
飲食店を経営している勝田社長が、賛多弁護士のもとに相談に来られました。勝田社長によると、信託銀行から遺言書の話を聞き、最近相続対策をはじめないと考えているところのようですが、どうやら色々と複雑な事情があるようで…。
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勝田社長:最近、私も70歳を超えたので、相続対策をしないと…と思っていたのですが、信託銀行から遺言書の作成の話があったのです。
賛多弁護士:そうなのですね。勝田社長のご家族構成はどのようなものでしたか。
勝田社長:私は、1度離婚をしており、前妻との間に子が2人、現在の妻との間に子が1人います。私の飲食店経営事業に関する後継者としては、現在の妻との子にしたいと考えています。
賛多弁護士:なるほど。勝田社長の相続財産はどのようなものになりますか。
勝田社長:会社の自社株、自宅、預貯金となりますね。
賛多弁護士:それらの財産をどのように、相続人に渡したいとお考えなのでしょうか。
勝田社長:自社株は現在の妻との子に、自宅は妻に、とは決めています。
賛多弁護士:確か、勝田社長の手腕で現在の自社株の価値は高いですよね。
勝田社長:ありがとうございます。その信託銀行曰く、自社株が相続財産の中で価値が高いので、前妻の子たちから遺留分侵害請求が来ると言われましたが、どういうことですか。
賛多弁護士:遺留分とは、民法上、兄弟姉妹以外の相続人に対し、法律上最低限保障されている相続財産の取得割合のことです。被相続人による生前贈与や遺贈によっても奪うことのできない「最低限の取り分」を意味し、近親者の生活保障や相続人間での公平確保などを目的としています。
勝田社長:先妻の子たちには遺留分という権利があるのですね。
賛多弁護士:その通りです。勝田社長の相続人が、奥様、お子さん3人の場合、お子さん達には相続財産に対して12分の1の遺留分があります。
勝田社長:実は、前妻の子とは全くの没交渉でして…相続財産を残すことをあまり考えていなかったのですが。その遺留分という権利を奪うことはできないのですか。
賛多弁護士:勝田社長がご存命のうちに、遺留分権利者本人の意思に基づき、家庭裁判所の許可を得ることで「遺留分の放棄」をさせることは可能です。通常、そのために相応の金銭などを渡して交渉することになりますが…。
勝田社長:生前ですか…それは難しそうですね。それでは、一切財産を残さないとするのではなく、遺留分に相当する額を先妻の子には残すという遺言書の内容とするのが安全ですか。
賛多弁護士:遺留分は亡くなった際の相続財産をもとに決めるものなので、どれ位先妻のお子さん達に残せば遺留分侵害額請求がこないかは不透明です。勝田社長の相続財産に占める自社株の価値に鑑みると、遺留分侵害額請求がくる前提で奥さんや後継者のお子さんたちにお金を残す必要があるかと考えます。
勝田社長:なるほど、生命保険などですかね。
賛多弁護士: そうですね、原則として生命保険は受取人の財産となりますので、遺留分侵害額請求がきたときや相続税納付の原資とすることが考えられます。
勝田社長:遺言書だけ作成するのではかえって妻や子が困ってしまいそうですね。
賛多弁護士:ちなみに、信託銀行では遺留分を侵害するような紛争性のある遺言書の作成は難しいかと思います。
勝田社長:そうなのですか。知りませんでした。あと、ずっと気になっていることがあるのですが、遺言書で埋葬方法の指定はできますか。
賛多弁護士:遺言によって埋葬方法を指定することは可能ですが、これは法律上の効力を持つ「法定遺言事項」ではなく、あくまで遺言者の希望を伝える「付言事項」としての扱いになります。そのため、指定された内容に相続人を法的に拘束する力はなく、希望通りの埋葬が実現されない可能性も存在します。確実に希望を履行させたい場合は、死後事務委任契約の締結を検討された方がいいです。
勝田社長:そうなのですね。遺言書にも色々落とし穴がありそうですね…。
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勝田社長のように、相続対策をしなければ、と考えて、まずは遺言書の作成を検討する場合が多いかと思います。ですが、遺言書は漫然と作成するのではなく、どのような内容にするかにつき遺留分などとの兼ね合いで検討する必要があります。また、遺言書で規定できる法的事項も決まっているため、その点も併せて検討する必要があることに注意が必要です。
執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 横地未央

















