売上が上がっても入金がなければ大変なことになることは誰でも知っています。
未回収は税抜きの売上高の未収だけでなく、消費税の預り金も未収になってしまいます。
消費税は、2014年4月に8%となり、いずれ10%と引き上げられる予定です。平成23年度の新規発生滞納額は6,073億円でこのうち消費税は3,220億円となっており、その大半が中小零細個人事業者です。
大企業は滞納し差押えをくらいますと、上場が維持できなくなります。ですから、まず、滞納はしません。
ですから、滞納金額のほとんどは、中小零細個人事業者なのです。
5%でも納税の資金繰りや価格転嫁で苦しんでいる中小企業等がどのような対策を取り実行していくかが今後の事業継続において重要になってきました。
今後、消費増税に伴いさらに滞納が増加していくことが予想されます。資金不足を借り入れで補てんしようと考えても金融機関の対策が不十分であれば借り入れもできませんし、安易な延命措置の借り入れをすればさらに苦しくなっていきます。そのため、しっかりとした金融機関対策をしなければ乗り切ることはできません。
このような厳しい環境に直面する中小企業が特に消費税増税に対してどのように対応していくべきか、経営者、経理担当者はそれぞれの立場で消費税のことを考えるべき時が来たと言えます。
特に、回収業務は再度、見直しを図る必要があります。
売上から回収までの流れは次の通りです。
《損益計算書》 《バランスシート》 《キャッシュフロー》
売上高 → 売掛金 → 入金
このように、損益がキャッシュになるには、バランスシートの壁、ここでは売掛金を越えなければならないのです。
仕入れ等費用はどうでしょうか。
《損益計算書》 《バランスシート》 《キャッシュフロー》
○○費 → 買掛金(未払金) → 支出
費用の場合は、逆で、バランスシートが壁になって、支出を阻んでくれます。
すぐれた経営者は口を揃えていいます。
「収入は先に、支出はあとに」
資金は潤沢にあるにも関わらず、あえて手形を振り出す上場会社もあります。この手形を受け取った方にとっては迷惑なことかも知れませんが、この上場会社の財務方針なのですから、なすすべがありません。
この会社のトップはこういいます。
「それが経営なのです。お金があるからといって、気前良く出すことは原理に反します。また、うちの手形は、低金利で割れますので、特段、不利になることはないと思っています」
この場合の流れはこのようになります。
《損益計算書》 《バランスシート》 《キャッシュフロー》
○○費 → 買掛金→支払手形 → 支出
バランスシートは、「収入は先に、支出はあとに」の原理原則を守るための壁といってもいいのかもしれません。
ちなみに回収ですが、長期間、回収できない場合、先方に電話をし、請求書を送っただけではなかなか支払ってはくれません。
この様な時、どうすればいいのでしょうか。
答えは簡単です。社長か経理担当者が先方に出向くことです。もしかしたら、請求書の送付先に、誰もいないかもしれません。
逆に、羽振りがいいことだってあります。羽振りがいいのにどうして支払ってくれないのでしょうか。
それは、支払の優先順位が低いからです。そのような場合、担当者ではなく社長か経理担当者が直接、訪問することで優先順位が上がるかもしれません。
この場合、大事なことは、回収を焦らないことです。一度目の訪問から請求書を出さないことです(持っていくことはいいと思います)。あくまで、先方の様子見に徹してください。
いままで長期間、支払わなかったのですから、今更焦っても仕方がありません。先方の状況を把握した上で、請求書を持参、提示することをお勧めします。