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採用・法律

第52回 『ビジネスモデル特許で経営を強くする』

中小企業の新たな法律リスク

床材メーカーを経営する太田社長が、アフターコロナ時代に競合企業とどう差別化を行っていくかについて話しています。
 
* * *
 
賛多弁護士:新型コロナウイルスの情勢は今後も読めないですが、企業経営としては勝負をかける必要もあるかもしれませんね。
 
太田社長:そうですね。我が社も新しく海外産の特殊な機械を取り入れ、当社の床材の生産技術と組み合わせた生産ラインの構築を考えています。
 
賛多弁護士:そのような生産ラインは他の国内企業は導入されていないんですよね。
 
太田社長:ええ、なのでここは先んじて我が社としても勝負をしたいと考えています。ただ機械の購入費用が当社の事業規模からすると大きな金額となってしまうので、金融機関からの借り入れが必要となりますが、融資交渉がうまくいくか懸念を抱いています。
 
賛多弁護士:お話を聞いたところ、制御システムを構築して、品質が良く汎用性のある床材を、より効率的に生産できるよう、製造工程を最適化するのですね。もしかしたら、ビジネスモデル特許を取得できるかもしれません。
 
太田社長:ビジネスモデル特許とは何ですか? 
 
賛多弁護士:ビジネスモデル特許とは、ビジネス用のコンピュータソフトウェアを用いて創作された技術に与えられる特許です。
 
太田社長:特許というからには、取得するのが難しい印象があるのですが。 
 
賛多弁護士:もちろん、進歩性という、普通の人が容易に考えつかないような発明であるという要件を満たす必要があります。手作業をただコンピュータで実行させただけではたしかに進歩性は認められません。
 
太田社長:具体的にどのようなものがビジネスモデル特許になるのですか?
 
賛多弁護士:例えば、Amazon社のアプリでは、買い物かごの画面に遷移せずに、ワンクリックで商品を購入することができますよね。あれも立派なビジネスモデル特許です。この特許のキモは、「ワンクリックで決済ができる」ことのみならず、これに「複数の注文要求を1つの注文に結合する」という機能を組み合わせたことにあります。
 
太田社長:説明されれば簡単なように思いますが、そのような機能の組み合わせで特許が取れるのですね。
 
賛多弁護士:他には、有名なビジネスモデル特許として、「いきなり!ステーキ」のステーキ提供システムがあります。これは、「札」、「計量機」、「印し(シール)」の3つの要素からなるステーキの提供システムです。お客様のテーブル番号、お客様が要望する肉の量、特定のお客様に対応する情報を、店舗スタッフが認識することで、お客様の要望に応じて焼いたステーキを「他のお客様のものと混同が生じない」ように提供することができるのです。お客様によって、お肉の種類も量も違うので、オペレーションに工夫がなかったり、新人の店員だったりすると、提供するお皿を間違って違うお客様に提供してしまうミスが起こるかもしれませんが、先ほどのシステムによりこれを防止することができるのです。
 
太田社長:なるほど、既存の仕組みを一ひねりして付加価値を生み出すことが重要なのですね。我が社のビジネスにあてはめれば、誰もがミスなく施工できる床材を生産するシステムを構築するということですね。
 
賛多弁護士:それは良い視点だと思います。ちなみに、「いきなり!ステーキ」の特許は、裁判で争われた結果、特許が認められたのです。ビジネスモデルそのものは特許にはなりませんが、効率的にビジネス上のオペレーションを行うための技術上の工夫は特許化できる一例であるといえますね。
 
太田社長:今回、我が社がビジネスモデル特許を取ろうとすると、どのようなメリットがあるのですか?
 
賛多弁護士:まず、他社より優位にビジネスを展開できるようになります。権利化することにより、他社がそのビジネスモデルを用いて参入してきた場合、御社と同じ技術を用いてビジネスを展開することができなくなるからです。また、特許化による市場優位性や将来獲得できるライセンス料を、知財評価書により金融機関に客観的に示せるので、資金調達を行うことが容易になります。
 
* * *
 
ビジネスモデル特許は20年程前にブームとなりましたが、スマホ時代以降となってからIoTが進展していることもあり、出願件数が増えています。出願にあたっては、特にビジネスモデル特許を専門とする弁理士に依頼し、特許取得後の契約関係については知的財産に詳しい弁護士に依頼するのが望ましいでしょう。
 
 
執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 古橋 翼

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