menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

戦略・戦術

第125話 少人数私募債は、資本性借入金です

強い会社を築く ビジネス・クリニック

「少人数私募債」の金利5%は高くない! ~「少人数私募債」は、「資本性借入金」なのです~
 
「資金調達の手段として、少人数私募債を活用しなさい!」
「その少人数私募債の金利は、3%~5%にしなさい!」
と、申し上げています。
すると、
“いまどき、そんな高い金利にしたら、まずいんじゃないでしょうか?”
という経営者がおられます。
さらに!
“銀行金利より高いのはおかしい!”
“引き受けるのは同族の者でしょう。税務調査で引っかかりますよ”
“マイナス金利の時代に高すぎるでしょ!”
などとおっしゃる税理士がおられます。
 
しかし、何度も言うように、少人数私募債は、出資金同様にみなされる、「資本性借入金」なのです。通常の銀行借入金とは違うのです。だから、金利も異なるのです。
「資本性借入金」とはどのようなものか、ご存知でしょうか?
金融庁では、自己資本とみなす借入金(負債)のことを、「資本性借入金」として、その活用を推奨しています。
そこには、「資本性借入金」とする条件を、次のように記載しています。
(1)償還期間が5年超であること
(2)金利設定があること
(3)劣後性があること(破たん時の返済があとまわし)
 
この3つの条件を満たすものを、自己資本として扱いなさい、として、事業者に導入を勧め、金融機関には指導しているのです。
そこには、「資本性借入金」とすることで、財務内容は改善され、金融機関での債務者区分が向上できる、と明記されています。
「少人数私募債」はまさしく、この条件を満たすものなのです。
 
上の3つでややわかりにくいのは、(3)です。
「劣後性があること」というのは、具体的には、担保設定がない、ということが該当する、とされています。「少人数私募債」の発行に際し、引受人に担保は差し出しません。信用のみです。法的破たん状態に陥っても、債務処理は後回しになります。資金を出す側にすれば、出資性が強くなります。
逆に、担保設定がある、というのはどのような場合か、です。
返済不可能な法的破たんに陥った場合、優先的に、その担保を返済金の代わりに充てる、ということです。
通常の借入金では、銀行が担保や個人保証を要求したり、保証協会に保証料を払わせたりします。それは、不測の事態があっても、銀行は貸したお金を回収したいからです。そこには、劣後性などないのです。回収ありき、なのです。出資でないことは明白です。
「劣後性」があることと、ないこととでは、その資金を出す側にとってのリスクの大きさが、全く異なるのです。
 
そもそも、銀行の貸借対照表にも、「資本性借入金」となる、劣後性のある社債が存在しています。いわゆる、銀行発行の「劣後債」というものです。銀行は、国際業務をするうえで、自己資本比率が8%以上であること、という規制が国際条約で定められています。しかしながら、資本金と剰余金という自己資本だけでは、8%以上を維持しづらいのです。なぜなら、世間の給料日や賞与日など、大量の預金が入ってきて、総資産が急激に膨らんだりするからです。なので、機動的に自己資本比率をコントロールするべく、「資本性借入金」である「劣後債」を発行しているのです。
 
また、金融庁の見解では、「資本性借入金」の条件である金利設定に関して、「配当可能利益に応じた金利設定」であること、と記載しています。通常の銀行借入と同程度、となど、どこにも書かれていないのです。
“3%から5%なんて、高すぎる!”
“いまどきそんな高い金利は非常識だ!”
それは、その事実を知らない経営者や税理士の、単なる思い込みです。何事もやっかいなのは、本当の事は知らないのに、知ってるつもりになっている、ことなのです。
銀行だって、いまはやりのカードローンの金利は、4%~14%で設定しています。一口に銀行金利といっても、さまざまなのです。そのことが、わかっていないのです。
 
例えば、「資本性借入金」は「少人数私募債」だけではありません。銀行からの借入れでも、先の3つの条件に該当する、出資金とみなされる「資本性借入金」は存在しています。で、その金利はやはり、高いのです。
 
日本政策金融公庫が中小企業を対象に実施している、制度融資による「資本性ローン」というものがあります。これはまさに、「資本性借入金」です。
で、そこに記載されている金利は、次のとおりです。
 
clinic125_01.jpg
上の表上段の、新企業育成貸付の期間10年、のところをご覧ください。
 5.10%、3.85%、0.40% とあります。
これは、その年度の業績に応じて、3つのうちのいずれかの金利になります、という意味です。業績が悪い年ほど、低い金利になります。出資性のある融資なので、業績が良ければ、リターンとなる金利は高くなります。
 
いかがでしょうか?
古い資料ではありません。今現在、実行されているものなのです。
3%、4%、5%、という数字がゴロゴロ並んでいるじゃないですか!
金融機関とて、「資本性借入金」であれば、金利は通常融資に比べて、高いのです。担保・保証もなく、劣後ですから、貸す側からすれば、リスクが高いのです。
 
少人数私募債の金利について、
“銀行金利と比べて高すぎる!”
と言う税理士がいるのなら、この記事を見せてください。
そして、
“銀行のどの金利と比べて高いんですか?”
“「資本性借入金」って、ご存知ですか?”
と、聞いてみてください。
その税理士はそれでも、
“少人数私募債の金利3%~5%は高い!”
と言えるのでしょうか?

 

第124話 世間の税理士が犯す間違い前のページ

第126話 小さい会社で勝負する次のページ

関連セミナー・商品

  1. 「第37期 後継社長塾」

    セミナー

    「第37期 後継社長塾」

  2. 社長の財務戦略

    社長の財務戦略

  3. 井上和弘『経営革新全集』10巻完結記念講演会 収録

    音声・映像

    井上和弘『経営革新全集』10巻完結記念講演会 収録

関連記事

  1. 第127話 税制改正 今年の目玉は?!

  2. 第21話 激動の経済の中で、社長が打つべき手

  3. 第62話 「今の時代に合わせた「人件費」の考え方 ~給料の高い人たちを使わないですむ組織とは~」

最新の経営コラム

  1. 楠木建が商売の原理原則を学んだ「全身商売人」ユニクロ柳井正氏

  2. 第10講 WILLとMUSTをCANに変える:配属に不満がある社員とどう関わるか

  3. 第147回『紫式部と藤原道長』(著:倉本一宏)

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. キーワード

    第52回(相性の良いサービスを組み合わせる「ミューズ治療院」)
  2. 社員教育・営業

    第39回 「確認電話の大切さを学ぶ」
  3. 社長業

    Vol.10 本気で自社商品に惚れ込む
  4. ビジネス見聞録

    人生100年、脳の健康を保つには Dr.加藤の「講話を聴き、脳を守る」前編
  5. 教養

    第103回「スポーツ・アイデンティティ」(著:田崎健太)
keyboard_arrow_up