バランスシートは、会社の歴史や社長の性格、倒産の予兆、いつか別の機会にお話ししますが、社長の愛人の存在まで分かってしまいます。
そのようなことは、損益計算書を見ても分かりません。
だから、バランスシートは大事なだけでなく、極力、よそ様に見せないようにすべきなのです。
戦(いくさ)では、こちらを小さく見せ、戦う素振りを見せないことも大事な戦法です。これにより、相手に油断と隙を与えておくのです。
企業経営も戦と同じです。
であれば、相手に、バランスシートを見せないことがとても重要になってきます。
借入をしている金融機関は当然、バランスシートの提出を要求してきます。しかし、取引先に対して見せることはあまり得策ではありません。
今のところ、ほとんどの取引先も、通常、興味があるのは損益計算書であり、バランスシートではありません。
ただ、このコラムに掲載していますバランスシート心得帖を読んだ取引先は、バランスシートに興味を抱き、提出を要求してくるかもしれません。バランスシートを見れば、強みと弱みがわかってしまうからです。
バランスシートを見せないだけでなく、万が一もあるため、もうひとつ、知っておいてほしいことがあります。
それは、「バランスシートを小さく見せるコツ」です。
戦いはこちらを小さく見せることで敵に油断させることができます。闘う素振りを見せないことです。
バランスシートにより、こちらが戦う気満々なことが分かってしまうことは、あえて行う必要ありませんし無駄なことです。
IT企業でCFOとして運営に携わっていた時、月に1度、顧問弁護士と打ち合わせがあり、その際、必ず聞かれることがあります。
それは昨日時点の総資産の金額です。それも一円単位で。彼は、再生機構に携わっていた関係で、バランスシートを読む力が人一倍あるので驚きです。
しかも、先月の総資産の金額を覚えているのでしょう。必ず、先月末の総資産の金額に対して、いくら変化したかを言い当てます。
なぜ、この弁護士は総資産にこだわったのかといいますと、徒に大きく見せると敵が増えることを知っていたのです。
一般には、総資産額が大きいほど良いと考えがちですが、それは逆だと考えるべきです。
バランスシートを見る人は、総資産の中身より、まず、金額の多寡を見ると思います。その金額が大きいと力強い会社とみるかもしれません。
その会社が競合会社ですと、それ相当の準備をしてくるかもしれません。
逆に総資産が小さいと、なんだか貧弱な会社に見えてしまうため、相手に隙が生まれることもあります。
ただ、取引先の場合は逆でしょう。総資産が小さければ、取引をして大丈夫なのかと不信感が芽生えるかもしれません。
なにをするにも、善し悪しがあるものです。
総資産の多寡も大事ですが、総資産がどのようにして増加したのかを一度は考えるべきです。また、その中身が収益を生むもの、現金化できるものになっているのか検討すべきです。
ちなみに、総資産はそんなに増減しないものです。ということは、総資産がなぜ、増減するのかも事前に知っておくことも必要です。
この点は、次回、詳しくお話しします。