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- 第9号〝新規事業を行いたい会社”の全員営業の活用法【問題提起編】
第9回コラムでは、新規事業を行いたい会社が、どうすれば、新規事業に注力しつつ、既存事業の営業力を落とさずにやれるか、その両面展開のポイントと始めの一歩についてお話します。
会社が、新規事業を行おうとした場合、往々にして、新たに開設される営業部門には、営業のエース級の人材が配属されない場合があります。
なぜなら、その営業組織において、力量があり、業績数字をあげる人には、重要な取引先と仕事が集中しているからです。
ゆえに、新規事業の営業を任されるのは、それほどメインの取引先をもっていない社歴の浅い営業マンか、現在の売上数字に大きく影響しない及第点レベルあるいは、目標未達成が続いている営業マンになりがちです。
しかし、営業において最も難しいのは「いままで会社と接点のない新しいお客様を見つけ、獲得する活動」です。
既存事業でさえ、目標数字をあげるのに苦労している営業マンを集めて、今までと同じやり方で営業をやらせていては、新規事業が成り立たないのも当然の話です。
既存事業のように過去から取引のある会社にアピールして、業績数字をあげるというのは、わかりやすくいうと、「今ある1を、2か3、時には5にしていく営業」です。
しかし、新規事業のように、いままで接点のなかった会社にコンタクトをとって、そこから業績数字をあげるというのは、「0から1を創り上げていく営業」です。
拡大するのと、創造するのでは、売上数字を結果だけを比較すれば既存事業の方が大きいとしても、その内容は、まったく次元が違う活動なのです。
例えば、新規開拓が得意な人は、ルート営業も無難にこなせますが、いくらルート営業が得意で取引先の評判がよかったとしても、いざ新規開拓をやらせれば、まったくできない人がいるのは、そのためです。
中小企業において、新規事業がうまくいくことが少ないのは、その難易度はもちろんですが、そもそも新規事業と既存事業との営業構造の理解不足も大きな原因であると考えています。
さらに、営業の体制とやり方などが最初から間違っている場合もあります。
業種によっては、営業部門といっても、営業専属で活動している人はごく少数であったり、既存のお客様への対応だけで手一杯という会社も数多く見てきました。
そういう会社では、新規事業に新たに人を振り分ける余裕がないため、既存事業の取引も行いつつ、新規事業も開拓するという同時2方面作戦をとることになります。
ただでさえ手一杯という限られた人員で、かつかつの営業部門に(この場合、営業マンという方が適性かもしれませんが…)、さらに新たな責任と負担が積み重なるやり方をしてしまっているのです。
こうなると、その会社の営業部門は、やがて以下の二者択一に迫られます。
1.既存事業の営業力を落としてでも、新規事業の営業力に振り分けるか
2.仕事上の人間関係や人事評価に直結する既存事業を重視し、新規事業はできる範囲でやるか
1の場合は、営業現場で何らかのトラブルが発生するか、既存顧客の流出につながります。2の場合は、新規事業の業績目標そのものが未達成に終わります。
現場が手一杯・そもそも人員不足の会社では、そのような状態がしばらく続いた後、新規事業に真剣な社長は、しびれを切らして、こうなったら第3の方策だということで、経営リスクはあるが経費を使ってでも、新たに人を雇って新規事業を任せる施策に向かいます。
偶然にも、優秀かつ一人で市場を開拓できる人材が採用できれば万々歳です。しかし、仮に優秀な現場レベルの営業マンが採用できたところで、会社として新規事業を行うための体制は皆目整ってはいません。
ゆえに、既存事業で手一杯の営業部門や営業責任者から、日中その人は放置され、何かあってもたいした支援はうけられず、かといって、人柄が良い人ほど自分勝手に動くこともできないため、結局、実力を十分に発揮できないか、定着せずに辞めていくことにつながる傾向が出るのです。
新規事業といっても、その大小・内容は様々なので、既存のお客様に、同種の商品・サービスを訪問時に更に一つ紹介する程度であれば、これまでの営業活動の延長線上でも可能です。
しかし、将来的に、数億~10億円あるいは数十億単位の年間売上を目指していて、会社として新たな業績の柱を構築したいならば、現場任せの出たとこ勝負ではなく、かといって売上・経費の数字上の計画でもなく、当初の段階から、新しく会社を一つ立ち上げるくらいの覚悟と思案をもって取り掛かることこそが重要なのです。
次回は、今回の問題提起をもとに、新規事業を行いたい会社が「現有戦力のままの場合」と、「新たに人を採用する場合」の双方について、全員営業を活用して、新規事業を成功に導くためのポイントと始めの一歩をお伝えします。
・今回のポイント(〆の一言)
骨太の新規事業を行いたいならば、仮に既存事業の延長線上であっても、もう一つ別に会社を作るくらいのつもりで、営業の体制と仕組みを整えることが重要となる。