フランスのラベルで出てきたEUにおけるワイン法の原産地呼称表記は、イタリア、スペインなどでも見られます。
こちらはイタリアのワインですが、上から3行目にあるDenominazione di Origine Controllata(DOC)がそれにあたります。1行目は生産者名、2行目のTrebbiano d’Abruzzo(トレビアーノ・ダブルッツォ)がこの原産地呼称を持つ産地名であり、この場合はワイン名にもなります。これは、イタリアの中央東アブルッツォ州のトレビアーノ種を使った白ワイン。表ラベルを見るだけで、産地と品種までわかる例です。ちなみに、イタリアにはDenominazione di Origine Controllata e Garantita(DOCG)というより上位の原産地呼称も存在します。
こちらはスペインのワイン。見えづらく恐縮なのですが、こちらも原産地呼称が表示されています。4行目にDenominaciòn de Origen Calificada(DOCa)と書かれており、この場合はRIOJA(リオハ)が原産地呼称を持つ産地名となります。SEGARESはワイン名なのですが、その下に書かれているCRIANZAに注目です。スペインのワイン法では樽とボトルにおける熟成期間の規定があり、そのひとつがCRIANZAです。熟成期間は短い順からCRIANZA<Reverva<Gran Reservaで、つまりGran Reservaは最も長い熟成期間を経たものだという意味です。なお、JOVENと書かれている場合は、樽による熟成を経ていないという意味。好みのワインを探す手がかりにしてみてください。
このような原産地呼称を持たないワインももちろん存在します。原産地呼称を持つワインは法律による様々な規定をクリアしていることを保証されていますが、原産地呼称を持たないワインでも生産者の努力により、また生産に関する自由と広い選択肢をキープするため、あえて原産地呼称を取得していないものもあります。それらの中には素晴らしいものもたくさんあります。
こちらのイタリアワインは一番上にワイン名、そしてラベル中央のイラストの下にVino da tavolaと書かれています。これは、英語にするとテーブル・ワインという意味ですが、原産地呼称の規定とは外れた造りをしているという表記でもあります。だからといってクオリティが低いという意味ではありません。実際、このワインは自然派の素晴らしいワインです。
さて、EU以外も見て行きましょう。EU以外はワイン法を持っている国も持っていない国もありますが、表記は割にわかりやすいものが多いです。
こちらは、オーストラリアのワイン。一番上はワイン名、その下のOld Vinesは樹齢の高いブドウの木を使っているという意味。その下にはGrenache Shiraz Mourvèdre(グルナッシュ、シラーズ、ムールヴェードル)と使っているブドウ品種が全て書かれています。ビンテージの下のBarossa Valley(バロッサ・ヴァレー)とは南東部にある産地名。EUのものに比べると、ずいぶん明快ですね。
実際に日本でワインを購入するときには、輸入販売業者による日本語の裏ラベルが付くので、ワインのラベルを読む必要はほぼないのですが、出張や旅行などで海外に出かけられたときには、読み方を覚えておくとワイン選びがとても楽になります。難しい表記も多いですが、ぜひ覚えてみてください。