見の受け入れができたのではありません。


例えば、貞観8年に臣下の徳参(トクサン)から厳しい上申書を提出されたところ、太宗はその批判の厳しさを受け入れることができずに、誹謗の輩として処罰しようとしています。
この時の太宗の狭量を戒めたのが、諫義大夫の魏徴であり、掲句はこの時の言葉です。「一般的に的を射た上申書は厳しいものです。その厳しさは誹謗中傷の書と似ているために、しばしば誤解されます」と。更に「このように誤解を招きやすいものが上申書ですから、本物の上申書かそれとも誹謗中傷の書かどうかを、陛下ご自身で念入りにご検討願います」と続けました。魏徴の諫言は、相手の行為の否定でなく自省を促すのが特徴であります。
その結果、太宗は「貴公でこそ言えることだ」と魏徴を誉め、徳参にも絹20段を与えました。平凡な皇帝であれば「貴公の口添えもある故に特別に計らう」などと、自己の判断ミスを取り繕う場合も多いのですが、太宗のレベルとなると決断変更をしています。


トップが一度決断したことを覆すには、さまざまなケースがあります。
まずその一つは、"外部を相手にする決断変更"です。外部との戦いや競争は臨機応戦が原則ですから、トップの方針変更には部下も素直に納得します。それ故に決断変更により部下の信頼を損なうことがないから、比較的安心して決断変更ができます。


もう一つは、"内部の者を相手にする決断変更"ですが、自らの判断で変更する場合と、部下からの進言によって変更する場合の二つがあります。
前者の自らの判断の変更のケースでは、例えば坐禅中の熟慮による変更であれば、トップの立派な省悟心となりますが、自らの判断であっても優柔不断の迷いからの変更となれば、部下は決断のできないトップと判断しますから信頼を失いかねません。
後者の部下の進言による変更のケースでは、トップと部下の間に"トップの度量に対する信頼関係"が前提となります。部下の方は、少々の出すぎた進言をしても"清濁併せ吞む"ことのできるトップであれば、心配なく進言ができます。またトップの方も、度々進言を受け入れても権威は失墜とならなければ、決断変更も柔軟にできることになります。

 

杉山巌海

第58講 「帝王学その8」 汝誇らず、天下、汝と能を争うなし。前のページ

第60講 「帝王学その10」 秦は奢淫をほしいままにし、好みて刑罰を行い、二世に過ぎずして滅ぶ。次のページ

JMCAおすすめ商品・サービスopen_in_new

関連セミナー・商品

  1. 社長の大義と実践経営

    音声・映像

    社長の大義と実践経営

  2. リーダーの心得 社長の経営洞察力篇

    音声・映像

    リーダーの心得 社長の経営洞察力篇

  3. リーダーの心得 好・不況時の社長心得篇

    音声・映像

    リーダーの心得 好・不況時の社長心得篇

関連記事

  1. 第114講 「論語その14」
    年四十(しじゅう)にして悪(にく)まれるは、それ終らんのみ。

  2. 第18講 「言志四録その18」
    権豪に近づきて、名を落とすべからず。

  3. 第67講 「帝王学その17」
    我まことに無能なり。ただ一能あり、よく人を用うるのみ。

最新の経営コラム

  1. 相談7:含み損のある土地があるのですが、別会社で買うのがいいか、個人で買うのがいいか、どちらでしょうか?

  2. 第9回 注意しても部下が変わらないのはなぜか? ~原因は人ではなく仕組みにある~

  3. 第146回 地味ながら世のクラウド化の追い風を受けて高成長を遂げる サイバーリンクス

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. 健康

    第21回「”克己心の修養”は感情系脳番地を鍛える」
  2. マネジメント

    第62回 新元号は「令和」に決定!新時代の社長業とは
  3. 社長業

    第9回 幹部には何が必要か
  4. 健康

    第27回 温泉津温泉(島根県) 開湯1300年の名泉は「アツ湯」の最高峰
  5. 仕事術

    第97回 イヤホン「ネックバンド+ANC」のススメ
keyboard_arrow_up