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税務・会計

第60回 最近の税務調査の傾向と対策

賢い社長の「経理財務の見どころ・勘どころ・ツッコミどころ」

 12月に国税庁から、法人の税務調査の状況が公表されました(国税庁「令和3事務年度 法人税等の調査事績の概要」)。

 

 新型コロナウィルスの影響も落ち着いてきたこともあり、実地調査の件数は前年の約1.6倍に増えています。

先日11月に税務調査の立ち会いをしたときに、調査官(東京国税局管内税務署)に税務調査の動向を確認したところ、「実地調査の件数はコロナ前に戻りつつある」と話していました。

コロナ禍で減少傾向にあった税務調査ですが、今後はこれまでどおりの頻度で実地調査が行われる見込みです。

 

 そこで今回は、最近の税務調査の傾向と対策について、説明します。

 

 最後に税務調査を受けたのは、いつですか?

 

 

⚫️赤字でも消費税の税務調査に注意

 会社に利益が出ていなければ、法人税の納税がないので、税務調査は来ないだろうと思っているとそうとは限りません。

 

 赤字であっても、消費税と源泉所得税について調査されることがあるので、油断は禁物です。

特に、最近は消費税について、重点的に税務調査が実施されています。

消費税を不正に還付請求する悪質な事案が増えており、取り締まりが厳しくなっています。

具体的には、仕入れを水増しして計上したり、輸出売上げ(消費税免税)を過大に計上したりすることにより、消費税の還付を受ける手口が問題視されています。

国税当局としても、税金を納税者に対して還付するときには慎重になりますので、当然十分に調べなければなりません。

したがって、消費税の還付申告をするときには、必ず税務調査が入ると考えておいたほうがよいでしょう。

 

 また、消費税については、2023年10月からインボイス制度が始まり、いままでより厳格な経理処理が求められるようになります。

インボイス(請求書や領収書)の保存義務を怠ったり、会計処理の判断を誤ったりすると、会社は余計な消費税を負担させられることになりかねないので、経理部門においてはより一層の注意が必要です。

 

御社の経理は、インボイス制度の準備ができていますか?

 

 

⚫️海外に関連会社がある場合は取引価格に注意

 最近では、中小企業でも海外に支店や営業所を開設したり、現地法人を設立したりすることが珍しくありません。

 

 また、外国企業と一緒に合弁会社を始めるケースや、資本提携や業務提携をして海外取引をするケースも見られます。

日本以外での取引については、国税局や税務署にはわからないだろうと思っていると危険です。

最近では、国税庁も外国の税務当局と情報を共有するようになっています。

日本よりも税率が低い国へ利益を移転したり、通常ではありえないような価格で取引したりするような場合には、税務署から申告漏れが指摘されます。

海外と取引をしている企業は、商品やサービスを適正な価格で取引しているかどうかについて、いま一度確認しておいてください。

 

 海外との取引価格はどのように決めていますか?

 

 

⚫️外国に支払いをするときには源泉徴収に注意

 海外の取引先に対して支払いをするときに、ミスが多いのが源泉徴収もれです。

源泉徴収は所得税の制度ですので、個人に対しての支払いだけだと思いがちですが、外国法人への支払時にも源泉徴収が必要な場合があるのです。

たとえば、借入金の利子やソフトウェアなどの使用料を外国法人に支払う場合には、源泉徴収が必要になるので注意が必要です。

 

 最近増えているのが、事務所を借りているビルのオーナーが外国人または外国法人に替わるケースです。

実際に、都内の不動産が外国人(外国法人)に買われて、知らないうちにオーナーチェンジしていたことがありました。

ビルの大家さんが日本人(日本企業)の場合は源泉徴収が不要でしたが、外国人(外国法人)に変更したら源泉徴収が必要になり、同額を支払っていたら、税務調査で源泉徴収もれを指摘されたのです。

 

 外国法人に対するすべての支払いが源泉徴収の対象ではありませんが、支払いをする前には必ず源泉徴収の有無を経理に確認してもらうようにしましょう。

外国法人(非居住者)に対する源泉徴収の税率は、原則20.42%です。

ただし、国によって源泉徴収をするときの税率が異なることがありますので、支払い相手国との租税条約を確認するとともに、税務署への事前の手続きも忘れずにするように経理に指示してください。

 

 毎月の支払いのときに、源泉徴収の有無を点検していますか?

 

 

⚫️税務調査の傾向を把握して対策する

 今回は、最近の税務調査の傾向と対策について、説明しました。

 

 今後の税務調査対応のポイントは、次の3つです。

 ・消費税の経理処理を確認し、インボイス制度の準備をする

 ・海外との取引が適正価格でされていることを検証する

  ・外国法人への支払時の源泉徴収もれがないかを点検する

 

 コロナ禍でしばらく見合わせられてきた税務調査が、今後は通常どおりに実施されていきます。

いままでの税務調査で問題がなかった会社も、最近の税務調査の傾向をしっかりと把握して、対策をしておくと安心です。

社長としては、消費税や海外取引、源泉徴収などに関する税務会計上の取扱いについて、経理に指示して再度見直しておきましょう。

 

 いつ税務調査が来ても大丈夫と胸を張って言えますか?

 

 

(参考)

国税庁「令和3事務年度 法人税等の調査事績の概要」

https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2022/hojin_chosa/pdf/01.pdf

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