証憑とは、第三者が作成した書類、請求書、領収書、契約書等を言いますが、こんなものはいくらでも改ざん可能なのです。
形式重視の監査では、証憑との突合せをしなければいけません。
しかし、これで本当に会社に不正があった場合、発見できるのでしょうか。
私の結論は、無理・・・。
もっとひどい話が現実にはあります。
監査の過程で不正を発見すれば監査から引き揚げろ、つまり監査をやめろ!と会計士協会から言われることがあるのです。
また、過年度に不正が行われた会社の監査を引き受けると「どうして監査を受嘱したのか」とかなり厳しく追及されます。
では、いったい誰が監査をするのかの問いには協会は明確には回答をくれません。
いわゆる「監査難民上場企業」が増加していくことになります。
監査は、間違ったことをした会社を正しい方向に戻し、会社の信頼を高めてあげることのはずですが、このような状況では無理です。
今はどうかわかりませんが、某警備保障会社のマニュアルには、泥棒が帰ったころに現場に行け!とあったそうです。
警備員が危険だからです。
不正があったら逃げろ!と言われている監査もまるで警備保障会社のようです。
だから、東芝のようなことが起きるのです。
では、会計士の監査で不正は発見できるものでしょうか。
実は、不正は、会社の人などとのコミュニケーションから発見されることが多いのです。
帳簿を見ても、あまりにも幼稚な不正は別にして、通常は発見できるものではありません。ましてや、公権力のない会計士が不正を発見することは極めて困難です。
もちろん、コミュニケーションで不正や横領を発見するとしても、事前の準備は必要です。
一番、必要な資料は、月別バランスシート残高推移表です。
例えば、架空売上があっても、損益計算書を見ただけではわからないことが多いものです。しかし、バランスシートの残高の推移を見れば、一目瞭然なことが多いのです。
損益の不正は、バランスシートに必ず、表現されるからです。
このやり方は、東洋医学で、患部は触らないで他の箇所(いわゆるツボ)に対して治療をしますが、それに似ています。患部、つまり損益計算書での疾患は、損益計算書を眺めるのではなく、別の箇所(体で言うところのツボ)を治療する必要があるのです。
架空売上は、売掛金が回収されることがないため、売掛金残が確実に増加していきます。
馬鹿な会計士は、次のようなセリフを吐きます。
「回収を確認できたら、売上として認めることができる」
このセリフを真に受けて、売上として認めてくれるためなら・・・と、不正をした経営者は、第三者に依頼し、そこから資金を回し、取引先に入れ込み、そこから、会社へ入金をします。
馬鹿な会計士は、入金があったならば、売上として認めざるを得ないとなり、これで架空売上が本当の売上に代わることになります。
この様なことをしても、会計士にはお咎めがないらしいのです。
私からすれば、間違いなく不正に加担していると思うのですが…
一般に、不正会計の端緒を把握する為には、バランスシートを中心に、特に資産に着眼して分析を行います。
粉飾は、一般に、売上の過大計上や原価・費用の過少計上による利益の拡大を意味するため、損益計算書上の話のように思われますが、損益計算書上は、正常な取引と架空取引等の異常取引が混在するため、不正の端緒の把握が通常は困難になります。
だから、損益計算書をみただけでは、不正の存在すら分からないのです。
多くの経営者は、損益計算書ばかり見て経営判断していますが、それは仮の姿で、一喜一憂しているようなものです。
本当の姿はバランスシートに潜んでいるものです。損益→バランスシートという流れがいつもあるからです。
だから、経営者はバランスシートが本当に読めないといけないのです。
経営にも役に立つので、経営者や経理の方は、ぜひ、月次のバランスシートの残高推移表を作成してみてください。
月別推移表を作成し、先ず、現金預金、売上債権(受取手形と売掛金)、在庫、仕入債務(支払手形と買掛金)の残高の推移を確認します。
不正が潜んでいるこれらの勘定に異常な増減がないかを確認する為です。
なければ、大きな問題はないと判断しても大丈夫です。
再度、お話しします。
不正の発見と経営とは表裏一体であり、無関係ではありません。
会社の実態を見るためには、損益計算書だけでは無理だということなのです。バランスシートを見てはじめて本当の会社の状態が把握できるのです。