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税務・会計

第13号 個人保証がなくなる!

会社を守り抜くための緊急対策

 私ももちろん経験していることですが、会社の借入に社長個人の保証が必要なことは常識です。
 事業承継がスムーズにいかない原因の一つとして、先代の社長の個人保証を外すことに金融機関が難色を示すことがあります。

◆個人保証がなくなる!?
 経営の失敗で、会社は倒産し、個人保証しているため、社長も自己破産となり、生活破綻することが多々あります。私自身、代表取締役を辞任する時、個人保証分を借入しなければ、辞任すらできないこともありました。
 この個人保証が、社長に精神的な苦痛を与えることは確かです。
 金融庁は、財務の透明性を高めた中小企業には、個人保証を求めないなど、融資条件の優遇を図るという趣旨の指針をまとめています。 ポイントは次の通りです。
  ●財務情報の透明性が確保されているなど一定の条件を満たせば、個人保証を求めない
  ●経営者個人と会社の財産区分を明確にしていく
  ●倒産しても、当面の生活費や住居は没収しない
  ●個人保証に代替する融資の仕組みを検討
  ●慣行として広く利用されているため、一律の廃止はしない
 まず、財務情報の透明性ですが、具体的には、定期的に金融機関に最新の試算表を提示することになるようです。
 お金の原則の一つであります、「借り手は貸し手に対して、貸し手から連絡がなくても、現状を報告すべし」と言うものがありますので、当然といえば当然のことです。
 企業の規模にかかわらず、経営情報として、翌月5日までに試算表を作成すべきとお話をしていますが、金融機関に対しても、早期に試算表を提示すべきときが来るのでしょう。
 問題は二番目の社長個人と会社の財産区分をハッキリさせるという箇所です。
 当たり前のことを言っているようですが、あえてこのように言っていることが気になります。
 これまでは、金融機関は社長個人と会社とを一体と見ていたため、社長個人と会社は明確に区分するということなのでしょう。逆に言えば、社長の財産を明確にするということにもつながります。つまり、今以上に、社長の財産がガラス張りになるのかもしれません。
 ますます、連結バランスシート情報を欲していることを物語っているようです。
 三番目ですが、倒産した場合も、社長が一定の個人資産を提供した上で返済し切れなかった借金は免除し、当面の生活費や住居については残すというものです。
 この、一定の個人資産を提供した上でという箇所も気になります。やはり、今以上に、社長の個人資産がガラス張りになりそうな気がします。
 五番目の点について、個人保証を廃止すると貸し渋りや貸し剥がしを招く恐れがあるため、制度の継続は続けるというものです。これにより、骨抜きに出来るような考えかもしれません。

◆地獄の沙汰も金次第
 ちなみに破産するにしてもただではできません。地獄の沙汰も金次第なのです。
 破産希望者と私との会話です。
 「あと、やっぱり聞きたいのがお金なんですが」
 「自己破産手続きの?」
 「ええ」
 「そりゃ、かかるよ。誰も慈善事業で君のために動いているわけじゃないから」
 「そんなに怖い顔をしないでください」
 「一回しかいわないからよく聞くように。破産手続きには同時廃止と異時廃止というものがあってね」
 「何ですか?その同時なんとかというのは」
 「これから話すんだから、ちゃんと聞けっていっただろ」
 「すみません」
 「異時廃止というのは、裁判所が破産決定するときに、同時に破産管財人を選任し、その管財人は、破産した人の財産を評価したうえで債権者に分配してから破産手続きを終了することをいうんだ。これが原則的な方法だな。破産管財人というのは破産した人の財産を裁判所の代わりに管理する人で、裁判所から選ばれた人で弁護士が通常選ばれるんだよ」
 「何かたいへんそうですね」
 「まあね。それに異時廃止は結構お金がかかるんだ」
 「いくらくらいですか?」
 「まあ、最低50万円以上ってとこかな」
 「破産者はお金がないのに、その人間からお金を取るんですか?」
 「まあまあ。この異時廃止は、債務者の財産が多い場合に行われるのであって、君のように財産が少ない、たとえば、50万円から100万円以下くらいの財産しか持っていない人は、異時廃止ではなく、同時廃止という手続きがなされるんだよ」
 「その場合の費用は?」
 「2、3万円くらいだな。ただし、自分でする場合だけどね。当然、弁護士や司法書士に頼むとその報酬は必要になるよ。まあ、破産をするにもお金が必要ってことだよね。よくいうだろ。地獄の沙汰も金次第って」
 「ええ、まあ」
 「同時廃止は、さっきいった破産管財人は選任されず破産宣告と同時に破産手続きを終了することになるんだ。ほとんどの破産者がこちらだよ」
 「破産後って何か制限はあるんですか?」
 「さっきいった異時廃止の場合、管財人が選任されるっていったよね。この場合、たとえば、債務者あての一切の郵便物、電報などは管財人あてになり、管財人が開封するんだ」
 「なにかプライバシーもないみたいでいやですね」
 「まあね。とにかく、財産すべて管財人の管理下におかれることになるんだ」
 「旅行とかできるんですか?」
 「引越したり、長期の旅行をするには裁判所の許可が必要になるよ」
 「僕の場合、その同時廃止という手続きでいいんですよね。管財人がつくほど財産はないですから」
 「まあ、そうなるだろうね」
 「よかった」
 「よかったじゃないだろ。自分のしたことを忘れちゃいけないよ」
 「あの。もう一度確認したいのですが、破産申し立てをして破産決定しても免責決定がなければ債務は消えないんですよね」
 「そうだよ」
 「どんな人が免責されないのですか?」
 「さっきもいっただろ。たとえば、ギャンブルや浪費等が原因で借金をした場合などは免責不許可事由といって免責されないだろうね」

 ※免責不許可事由
 ①自分や他人の利益を図ったり債権者を害する目的で破産者の財産を隠したり、財産価値を減少させたような場合
 ②浪費やギャンブルによって著しく財産を減少させたり過大な債務を負担した場合
 ③カードで商品を購入直後、その商品を安価な値段で転売したり、買入し現金を得た場合
 ④すでに返済不能であるにもかかわらず、債権者をだましてさらに借金をした場合
 ⑤虚偽の債権者名簿を提出したり、財産状態について偽りの陳述をした場合
 ⑥免責の申し立て前、10年以内に免責を得たことがある場合
 ⑦破産法に定める破産者の義務に違反した場合
 ただし、この場合でも、借金の一部を払うことにより免責を許可することもあります。

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