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製造業

第1回「改善で変化を日常にしよう」

なぜ、トヨタ式で会社が伸びるのか?

■桑原晃弥(くわばら てるや)氏/「トヨタ式5W1H思考」著者/(元)カルマン顧問

慶応義塾大学卒業後、業界紙記者として活躍。トヨタ式の指導や導入で有名な若松義人氏の会社の顧問として、トヨタ式の実践現場や、トヨタ生産方式の大野耐一氏直系のトヨタマンを幅広く取材。トヨタ式の書籍やテキストなどの制作を主導。また、国内外を問わず創業者や起業家の研究をすすめ、人材育成や成功法を発信し続けている。主な著書に『トヨタ式「人を動かす人」になれる6つのすごい!仕事術』、『トヨタは、どう勝ち残るのか』他多数。講話収録物に『トヨタ式 経営の技術』、全国経営者セミナー講演収録『トヨタ式 人と会社を動かす実践術』を発刊。

※本コラムは、桑原晃弥講師が「トヨタ式 経営の技術」音声講話の発刊にあたり、「なぜ、トヨタ式で会社が伸びるのか?」全五話にて書き下ろしたものです。


 トヨタ自動車が変わらぬ強さを発揮しています。2020年から続いた世界的なコロナ禍や原油などの資源や資材の高騰、地政学上のリスクや世界的な半導体不足といったさまざまなマイナス要因があったにもかかわらず、2022年3月期決算では日本企業として過去最高となる3兆円近い営業利益を記録、2023年3月期決算でも2兆円を超える営業利益が見込まれるなど好業績を維持し続けています。

 一体、なぜトヨタは企業を取り巻く環境がこれほど激しく変化し続ける中、変わることなく強さを発揮し続けることができるのでしょうか。理由の一つに、長年に渡って改善活動を続けることで育まれたトヨタの「変化に強い体質」が挙げられます。トヨタがフォードで行われていた「サゼッションシステム」にヒントを得て、「改善」に取り組むようになったのは戦後間もない1950年頃のことですが、以来、70年以上が経った今でも世界中のトヨタで活発に改善が行われているのは驚くばかりです。

 企業というのは「変化対応業」と言われるように、市場の変化やお客さまの嗜好の変化などに合わせて柔軟に変化し続けることが求められますが、現実には「変わる」というのは案外難しいものです。「新しいやり方と慣れたやり方のどちらを選ぶかと言われると、たいていの人は慣れたやり方を選ぶ」と言われるように、多くの人にとって「変わる」ことはたやすいことではなく、できるなら慣れ親しんだ環境で慣れたやり方を続けたいと考えるものですが、トヨタは日々の仕事の中で「日々改善、日々実践」を続けることで、「変化を日常にする」ことに成功しました。

 トヨタ式の基礎を築いた大野耐一さんによると、「改善というのは変えること」です。仕事をしていて問題に気づいたなら、「なぜ問題が起きたのか」という「真因」を調べて、改善策を考え、実行します。その結果が「改善」になればいいのですが、時には「改悪」になったり、期待ほどの成果が出ないこともあります。しかし、そんな時に絶対にやってはいけないのが「元に戻す」です。

 失敗したからと元に戻していては、変わることはできません。「改善が改悪になったら、元に戻すのではなく、もう一度改善する」のがトヨタ式のやり方です。トヨタがそれほどに「変わる」ことにこだわるのは、「3年変わらなければ、企業は潰れる」という強い危機感があるからです。だからこそ「日々改善」を通して、「変化を日常のもの」とし、危機や変化をこちらから迎え撃つことができてこそ、企業は変わり続けることができるし、成長し続けることができるのです。


 企業を取り巻く環境は日々変化しています。時に誰も予想していなかったほどの、急激な変化に見舞われることもあるわけですが、だからこそ企業は変化に強くなければなりません。そのためには社員に対して、「変われ」と命じるだけではなく、生産の現場や販売の現場で「日々改善」を奨励し、「変化を当たり前のものとし、変わることに喜びを見出す」職場や社員を育ててはいかがでしょうか。

 トヨタを世界的企業へと成長させた「改善の進め方」を知ることは、強い企業、強い社員を育てるヒントを得ることでもあるのです。

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