事例2:サントリーが目指す「自然との共生」の究極形
続いて、私たちの日常生活にとってより身近な飲料大手、サントリーの事例を見てみましょう。半導体製造事業における水は、製造の過程で必要な資源ですが、サントリーのようなビジネスでは、水は「原料」そのものです。したがって、代替性に乏しく、TSMC以上に、水の問題は経営の根幹といえます。
・「水と生きる」を科学する
サントリーは、国内にある全工場の水源涵養エリアにおいて、「使う量以上の水を育む」ウォーターポジティブを2030年までの目標に掲げています。 その中核となるのが「天然水の森」活動です。単に木を植えるだけでなく、科学的な知見に基づき、土壌を豊かにし、雨水が深く染み込む「スポンジのような森」を育てています。現在、国内の工場で汲み上げる地下水量の2倍以上を、森を通じて涵養しています。
・グローバルでのリーダーシップ
サントリーの活動は日本に留まりません。
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- 流域全体のガバナンス: 工場の外、つまり地域全体の水資源を守るため、国際的な認証制度である「AWS(Alliance for Water Stewardship)」の取得を推進。
- 次世代への教育: 「水育(みずいく)」を通じて、子どもたちに水の循環の大切さを伝える活動を20年以上継続しています。同社にとって、ウォーターポジティブは単に社会貢献だけではなく、「100年後も製品を作り続けるための投資」であり、経営戦略上不可欠なものとして明確に位置付けられています。https://www.suntory.co.jp/sustainability/env_water/
まとめ:あなたの事業を支える「見えない資源」は何ですか
TSMCやサントリーの事例が教えてくれるのは、「資源を守ることは、事業を守ることそのもの」だという事実、そして、資源対策は経営戦略であるということです。
世界の環境は次第に厳しくなっており、たとえば、欧州委員会による水使用効率の規制や、熊本県による100%涵養の義務化など、いわゆる外部環境は常に厳しい方向へ変わり続けます。しかし、それを「コスト」や「ネガティブな規制」と捉えるのではなく、地域社会や自然資源と共に安定的に発展する関係の構築だと考えるならば、それは「ウェルビーイング経営」そのものと言えます。ウェルビーイング経営の視点は、常に現実的なビジネスチャンスとつながっているのです。
石油、電力、水、あるいは地域の人材——。 「自分の事業を成り立たせている資源を、枯渇させずにどう循環させるか」。 賢い経営者のみなさんは、この問いと答えを実践する過程で、社会からも地域からも顧客からも末永く愛され、尊敬される企業を育てていかれることと思います。
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