menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

マネジメント

人を活かす(6) 上杉鷹山の改革断行

指導者たる者かくあるべし

 「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は

 動かじ」。日本海軍の名将、山本五十六連合艦隊司令長官の語録にある
 有名な人材教育論だ。
 
  おそらくその原典は、江戸時代中期、財政破綻した東北・米沢藩を大胆な人材活用による改革で蘇らせた上杉鷹山(うえすぎ・ようざん)が語った人材管理の原則であろう。
 
  「してみせて、言って聞かせて、させてみる」
 
 鷹山はそれを見事に実践してみせた。
 
 上杉謙信の血を引く上杉家に17歳で養子に入った鷹山が直面したのは、借財が積もりに積もって疲弊した藩の惨状だった。
 
 19歳で領地に入って驚いたのは、無駄の多さだ。山間の僻地にあるわずか十五万石の弱小藩であるにもかかわらず、かつて越後まで治めた百万石大名時代のままの感覚だった。
 
 まず、率先垂範。家計の支出を五分の一に減らし、奥女中は50人から9人に。自らの着物も木綿に限り、食事も一汁二菜を常とした。
 
 藩士たちにも見習わさせて手当を半減し、その分を積み立て負債の返済に当てた。
 
 「出る(支出)を制した」次には、「入る(収入)を量(はか)る」必要がある。殖産興業に取り組む。
 
 和紙の原料のコウゾ、漆器材料のウルシを藩士の庭にも植えさせ、池に鯉を飼わせて農民への模範とした。蚕の飼育をすすめ、荒れた農地の開墾指導に自らも出向く。
 
 さらに、コウゾ、ウルシ、絹を使って製品加工を研究させ、産品に付加価値をつけることを忘れなかった。
 
 ある日、家臣が鷹山に忠告した。「農民たちは、日々の生活に追われております。その上、さらなる労苦を強いるのはいかがか」
 
 「なるほど。それなら智恵がある」と鷹山。
 
 「見るところ、藩士たちは何の用向きもないのに城に出仕して、意味もない文書をいじくっておるではないか。明日から出仕におよばぬ。咎めぬから家で農事に精を出せ」
 
 プライドだけで生きている武士たちが、開墾に出向き、用水路工事に出るようになった。一方で農事に明るい農民を役人に取り立てるなど、「適材適所」の人材配置を徹底させた。
 
 倒産状態の米沢藩が、鷹山の50年の治世でどう変わったかは、語るまでもない。
 
 「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」これも鷹山が残した言葉だ。
 
 さて、冒頭の山本五十六の教育論には続きがある。
 
 「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず」
 
 至言である。
 
 ※参考文献
  『代表的日本人』内村鑑三著 岩波文庫
  『上杉鷹山の経営学』童門冬二著 PHP研究所
                        
 ※当連載のご感想・ご意見はこちらへ↓
  著者/宇惠一郎 ueichi@nifty.com 

人を活かす(5) 武家の知恵前のページ

人を活かす(7) 武田信玄の城次のページ

関連記事

  1. 万物流転する世を生き抜く(33) 義経決起の背景

  2. 逆転の発想(3) 捨てる力(スティーブ・ジョブズ、羽生善治)

  3. 交渉力を備えよ(11) ロシアの対米世論工作

最新の経営コラム

  1. 第183話 ボタンを掛け違えたM&A

  2. 第153話 さとう@川崎市☆新百合ヶ丘 ~地域密着でがんばる凄い海鮮ちらしの寿司屋

  3. 第195回 BCP(ビジネス・コンティニュー・プラン=事業継続計画)について

アクセスランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. サービス

    67軒目 “魚屋のイタリアン” 誕生
  2. マネジメント

    中国史に学ぶ(13) わかりやすい忠言には裏がある
  3. 社員教育・営業

    第32話 「人材における人格能力の育み その2」
  4. キーワード

    第75回 立場を見極め新しいビジネスを考案する「ippuku 淡路町店」
  5. 戦略・戦術

    第262号 「宣伝講習販売」と「通販」
keyboard_arrow_up